テレビ番組でも、雑誌でも、Webでも食べ物を題材にしたすべての企画に通底するものは「“うまそう”を伝えられているかどうか」。これに尽きる。だがこれほど単純なことが実に難しい。ただタレントが「うまいうまい」と言うだけでは何も伝わらないが、説明し過ぎると興が醒める。高級な食材や料理は確かにうまそうに見えるものの、日常からは少し縁遠く共感が得られにくい。

といっても『孤独のグルメ』に登場するような大衆食の魅力を伝えるのもまたむずかしい。誰もが知る日常の大衆食──。「ハレとケ」という概念で言えば間違いなく「ケ」の食事は決して華やかでなく、豪奢でもない。しかも『孤独のグルメ』に限っては酒が介在しない。「唐揚げ×ビール」というような組み合わせの力技で「うまそう!」を刺激するという手段が使えないのだ。演出と松重豊という主演俳優の演技を中心に、食欲を刺激し、“夜食テロ”を起こしている。Season4の第2話「中央区銀座の韓国風天ぷらと參鶏湯ラーメン」は、演出と井之頭五郎役の松重豊の演技ががっつり噛み合っていた。

久しぶりの銀座の地に立った井之頭五郎。「今日は銀座のひとりメシだ」と気合いを入れたものの、どこで食事を食べるか悩みながら歩くうちに銀座の外れ、ほぼ新橋のあたりまで来てしまう。そこで韓国料理店に吸い込まれる。そこで例によって「それもください」と注文しすぎるくらい注文した揚げ句、最後に參鶏湯ラーメンを注文するという暴挙に出てしまう(頼みすぎるのは、いつものことだが)。