日本でのノートの定番といえば、言わずと知れたコクヨのキャンパスノートである。シンプルさと実用性で定番の地位を勝ち取ったキャンパスノートは、すでに40年の歴史を持ち、かく言う私も学生時代のみならず社会人になっても愛用していた。


では、中国でのノートの定番は何か。答えはこれ、「Gambol(ギャンボル)」である。
中国の"キャンパスノートすぎる"ノート達
中国の定番ノート「Gambol(ギャンボル)」

日本から中国に赴任してきた人は、このGambol(ギャンボル)に出会い、そのあまりの2代目キャンパスノートに似た外見に苦笑いするのだが、1カ月もすると違和感なく使うようになる。というのも、中国のノート市場において既にGambolは圧倒的な地位を築いているからだ。

韓国でハイチュウの模倣品マイチュウの方が定番になってしまったように、Campusの模倣品Gambolが席巻する中国市場。
2005年に中国進出しキャンパスノートを展開するも苦戦していたコクヨは、2012年に思い切った手を打ち、話題となった。

なんとGambolの製造元、何如文化用品からノート生産事業を承継したのである。つまり、本家コクヨが、中国で定着した「Gambol」ブランドを買い、コクヨの「Gambol」として売れるようにしたのである。この事業承継でコクヨは一躍中国市場ナンバー1のノートブランドとなった。

中国の"キャンパスノートすぎる"ノート達
現在の「Gambol」。右下にコクヨのマークがある。

晴れてコクヨ製となった「Gambol」だが、細かい字で書かれた仰々しい英語文章(「Gambol notebooks, made with future technology, for tomorrow's most outstanding achievers」)はそのまま。ノートデザインはさすがに変えられているが、ちょっとだけ初代キャンパスノートに似ている。

正規品メーカーが定着した模倣品メーカーを買って市場シェアを握る、という非常に珍しいケースだが、現在では、中国の文房具店でGambolとCampusが仲良く売られ、ノート販売棚のかなりの割合を占めている。
無闇に叩きつぶすのではなく、非常に「大人」な対応で実をとったコクヨの方法は、多くの日本メーカーにも参考になるのではないだろうか(もちろん模倣する方が悪いのは明らかなので、本来的な解決方法ではないけれども)。

ただ、これで一件落着とはならないのが、やはり中国。キャンパスノート風のノートはGambolだけではないのだ。
上海一の文房具ストリート福州路で、キャンパシーなノートを買いあさってみた。

中国の"キャンパスノートすぎる"ノート達
3代目キャンパスノートに瓜二つの雅園文具製Office Notebook。紙質悪し。

中国の"キャンパスノートすぎる"ノート達
3代目キャンパスが微妙に意識された得力集団製Basic+note。若干キャンパシー低め。

中国の"キャンパスノートすぎる"ノート達
2代目キャンパスと3代目キャンパスの中間のようなHOTROCK。よくみるとコクヨ製。元々Gambolと同じメーカーが作っていた模様。

中国の"キャンパスノートすぎる"ノート達
4代目キャンパスすぎるCompera。斉心文具製。Comperaの意味は不明。Googleで「Compera 意味」と検索すると「もしかしてCompare?」と聞かれる始末。


本家キャンパスノートは現在5代目。模倣品はまだ5代目までは追いついて来ていない模様である。


最後に意地悪ながらコクヨのお客様相談に「Gambolの名前の由来は何ですか?」と質問してみた。
英和辞書だと「跳ね回る」という意味だが、普通に考えれば「何となく字面がCampusに似ていたから」であろう(上記のComperaが最たる例である)。

しかしコクヨ広報部の方から返って来たのは「“Gambol”というブランド名は当時のオーナーがコクヨのCampusノートを越えたいという想いから命名したと伺っています。」という回答。
どこまでも大人な当社の対応に、ゲスな質問をした自分を反省したのだった。
(取材・文/前川ヤスタカ)