1月26日放送の第2回では、主人公・依子(杏)は【結婚とはお互いが有益な共同生活を送るための契約である】という考えに賛同した巧(長谷川博己)と話を進めようとしたものの、一般常識を重んじる父・俊雄(松重豊)の希望を聞いて、通常の男女が行うように、互いの愛情を確認するためにデートをもう少々経験してみることにする。
結婚を急ぐ事情のある巧は、2回目のデートで一気にプロポーズまで行こうと計画していたが、ニートであることを隠すため出版社社員と偽っていたことがバレてしまい、依子を失望させてしまう。
まず、依子と巧は、一般的に楽しいデートの場所とされているテーマパークに出向く。だが、ふたりはどうにも楽しめない。そこで、めいっぱい楽しんでいるカップルの真似をすることで、楽しみを知ろうと試みる。
その真似のひとつは、自らの顔に動物メイクを施すことだった。
頭にケモノの耳、頬にヒゲ、鼻先は黒々と動物のように塗ったまま1時間のほとんどを過ごした杏の役者魂を讃えたい。余談ではあるが、話の途中でドラマを見始め、杏の顔を見たヒトは、そっとチャンネルを変えた危険性も考え得るではないかと少々不安になってしまった。
相手役の長谷川は、メイクこそ杏のようには激しくなく、ケモノ耳を頭に乗せ、頬にピースマークを描いた程度ではあったが、彼はまた別の爆弾を抱えていた。
テーマパークを「地獄絵図のようだ……」と表し、「苦手なんです……ああいう下品な子供や、民度の低そうなカップルが……」と蔑むのだ。
依子もそれを受けて「人生を浪費している人々の吹き溜まりのように思えます」と答える。
月9を見ている人たちは、テーマパークが大好きな人たちも多い気がするのだが、完全にそこを敵に回すのである。
2話のハイライトは、後半のプロポーズ。巧は依子にプロポーズするために、昨年流行ったフラッシュモブ(大勢で急に踊りだすやつ)を行うことにする。
6時30分ぴったりにその計画を決行しようとしたが、俊雄に頼まれた鷲尾(中島裕翔)がやって来て阻む(1話と同じパターン)。
巧は、会社員と偽っていたことを暴露され動揺しつつも、仕込んであったフラッシュモブをそのまま進めざるを得ない。ニート(巧いわく「高等遊民」)でなぜ悪いと開き直って、弁解しまくる巧。その語りと、モブの音楽、鷲尾のツッコミと依子のなんとも言えない表情が、リズミカルに絡み合いながら、テンションは上り龍のように天高く舞い上がっていった。
月9を見ている人たちは、フラッシュモブが大好きな人たちも多い気がするのだが、完全にそこをも敵に回すのである。
でも、それら毒については素知らぬ顔で、話は、巧のニート(高等遊民)問題へ。まったく労働をしてないのみならず、母が病気と知ってもなおその寄生という生き方を改める気のない巧を、依子は「エラー」と手厳しく批判。だが、巧は負けていない。「人の生き方にエラーなんてないんだ! 幸せは人の基準で決めるものじゃないんだ!」「君たちが正義だの善だのと言ってることはな、所詮世間が作った倫理感の受け売りに過ぎないなんだよ! 善とは、家畜の群れのような人間と去就を同じうする道にすぎない! By 森鴎外!」と見事な反論をする。
この発言によって、巧は、古沢の代表作「リーガルハイ」の主人公・古美門(堺雅人)と近いキャラクターであることがわかる。古美門は「真実なんてどうでもいい」とお金のために弁護士の仕事をしていた。巧と古美門の違いは、なんだかんだ言っても、依頼人の利益は守っていた古美門に対して、巧はだれひとりに利益をもたらすことがないということだ。それでいいのだろうか。もしかしたら、それでいいのだ、というところに「デート」の挑戦があるのかもしれないが、しばし見守ってみたい。
それにしても、「デート」は、論理的な長台詞を攻とすると、それを聞いている人物の表情が守で、攻守共に盤石だと感じる。殊に、依子や巧の主張の聞き役を担わされている中島裕翔が、いい仕事をしている。依子に対しては、その価値観が理解できないという顔をうっすら出し、巧には明から様に否定的な顔に。その調節の細やかさと正確さは、数値にうるさい依子が認めていいレベルだ。
(木俣冬)