「見つけた。あなたが私の友だち。
あなただったのね。私はあなたのことが大好きだった……」
とうとう百合城銀子との過去を思い出した椿輝紅羽。たたずむ銀子に近づいていく。と、首元に光る星のペンダントに気づく。
「そのペンダントを持っているのはお母さんを殺したクマだけ。どうしてあなたがそれを持っているの!?」
銀子の『罪』に関しては、これまでやんわりと示唆されている。
たぶん「澪愛を殺した」というのはミスリードで、実際は純花にまつわる『罪』のはずだ。ああ〜紅羽、違うんだよ〜というもどかしさから始まった「ユリ熊嵐」8話「箱の花嫁」。しかしオープニング明けからは、想像以上の怒涛の展開が待っていた。

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もうひとつ張られていた伏線がある。それは箱仲ユリーカがクマであり、また一連の出来事に深くかかわっている人物である、ということ。
百合園蜜子も百合川このみにしろ、これまでクマだと判明したキャラクターには「百合」が名前の中に入っている。
「ユリーカ」も、カタカナではあるが、ユリだ。
また、前回びっくりするほどさっくりとクマショックされた針島薫。彼女が何者かと語り合っていたベッドの背景にうっすら映っていたのは、赤い引き出し。7話の時点で、ユリーカが針島を殺したクマであることははっきりと示されていた。
予想としては、10話〜11話あたりでそれが明かされるのだと思っていた。そんなスピードではなかった。


語られるユリーカの過去。ユリーカは学園の前に捨てられていたクマであり、「彼」によって育てられた。「大事なものは汚れる前に箱の中に入れてしまわなければならない」という考えを持つ彼は、ユリーカを箱の中に入れる。しかしユリーカ以上に汚れのない存在を見つけた「彼」は、ユリーカを置いていこうとする……。
「彼」がいなくなっても、学園という箱の中で暮らすユリーカは、ある日澪愛と出会い、箱の外から出る。ユリーカは澪愛が大好きで、澪愛もユリーカが大好き。

「わかっていた。わかっていたのに。澪愛の『スキ』は私の『スキ』と違う」

銀子と紅羽の「スキ」、ユリーカの過去、銀子と澪愛の間で起こったこと、澪愛が死んだ理由、ユリーカの目論見、銀子の「罪」。
この辺り、3話くらいかけて描かれるものだと予想していた。これらがすべて1話で、30分とは思えない濃度で次々と展開される。
「ほら、ここに伏線があったでしょ?」という演出はない。
かといって、急ぎ足や説明不足といった印象はしない。観る側の「これはミスリード、これは伏線……」といった予想を把握し、信頼したうえで話が進められている。
絵コンテ・演出はベテラン金子伸吾。「少女革命ウテナ」や「輪るピングドラム」などの幾原作品にも参加している。

ひとつ気がかりなのが、OP。幾原作品は、物語のオチがOPで暗示されるという傾向がある。
「少女革命ウテナ」のOPでウテナとアンシーの手が離れる映像、そして「たとえ離れ離れになっても 私は世界を変える」という歌詞は、39話見終わってから見返すと「壮絶なネタバレ!!」と叫びたくなる。
OP曲の「あの森で待ってる」も、ボンジュール鈴木が「台本を読ませていただいて、森島明子先生のイラストを見ながら想像して」の繰り返しで生まれた曲(『CDジャーナル』3月号インタビューより)。物語の根幹となる要素が散りばめられている。
手をつなぐ銀子と紅羽。るるの頬にキスする銀子。頬を寄せ合うるると紅羽……。
「ユリ熊嵐」は1クール作品。ストレートに謎めいた部分は7話と8話でほとんど整理され、あと残り4話がどうなっていくのか予想できない。OPで描かれた光景に向かっていくのだとしたら……ど、どうなるの!?

(青柳美帆子)