朝ドラ「まれ」(NHK 月〜土 朝8時〜)5月23日(土)放送 第48話より。脚本:篠崎絵里子 演出:渡辺一貴

第8週「危機的クリスマスケーキ」の最終話となる48話は、危機に次ぐ危機。

希(土屋太鳳)は、ルセット(レシピ)を浅井(鈴木拓)に譲ったことが池畑大悟(小日向文世)にバレて、採用試験不合格を言い渡されてしまいます。
「ルセットはパティシエの命だ。その命を お前は あっさりと浅井に渡した」
と怒る大悟。
「盗むのも盗まれるのも罪じゃない。盗んでも生き残ろうとして 当たり前の世界だ。それを自分から 差し出すようなやつは クズだ。」と続けます。

どうりで、47話で、能登の食材を使ったルセットに可能性を感じた途端「おれがつくる!」と作り始めたわけです。
大悟にはブレがありません。
彼は「何かを得たいなら 何かを捨てろ。そうしなくても済むのは ほんの一握りの天才だけだ。俺はそうやって 世界一を目指してきた。」とも言います。
そんなこと言って、結婚して子供もふたりもうけているじゃないか、と思うものの、前半、天中殺にて家族でご飯を食べているとき、まったく会話してなくて、冷えきった食卓な感じなんです。
家庭を省みず娘に寂しい思いを強いていたのは確かですし。大悟は世界の巨匠になるために一般的な家庭団欒を捨てているんですね。
とはいえ、家庭ももってないってほうが説得力はあると思いますが。
「まれ」は先鋭的なものを目指しているわけではない、日本全国の多くのひとたちに向かった庶民的な朝ドラだからか、描写が若干ゆるいです。とくに48話ではそれは顕著で、クライマックス、能登の年忘れパーティー。徹(大泉洋)がでっかい夢を捨てる宣言をしたら藍子(常盤貴子)が、「でっかい夢見ない徹さんなんて 全然 魅力的じゃない!」と怒りだしたかと思うと、圭太(山崎賢人/崎の大は立)が一子(清水富美加)に自分が塗った2本めの箸を渡し激怒され(鈍すぎるだろ、圭太!)、さらに、なぜか洋一郎(高畑裕太)が希に電報打って励ましたことを咎めはじめて大げんかに(みのり〈門脇麦〉をいつも余計な報告をしている感じに使うのもどうかと)。

喧嘩×喧嘩がはじまって、それをごまかすために、「夢のない あなたにこの歌をとどけよう〜♪」とうみねこ座のメンバーが唄いあげ・・・その状況を見て一徹(葉山奨之)が「カオスや」と呆然とする。
ふたつの喧嘩がどちらも、いままで溜まっていた気持ちが噴出した結果であることや、うみねこ座のひとたちの意識が喧嘩に向かっちゃっている時点で、理屈ぽくて、「カオス」とするには中途半端。せめて、コーラスはまったく無関係に楽しく歌っていないと成立しないでしょう。
その3つの様子をスローモーションで見せるのも古すぎてびっくり。笑ってほしくて古さを出しているのかなあ、謎過ぎる演出の重ねがちょっと「危機的」。
ただ、夢をあきらめ、能登に骨を埋めるつもりで能登の言葉を覚えはじめたと披露している徹とその痛々しさに絶えられない藍子の姿はひりひりしました。
こういうのが「まれ」のいいところだと思うのに、なんで無理矢理おもしろを意識しようとするのだろう。と私まで藍子の「やめて!」気分になりました。9週に期待。(木俣冬)

【今日の、勝手に名言】
「普通の声もいいなおまえ」(大悟)
希のために追いかけてきてついに言葉を発する高志(渡辺大知)に向かって言う言葉。
(木俣冬)

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