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声優・坂本真綾と、歌手・坂本真綾の違い
──あるときは声優、あるときは歌手と、一人で何役もこなすような生活を真綾さん自身はどう感じていますか。
坂本 よく「どうやってモードを切り替えるんですか」と質問されるんですが、自分ではあまり意識していなくて。ただ、声優や女優など演じる仕事のときは裏方に徹したいと思うし、音楽のときは逆に「自分がどうしたいか」を突きつめたいと思う。仕事によって求められる役割が変わるので、自然と“こうありたい自分”も変わりますし、無意識のうちにモードを切り替えているのかも。
──気持ちを切り替えるのは得意なほう?
坂本 ぜんぜん! どちらかというと不器用なタイプだと思いますよ。例えば、ミュージカルが始まったら、本番まではなるべく他の仕事を入れず、専念したい。ただ、なんだかんだとやらなくてはいけないことが増えてしまって、結果的にあれこれ同時進行でやらなくちゃいけなってしまう。欲張りなんでしょうか(笑)
手持ちぶさたになると、つい書いちゃうんです
──エッセイ集『満腹論』にも大雪で電車が止まる中、「こんなときまで仕事するんですか」と言われながら、原稿を書いていたというエピソードが登場します。
坂本 そうそう。マレーシアで帰りの飛行機が台風で欠航しちゃったときも、ホテルで原稿を書いてました。締切に追われてというのもあるけど、どちらかというと好きだからやめられないという感じが近いかも。締切がなくても手持ちぶさたになると、つい書いちゃうんです。

──見習いたい……! ネタ帳を作っていたりもするんですか?
坂本 たまにケータイにメモするぐらいです。ただ、ネタは常に探していて、何かあるたび「これはエッセイに使えるかも」なんて(笑)。あと、声優や女優の仕事は、“自分ではない誰か”の人生を疑似体験するという側面もあって。“思い出”が膨大に増えていくんです。ある役を演じることで自分の中から沸き上がってきた感情が、のちのち作詞に役立つといったこともあります。
少女義体の素子を演じたのは15歳のときでした
──2015年は真綾さんのデビュー20周年という節目の年でもあります。
坂本 ちょうど20年前、15歳のときに「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」で少女義体の素子役をやらせてもらっているんですよね。それがアニメの声優としてのほぼ初めての仕事でした。時を経て今、こうして素子役を演じるという巡り合わせに不思議な縁を感じています。30代になり、10代の頃には絶対できなかったような役を演じられるようにもなりました。この先も10年、20年と続けていくなかで、仕事の幅もさらに広げたいし、経験したことのない役にも挑戦していきたいです。

*映画最新作「攻殻機動隊 新劇場版」(大ヒット公開中)にあわせて、7月4日深夜0時からはアニメ「攻殻機動隊S.A.C 2nd GIG」がアニマックスで放送される。
(島影真奈美)