NHKの番組「サラメシ」への投稿がきっかけで、とある夫婦の箸袋を使った往復書簡が書籍になった。それが『きょうも箸袋でラブレター』だ。
3年間で500枚以上のやりとり

妻は仕事へ向かう夫のために毎朝お弁当を作り、その箸袋にイラストと一言メッセージを添える。箸袋を見た夫がお昼休憩中にイラストと一言を書き込み、空になったお弁当と一緒に妻へ返すのだ。
夫がお弁当を持って行く日にはほぼ毎回そのやりとりが行われ、3年間でその数500枚以上にもなるという。

夫から返信が来るようになったのはここ3年くらいだが、妻の歌代子さんがお弁当に手書きのメッセージをつけ始めたのは10年ほど前からだという。10年間続けられるのは本当にすごい。どのような心持ちで箸袋ラブレターを書いてきたのだろう? 著者の歌代子さんにお話をうかがった。
――毎日続けるのは大変だろうと思ったのですが、継続するためのヒケツは何でしょう? 特に手書きのメッセージが一方通行だったころ、モチベーションはどこにあったのでしょうか?
「元々、返事を期待していなかったので、モチベーションなるものはありませんでした。ただ、会社でクスッと笑ってくれるだけで良かったんです。
それから私は家族にこういったサービスをするのが好きなのです。どんな顔をして読むのかしら、帰ってからどんなコメントをくれるのかしら、と考えるのも楽しいんです」

――お弁当にメッセージを添えるようになって、ご夫婦の関係に変化はありましたか?
「変わりましたよ! 全然違います。
歌代子さんが特に気に入っているのは、このやりとりだ。

「本当に打ち合わせもしないで3日間連続で描きました。主人も一生懸命考えてくれたのが嬉しくて!『かよこさん帰るよ~』って見て、私、泣きそうでした!」
大切な人に楽しく気持ちを伝える
こんな風に早く帰りたいと思ってもらえる家庭を築いているのはうらやましい限り。本書を読んでいると、本当にご家族の仲むつまじさや、お互いに感謝して日々の生活を送っていることが伝わってくる。歌代子さんは何かご家族のために気をつけていることがあるのだろうか。
――夫婦円満・家族円満のため気をつけていることがあれば教えてください。
「うちは家族が私と決まった行動をします。それがバロメーターです。
箸袋を見てもらえれば分かると思うが、そのやりとりはギャグの応酬などの他愛もない無いものだ。あらためて感謝の気持ちを伝えるのもいいが、普段のちょっとしたやりとりで思いやりは伝わるものなのかもしれない。
そして、何よりも自分自身が楽しむことが大切だ。毎日箸袋にメッセージを書くのが難しい人でもきっと自分なりの楽しい伝え方があるはず。普段の生活の中でちょっとした楽しみになり、大切な人に少し気持ちを伝えられる。そんな何かが見つかれば人生は明るく変わりそうだ。
(上村逸美/boox)