朝ドラ「あさが来た」(NHK 月〜土 朝8時〜)2月18日(木)放送。第20週「今、話したい事」第118話より。
原案:古川智映子 脚本:大森美香 演出:西谷真一
あさ、大隈重信に会う「あさが来た」118話
イラスト/小西りえこ

118話はこんな話


大隈重信(高橋英樹)に会いに行ったあさ(波瑠)は大隈と語らい、大学設立に協力するという言葉を得た。

お猿さんのプレゼンテーション


あさはかなりの人たらしだ。
五代友厚、渋沢栄一、そして大隈重信・・・と次々、力のある人に手をさしのべてもらう。
それは彼女の人柄ゆえ。真っすぐで勉強家で滅私の心をもっているから。あさは好きなことを自由にやっているようだけど、そもそも、お家を守るために頑張っていたし、今も、人材を育成するために頑張ろうとしている。
そんな彼女の欲のなさが、大隈の心を動かしたのだろう。


大隈攻略に至るまでのあさは、自分を「お猿さん」化する。
大隈の妻・綾子(松坂慶子)に歓待され、「行くとこ行くとこたいていはお猿さんがいたりしてびっくりぽんなことばかりでしたのに」と面食らうあさ。ずいぶん昔の話だが、以前の彼女は訪問先でぞんざいに扱われていた。
「あさはその時、気づいたのでした。今、この館では、自分こそがみんなにとってのお猿さんなのかもしれないことに」(語り/杉浦圭子)
こうして、あさはみんなの前でパフォーマンスをしてみせる。なんていう度胸の良さ。

眉間に2本くっきり皺を寄せながら、弁舌鮮やかにプレゼンテーションをして、大隈を圧倒。イチゴ栽培の話以来の感動って褒めてるのかなんなのか。
「宝玉」がなぜか字幕で出たり、しゃべり過ぎて咳き込んだりと細かいのは、やや堅苦しい弁論に視聴者を飽きさせない工夫か。
大隈は飽きるどころか「議会の喧嘩のように、その場をいいくるめるようなおじさんたちとのやりとりにもう飽き飽きしていたのだ。」「あんたの弁舌は実に愉快であった。」とむしろ大喜び。
彼の言う議会の喧嘩は、現代における、ただやじるばっかりで建設的な話が出てこない国会中継批判のようだ。
それに比べてあさは、新次郎も指摘していたことで、他人のことを決して悪く言わず(政府をディスってはいるが)、前向きにいい方向に物事が進む希望を語る。
それこそが人たらしの極意だろう。

毎日のようにたくさんのお客さんが来ているが、本当に自分の味方はいないとつぶやく大隈の孤独は、亡き五代と似ている。
大隈は、首相時代の明治22年、爆弾攻撃に遭って右足を失うという、修羅場を体験しているのだ。
あさは、政治も商いも生き馬の目を抜くところがあると大隈の孤独に理解を示し、彼の心のドアを開ける。たちまち大隈は、こんな世の中だから「人を育てることがなによりも大切」とみごとに誘導され(これが意識的ではなくごくごく自然になのがあさの凄技)、あさに協力を申し出るのだ。
鮮やかな、お猿さん芸だった。

(木俣冬)

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