しかし時間は刻々となくなっていく。
インタビュー第5回です
聖飢魔II地球デビュー30周年記念期間限定再集結にて行われた「全席死刑TOUR」の活動絵巻教典(DVD)
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皆で飲みに行けばいいのに
閣下 最近、こういう取材が多いんだ。
アライ そうですか。
──「ずっと長いこと聞いてました」みたいな人からの?
閣下 (笑)こないだ、『テラフォーマーズ』の作家の貴家くんとも対談し、それから中野信子女史、脳科学者の。あの取材もこんな感じでだったよ。(笑)
──でも皆、特に手を取り合うこともなく。好きな者同士、気持ちを溜め込むばかりで出会わないから。
閣下 皆で飲みに行けばいいのに。(一同爆笑)
──漫画家のカラスヤサトシさんとは熱く(デーモン閣下や聖飢魔IIについて)語り合っているんですが……
閣下 カラスヤサトシさん? ほう、何描いてる人?
──「カラスヤサトシ」って題名の漫画を。(笑) アフタヌーンという雑誌などで結構人気の方です。
閣下 へえ。
──(閣下がカラスヤさんの長年の熱い思いを知らなかったことになんだか動揺しつつ)その4コマ漫画の中に何度も閣下のネタが。
閣下 へえ。
──(動揺でなおもヨロヨロした気持ちで)著作を送るように言っておきます。
閣下 そうですか。いや買いますよ。……カラスヤ?
──全部カタカナでカラスヤサトシ。たぶん「カラスヤサトシ」一巻から突然閣下出てきますよ。
(補足・筆者が’07年に刊行した同人誌『スポンジスター』の中で、カラスヤ氏とは聖飢魔IIについてだけ語り合う五万字にも及ぶ対談を敢行しており、当時閣下の所属する事務所にも送ったのだったが、みられていない様子。だが、熱過ぎる内容で、みられなくてよかったという気もするが)。
閣下 (プロフィールを眺めながら) ‘73年11月16日生まれ42歳。研究します。
──だからまさに僕と同世代で、熱く語り合うんですけど、そこから広がらない。なんか(アライさんに向かって)「信者」と仲良くなれないのよ。
アライ:そうなんですか。
かいさいってどういう字書きますか?
──少し前かな、ICBMツアーと銘打って、海外で活動をされましたよね。その活動絵巻教典(DVD)が出て。同時に国内のオーソドックスなツアーの活動絵巻教典も出た。で、閣下のウェブの当時の日記によると「皆、オーソドックスな活動絵巻教典の感想しかよこさない」と。海外ツアーのほうが新しい試みで、全曲英語に変えて、未知の土地でアウェイのような場所に行ってやってきた新しい試みなのに、いつもの安心感のあるオーソドックスなほうの感想ばかりよこすのは、脳が古びているんだと。
(世界を巡ってのツアーを収めたDVD)
閣下 言ってた? ああ、なんとなく記憶にあるな。
──それで、閣下、なんとなくもどかしさを抱いているんじゃないかな、と感じたんです。僕は閣下が、常に新しいことに挑戦していることこそがすごいと思っていて、聖飢魔IIのときから、ソロアルバムはバンドと全然違う試みで、それこそ詠み人知らずみたいに、高校生だから分かりきらないところもありながら、なんかすごいものを感じ取った。で、その次のソロアルバムは全然違うふうにしたり、一悪魔(独り)芝居をやってみたり。常に新しい表現を見据えている。
(オーソドックスなツアーを収めた方)
閣下 そうだね。要するに規正の、従来のハードロックを聴いてきたかつての信奉者たちにとってはちょっと違和感のある音であったと。でもこちらとしてはまあそういう部分はあるだろうけれども、せっかく聖飢魔IIがなくなって……せっかくって言い方もおかしいけど。新しい道を歩み始めてこういうことをやるというものを提示しているのだから、なにも最初からそんなに扉を閉めてかからないで、じゃあまあ、っていうふうに聞いてくれればいいのになと思っていたけれども、なかなかやっぱりその扉は重たかったという。だから作品自体は今でも結構良い作品だと自分でも思ってるけれども、世の中一般的な評価というかウケは未だにそんなに。「!」が一番好きですっていう人きいたことないくらいにね。
──「!」いまでも愛聴してますけどね。ICBMのときの日記も、もどかしいのかなと勝手に思ってたんですが。
閣下 もちろん、いろんな信者がいるけどね。面白いのは、解散後に何度か行った「再集結」でね。20周年の再集結、25周年の再集結、30周年の再集結でそれぞれかたちが微妙に違うんだけども、ギターのエース長官が参加しなくなって、ジェイル代官ががっつり入って、つまりジェイル、ルークという新コンビのギター体勢になってまあ10年なんだけども。その最初のころはね、やはりさっきブルボンさん言われてたようにエース長官のパートを弾くジェイル代官だったり、その曲をやる代官がどうしても「違和感がある、見てて変だ」って声は多かったの。
──はいはい。
閣下 それが年を重ねるごとに減っていき……っていう状況を我々、生で見てると非常に面白いんだよね。
──受け入れていく感じがみられる?
閣下 なんていうか、そうそう。こちら側が頑張ってというか、頑張ってっていうのも変だけれども。きっちりとやるべきことを提示していけば、保守的な心というのは溶解していくんだっていう。
──仮に拒否反応があっても、時間をかける作戦。
閣下 うん。それはひょっとすると聖飢魔IIが世の中に対して歩んできた道と同じなんだよね。
──なるほど!
閣下 一番最初は「なんだこいつら?」って見向きもしなかった人がたくさんで。でも以外と最初に拒絶反応を示した人ほど、心の中に残ってて気になってて。もう最初本当に大っ嫌いだと思ってたんだけど、つい気になって何々を聞いてしまったところ、あれ? ってなって、今やどっぷりですみたいな人、結構いる。
──アウェイで知って「どっぷり」ということもあるでしょうね。魔暦12(2010)年の北海道のロックフェスに聖飢魔IIが出ましたね。
閣下 ICBMツアーの、日本でやった最初のミサが北海道のライジングサン。
──他のミュージシャンの回想を読んでいても異口同音に「とにかく聖飢魔IIがすごかった!」と。
閣下 いろんなことが話題になってたよね。
──ロックフェスっていろんな人が出るから、誰が一番盛り上がったかみたいな戦いでもあるっていうか。そこで会場に来る人も、聖飢魔IIを目当てにきた人ばかりじゃない、他の人気者を見にきた人もたくさんいるような場所だから、聖飢魔IIにしてはアウェイだったとも言えるじゃないですか。
閣下 うーん…。
──もちろん熱心な信者もつめかけたと思うんだけども。
閣下 ……すいません、かいさいってどういう字書きますか?
──(不意の質問に動揺しつつ)こころよいに、さいはどういう字かなあ。単純に言うと「やったー!と思う」ってことですよ(本当か? と自分でも思いつつ)。
閣下 すいません、勉強不足で。
──いえいえ、とんでもないです。……なんでウケてるんですか?
閣下 え? (笑) 奇妙な会話が進んでるから。(笑)
──やっぱり、僕が一方的に喋っててね。
アライ あと(質問出来る時間としては)1問くらいかもしれない。
──え!(焦りながら)そのときになんかね、もっとアウェイの場所の聖飢魔IIを見たいなと思ったんですね。ミサのルールを全部分かってるような古参の信者じゃなくて、他のものを見にきたんだけど、みたいな場所でね。聖飢魔IIが出た ’80年代にはロックフェスがなかった。フジロックが’90何年……
閣下 名前が違うだけでね、「夏のイベント」という言い方してたよね。野外ステージで夏、いろんなグループがオムニバスで出てみたいな。
(補足・閣下の認識ではそうだが、’80年代の「イベント」とフジロック以後の「フェス」は客層も含め、ムードに大きな異なりがあると僕は思うのだが、ここでは言及できず)。
──フジロックみたいに洋楽の人がくるような場所でもいいと思う。なんかそういう場所で驚かせてほしい。
閣下 我々が別に出たがってないのではなくて、声がかかれば喜んで出るよって体勢でいつも再集結のときはいるんだけれども、やっぱり結局ブッキングする人たちのタイミングだったり好き嫌いだったり、いろいろな思惑があるんだろうけれども。
──また次の再集結がいつか分からないですけど。
閣下 分かりませんね。
──(そろそろですといわれ)最後の質問。あの……。
閣下 最後の…。まだまともな質問1つも受けてないけど。(笑)
一同:(笑)
閣下 クイズは出されたけど。(笑)
(ブルボン小林)
その6(最終回)につづく!
聖飢魔II オフィシャルWEBサイト
全国ロードショー中
(C)2016「貞子vs伽椰子」製作委員会
主題歌を収録した「「呪いのシャ・ナ・ナ・ナ / GOBLIN’S SCALE」 (聖飢魔II)もシャ・ナ・ナ・ナっと発売中