25年目のJリーグが、いよいよ明日25日に開幕する。2ステージ制から1ステージ制へ、清武復帰に俊輔移籍、DAZN旋風にカズ50歳などなど、例年以上に話題が多いJリーグの見どころはどこなのか? FM93・AM1242ニッポン放送サッカーパーソナリティ煙山光紀アナウンサーと洗川雄司アナウンサーによる座談会で今年のJリーグ注目点を総ざらいする。

浦和レッズの「恐るべき勝負弱さ」問題。明日開幕Jリーグの見どころをサッカーパーソナリティに聞く1
煙山光紀アナウンサー(左)と洗川雄司アナウンサー(右)

優勝候補は鹿島と浦和、ダークホースはセレッソと大宮?


─── ズバリ優勝候補はどこか? そして毎年ここで挙げたチームがリーグを盛りあげている「ダークホース」はどこでしょうか?

煙山 鹿島と浦和の2強かなぁ……普通すぎますけど。ダークホースはセレッソ大阪。清武(弘嗣)が戻って、柿谷(曜一朗)がいて山口蛍がいてと、メンバー的には代表の中盤が構成できる感じですからね。優勝とは言わないですけど、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)圏内は狙えるんじゃないかと。

洗川 セレッソのユン・ジョンファン監督に話を聞くと、「優勝とは言わないが、まずは中間順位」っていう現実的な目標を答えていたのが印象的です。

─── ACLの話でいえば、煙山アナの優勝候補・浦和と鹿島の2チームは、先週ゼロックス杯で戦ったあと21日にそれぞれACL開幕戦で、明日はJ開幕戦という、いきなりの過密日程でのスタートです。

洗川 13日のキックオフカンファレンスで広島の森保監督に取材した際、「去年の開幕前、広島はほとんど準備期間がなかった」という話をしていました。
一昨年の優勝チームでしたから、クラブW杯→ACLと過密日程になっていました。一方、去年は年間順位6位と下がってしまったので、結果的には準備期間が増えた。「一昨年優勝したシーズンの開幕前みたいな感じかな」と言っていました。

─── しっかり準備ができたぞ、と。

洗川 そう考えると、ほぼほぼオーバーホールなしにシーズンに突入する鹿島は、意外とキツいんじゃないかな、と感じています。長い1シーズン制になったことも考えると鹿島連覇はなかなか難しい。
となると、優勝候補は浦和なのかな、と。対抗というかダークホースを挙げるとすると、僕は大宮が気になっています。

─── 浦和筆頭でダークホース大宮! 埼玉が盛り上がりますね。

洗川 大宮の渋谷監督に話を聞くと、「うちは去年の失点数が上位3番目なんだ」と。調べてみると、浦和、鹿島に次いで実は失点数が3番目に少なかったのが大宮だったんです。1シーズン制という長丁場を考えると、失点が少なく安定して戦えるチームが最後に優勝争いに加わってくるのかなぁと。
渋谷監督が課題に挙げていたのが、「上位に加わるためには、あと10得点上積みしないといけない」と。その課題さえクリアできれば……。
浦和レッズの「恐るべき勝負弱さ」問題。明日開幕Jリーグの見どころをサッカーパーソナリティに聞く1

─── その課題というのはチームとして改善していくのか、誰かこの選手に期待したい、というのがあるのか?

洗川 これがまた家長(昭博)が移籍して、泉澤(仁)も抜けてサイドをえぐる人がいなくなって……大前元紀が加わりましたが、今まで堅守速攻だったチームがどう点を取りに行くのか? ちょっと前掛かりなサッカーもやらなきゃいけないだろうなと思います。


浦和レッズの「恐るべき勝負弱さ」問題


洗川 ほかに気になるところといえば……去年、第2ステージ2位の神戸はどうですか? ネルシーニョ監督に話を聞くと、「さすがにこの補強をしてもらったら、タイトルを取りにいかなきゃいけない」と言っていました。

煙山 神戸は地味に上位には来るような気がします。

─── 年俸6億ともいわれるルーカス・ポドルスキの加入は6月までずれ込むようですが、ほかにも高橋秀人(←FC東京)、大森晃太郎(←G大阪)、そしてネルシーニョ監督の柏時代の愛弟子・田中順也(←スポルティングCP)と続々と。

洗川 だんだん神戸が“プチ柏”状態になってきました。
ということは、浦和でペトロヴィッチ監督が“プチ広島”を作り上げて骨格を固めたように、ネルシーニョ監督のやりたいことが分かる選手が増えてきて、阿吽の呼吸でできることが増えて行くのかな、と。ということで、大本命:浦和、対抗:大宮、大穴:神戸みたいなイメージで考えています。

煙山 浦和は当然強いんですけど、やっぱり気になるのは「恐るべき勝負弱さ」。浦和サポーターには怒られるかもしれませんが、去年のチャンピオンシップなんてもう……。結局、2ステージだろうが1ステージだろうが、ここ1番、という勝負がかかったときに弱いっていう部分を克服しないことには。そこがある意味、鹿島との違いだと思うんです。


─── 去年のチャンピオンシップ、先週のゼロックス杯と、直接対決では最終的に鹿島が結果を残しています。

煙山 浦和は、ゴールが決まるときは華麗な攻撃ですごく鮮やかな。あんな攻撃は鹿島にはできないんです。だけど、その良さを潰しにかかって来たときこそ、鹿島の凄味が出るというか。その鹿島を圧倒するためには、浦和はもう一段階進化しないといけないんですがタレントが足りてない。あれだけ手間をかけてチャンスは作っても最後のところで決まらないと、もう一段上に行くのはなかなか大変なんじゃないかと思います。


─── まだ名前の出ていないチームでは、川崎から移籍してきた大久保嘉人のいるFC東京はどうでしょか? 明日の開幕カードで優勝候補の鹿島と対戦します。

洗川 タレントで見たら、大久保がやってきて永井謙佑(←名古屋)も入って、後ろには太田宏介(←フィテッセ)が帰ってきて、と揃っています。

煙山 あとは高萩洋次郎(←FCソウル)をどこで使うのか? ボランチでの評価も高いけど、2列目でも使える。ただなぁ……僕はもう17年以上FC東京のソシオなんで言いづらいんですけど……優勝はないと思います。

洗川 (笑)

煙山 ソシオの僕が言っているというのでわかっていただきたいんですけど(笑)。篠田監督も「プレッシャーはかかってない」と言っていたので、去年の年間順位9位は越えてくれるとして、どうだろうなぁ……2ステージ制なら間違いもありえるんですけど、1ステージ制はやっぱり経験値が差となって出てくるので。

洗川 地力が左右するところがありますよね。

煙山 まだ勝者のメンタリティは植えつけられてはいないと思うんです。ただ、それこそ鹿島との開幕カードで勝ったら面白いですよ。鹿島なんかは逆に一戦目に負けても不安視する必要はないチームですけど、FC東京は一戦目にまず勝たないと今年の展望は描けないかな。


鹿島にはDNAレベルでの強さがある


─── 優勝候補に挙げた鹿島の強さはどこにありますか?

煙山 鹿島はやっぱりセンターライン。永木(亮太)がいて昌子(源)がいる。僕は去年のクラブW杯、スペインに行った柴崎岳よりも昌子が化けた戦いだったと思っているんです。そこに新潟からレオ・シルバが加わってきた。メンバー的には、相当強いんじゃないかなと。

洗川 鹿島の石井監督も「去年の経験で積み上げられた部分はある」と、自信をのぞかせていました。記者からは「柴崎が抜けた穴は?」といった質問も多かったんですが、去年もカイオが抜けて、それでも優勝したわけです。石井監督も「移籍で抜けたマイナス部分を見るじゃなく、今いる選手の特徴をうまく組み合わせるのが監督の仕事だ」とはっきり言い切っていました。

煙山 そうはいっても、紙一重ですよね。実際、去年の石井監督って、シーズン途中で退任する可能性もあったわけですから。ただ、これは広島の森保監督も言っていたことですが、Jリーグ立ち上げからずっと同じ哲学、チームコンセプトを続けているクラブって鹿島だけなんですよね。ほかのチームはどうしたってフラフラ変わってしまうけど、鹿島は弱い時期があってもチームの根幹はずっとブレなかった。チームとしてDNAレベルでの強さがある。ああいうのに続くチームはもう2つ3つJに欲しいですよね。

─── 広島なんかがその「続くチーム」なんでしょうか?

煙山 浦和もペテロヴィッチ監督になってスタイルが確立されてきましたけど、浦和にしてもサンフレッチェにしても、それはあくまで監督の長期政権によってできていること。僕も以前、森保監督に「森保さんがそれ(DNA)を作っている」と言ったことがあるんですが、森保さんがいなくなった途端に崩れちゃうんだったら何の意味がない。そこを今後、どうやってコントロールしていくのかは大きな問題なのかなと思います。

洗川 今年、5年続いた風間体制から鬼木新監督に切り替わったフロンターレも、チームスタイルを維持できるかどうか注目されますよね。

煙山 新監督の鬼木さんがいくらコーチからの継続だといっても、課題は多いはずですよ。どうしたって“風間オリジナル”という側面が強かったですから。メンバーも変わるし、結構大変なシーズンになるんじゃないかな、という印象があります。それでも、ペトロヴィッチ監督の後を受けた森保さんがうまくアレンジして強いサンフレッチェを作った例もあるので、期待したい部分もあります。風間さんもあれだけいいサッカーをしれも、最後は勝てなかった。そこはペトロヴィッチと似たところがあるので、そこを上手く鬼木監督がアレンジすることで確実性が増せば、川崎は面白いですよ。

洗川 風間さんがあまり得意としていなかったメンタル形成の部分で巧い方向性を打ち出すことができれば、意外とすんなりとタイトル獲る可能性もありそうです。

煙山 あと、ガンバは上位には来そうと思いながらも、遠藤(保仁)と今野(泰幸)頼み。二人とも年齢がひとつあがるわけで、宇佐美貴史もいなくなった今、チームの過渡期だともいえます。獲得に動いているという元広島FWのドウグラス次第じゃないかなと思います。ただ、(長谷川)健太さんがなんだかんだACL圏内には滑り込ませそうな気もします。そこが長谷川健太の勝負強さ。
浦和レッズの「恐るべき勝負弱さ」問題。明日開幕Jリーグの見どころをサッカーパーソナリティに聞く1

─── 話を聞いていると、今年は例年以上に監督の名前が話題にあがっています。今まで以上に監督の手腕が問われる1年となりそう、ということでしょうか。

煙山 それはあるかもしれないですね。僕の好きな監督が多い、というのもありますが、選手はもちろんのこと監督や目指すべきチームのスタイルなんかにも注目していくと面白いと思います。

(パート2:注目選手編に続く
(オグマナオト)