30年前、まだ誰もMLBなんて単語を知らない頃、大リーグは遠かった。
だから、日本の野球ファンは87年のボブ・ホーナーの来日を未知との遭遇と盛り上がり、地方のデパートで5000円くらいで売ってる怪しい緑色のアスレチックスのパチもんスタジャンを喜んで着て、『ファミスタ』の「メジャーリーガーズ」のデタラメな強さに憧れたわけだ。
だが、1本の映画の登場によって、ニッポンのお茶の間と大リーグの距離はグッと縮まった。89年公開の映画『メジャーリーグ』である。この作品は度々テレビでも再放送され、日本語吹き替え版で繰り返し観た人も多いだろう。
90年代初頭、知ってるメジャー球団と言えば、映画のモデルチームとなったクリーブランド・インディアンス。そんな子どもたちも多数存在。
先日、動画配信サービスのHuluにシリーズPART1～3までアップされていたので、懐かしくなり一気に観賞したが、今振り返ると先見の明があり、その後の野球界の歴史を先取りしている描写も多いことに驚かされる。
例えば、映画として最も完成度の高い1作目の『メジャーリーグ』では、女性オーナーのレイチェルが球団のマイアミ移転を目論むが、史実でマイアミにフロリダ・マーリンズが誕生したのは映画公開から4年後の93年。その新興チームで4番を打ったのが西武ライオンズでも活躍したデストラーデである。
2012年からマイアミ・マーリンズに改称したチームには現在、イチローが在籍。多くの日本人にとっても馴染みの深い球団になっている。
同じく89年公開の『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』でも、カブス優勝のシーンの対戦相手で「マイアミ」というチームが出ており、80年代後半の「メジャー球団をマイアミへ」というのは、今のNPB球団拡張案でも度々出る「沖縄にプロ野球チームを」くらいリアリティのある未来予想だったのだろう。
さらに『メジャーリーグ』の主要キャラとして、ペドロ・セラノという直球には滅法強く変化球はまったく打てない巨体の黒人スラッガーが登場するが、この選手の設定は「信仰の自由のためキューバから亡命してきた野球選手」である。
なお当時、キューバ代表投手のレネ・アロチャがMLBでのプレーを希望してアメリカへ亡命したのは91年7月の出来事。レネ・アロチャは93年の11勝が唯一の二桁勝利で、キャリア通算18勝17敗11セーブと平凡な成績に終わったものの、アロチャ事件以降、多くのキューバ選手が自由を求めて海を渡ることになる。
いわば映画の中のペドロ・セラノは、のちのMLBキューバ旋風を先取りしていたわけだ。
そして、1作目から5年後の94年6月に公開された『メジャーリーグ2』では、インディアンスに日本人選手タカ・タナカが入団。とんねるずの石橋貴明が演じ話題となったタナカの肩書きは「元東京ジャイアンツ」である。
しかも「ジャイアンツから外野手を獲った。でもサンフランシスコではなく、別のジャイアンツだ」というギャグのネタとして。
近鉄の野茂英雄は渡米前年、あのマック鈴木もまだ10代のマイナーリーガー、もちろんイチローや松井秀喜といった日本人野手がメジャー球団へ移籍なんて誰も考えもしなかった時代。
この作品公開の10数年後には松井秀喜がワールドシリーズMVPを獲得するのだから、ある意味現実が映画を超えたと言っても過言ではないだろう。
ちなみに『メジャーリーグ』シリーズの中ではまったく話題にならなかったものの、98年公開のPART3も存在する。これまでのインディアンスではなく、ミネソタ・ツインズ傘下の3Aチームが舞台の本作。ってすいません。頑張って最後まで観たけどガチで駄作だったので、PART3のレビューは1行で終わらせてもらいます。
PART1が傑作、2は普通、3は駄作で制作終了のよくあるハリウッドパターン。だが20数年前、映画『メジャーリーグ』を通じて、我々は「大リーグ」ではなく、初めて海の向こうの「メジャーリーグ」の空気に触れることができたのかもしれない。
『メジャーリーグ』
発売日：1989年6月24日
監督：デイヴィッド・S・ウォード 出演：トム・ベレンジャー、チャーリー・シーン、ウェズリー・スナイプス
キネマ懺悔ポイント：89点（100点満点）
今観ても面白い野球映画の金字塔……なんだけど、チャーリー・シーンは破産公表やHIV感染告白と近年スキャンダルにまみれ、劇中曲「ワイルド・シング」を自身の登場曲に使った元巨人の越智大祐は結婚詐欺が報じられるなど、それぞれワイルドなニュースで度々炎上。
（死亡遊戯）
※イメージ画像はamazonよりメジャーリーグ [DVD]
だから、日本の野球ファンは87年のボブ・ホーナーの来日を未知との遭遇と盛り上がり、地方のデパートで5000円くらいで売ってる怪しい緑色のアスレチックスのパチもんスタジャンを喜んで着て、『ファミスタ』の「メジャーリーガーズ」のデタラメな強さに憧れたわけだ。
だが、1本の映画の登場によって、ニッポンのお茶の間と大リーグの距離はグッと縮まった。89年公開の映画『メジャーリーグ』である。この作品は度々テレビでも再放送され、日本語吹き替え版で繰り返し観た人も多いだろう。
90年代初頭、知ってるメジャー球団と言えば、映画のモデルチームとなったクリーブランド・インディアンス。そんな子どもたちも多数存在。
先日、動画配信サービスのHuluにシリーズPART1～3までアップされていたので、懐かしくなり一気に観賞したが、今振り返ると先見の明があり、その後の野球界の歴史を先取りしている描写も多いことに驚かされる。
現実になったマイアミへの球団誕生
例えば、映画として最も完成度の高い1作目の『メジャーリーグ』では、女性オーナーのレイチェルが球団のマイアミ移転を目論むが、史実でマイアミにフロリダ・マーリンズが誕生したのは映画公開から4年後の93年。その新興チームで4番を打ったのが西武ライオンズでも活躍したデストラーデである。
2012年からマイアミ・マーリンズに改称したチームには現在、イチローが在籍。多くの日本人にとっても馴染みの深い球団になっている。
同じく89年公開の『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』でも、カブス優勝のシーンの対戦相手で「マイアミ」というチームが出ており、80年代後半の「メジャー球団をマイアミへ」というのは、今のNPB球団拡張案でも度々出る「沖縄にプロ野球チームを」くらいリアリティのある未来予想だったのだろう。
MLBキューバ旋風を先取りした『メジャーリーグ』
さらに『メジャーリーグ』の主要キャラとして、ペドロ・セラノという直球には滅法強く変化球はまったく打てない巨体の黒人スラッガーが登場するが、この選手の設定は「信仰の自由のためキューバから亡命してきた野球選手」である。
なお当時、キューバ代表投手のレネ・アロチャがMLBでのプレーを希望してアメリカへ亡命したのは91年7月の出来事。レネ・アロチャは93年の11勝が唯一の二桁勝利で、キャリア通算18勝17敗11セーブと平凡な成績に終わったものの、アロチャ事件以降、多くのキューバ選手が自由を求めて海を渡ることになる。
いわば映画の中のペドロ・セラノは、のちのMLBキューバ旋風を先取りしていたわけだ。
日本人選手の獲得がお笑いネタに？
そして、1作目から5年後の94年6月に公開された『メジャーリーグ2』では、インディアンスに日本人選手タカ・タナカが入団。とんねるずの石橋貴明が演じ話題となったタナカの肩書きは「元東京ジャイアンツ」である。
しかも「ジャイアンツから外野手を獲った。でもサンフランシスコではなく、別のジャイアンツだ」というギャグのネタとして。
近鉄の野茂英雄は渡米前年、あのマック鈴木もまだ10代のマイナーリーガー、もちろんイチローや松井秀喜といった日本人野手がメジャー球団へ移籍なんて誰も考えもしなかった時代。
90年代初頭、キューバ人選手や日本人選手がMLBのトップレベルでプレーすることは、映画でお笑いのネタになるくらいありえへん出来事だった。
この作品公開の10数年後には松井秀喜がワールドシリーズMVPを獲得するのだから、ある意味現実が映画を超えたと言っても過言ではないだろう。
ちなみに『メジャーリーグ』シリーズの中ではまったく話題にならなかったものの、98年公開のPART3も存在する。これまでのインディアンスではなく、ミネソタ・ツインズ傘下の3Aチームが舞台の本作。ってすいません。頑張って最後まで観たけどガチで駄作だったので、PART3のレビューは1行で終わらせてもらいます。
PART1が傑作、2は普通、3は駄作で制作終了のよくあるハリウッドパターン。だが20数年前、映画『メジャーリーグ』を通じて、我々は「大リーグ」ではなく、初めて海の向こうの「メジャーリーグ」の空気に触れることができたのかもしれない。
『メジャーリーグ』
発売日：1989年6月24日
監督：デイヴィッド・S・ウォード 出演：トム・ベレンジャー、チャーリー・シーン、ウェズリー・スナイプス
キネマ懺悔ポイント：89点（100点満点）
今観ても面白い野球映画の金字塔……なんだけど、チャーリー・シーンは破産公表やHIV感染告白と近年スキャンダルにまみれ、劇中曲「ワイルド・シング」を自身の登場曲に使った元巨人の越智大祐は結婚詐欺が報じられるなど、それぞれワイルドなニュースで度々炎上。
（死亡遊戯）
※イメージ画像はamazonよりメジャーリーグ [DVD]
