キャッチフレーズは「甘くないオトコの梅酒」


梅酒といえば、ほどよい甘さで飲みやすく、女性にも人気が高いリキュールだ。しかし先日、福井県若狭町を旅したとき、型破りな梅酒を見つけた。それが「BENICHU38°」(ベニチュー38ド)。
砂糖など糖類を一切使っていない無糖の梅酒で、アルコール度数はなんと38%もある。
砂糖ゼロ、アルコール度数38%! 男前すぎる甘くない梅酒
BENICHU38°(720ml/3000円税抜き)

一般的な梅酒のアルコール度数は12~14%ほど。また、無糖というのもめずらしい。自分で梅酒をつくったことがある人ならわかると思うが、家庭で梅酒をつくるときは、梅1kgに対し、砂糖も1kgくらい使う。「こんなに砂糖を使っているのか」と驚く人も多いようだ。

キャッチフレーズは「甘くないオトコの梅酒」だが、女の筆者も飲んでみた。
アルコール感が強いが、ツンと鼻を刺すような刺激はなく、香りにも梅を感じるし、味わいにも梅の酸っぱさがちゃんとある。梅の焼酎のような感じだ。ドライな味わいなので、食事にも合いそう。ロックや炭酸割りがおすすめだというが、ストレートでちびちび飲むのもいい。


「甘くないオンナの梅酒」もある


ちなみにもうひとつ、「BENICHU20°」(ベニチュー20ド)もある。こちらのキャッチフレーズは「甘くないオンナの梅酒」。最後に少し糖類を加えた微糖タイプで、アルコール度数は20%。
一般的な梅酒と比べれば“甘くない”という表現がピタリとくるが、「BENICHU38°」のあとに飲むと、かわいらしい甘さを感じる。
砂糖ゼロ、アルコール度数38%! 男前すぎる甘くない梅酒
BENICHU20°(720ml/2000円税抜き)



「梅酒は甘いから飲まない」という人たちに訴求


商品を販売しているのは福井県若狭町にあり、梅酒や梅加工品を手がける「エコファームみかた」。甘くない梅酒は約4年前に発売し、3年前にBENICHUブランドにリニューアルしたという。広報担当の藤本さんに話を聞いた。
砂糖ゼロ、アルコール度数38%! 男前すぎる甘くない梅酒
エコファームみかたの梅酒工場

「日本国内に梅酒は数千種類ありますが、甘くない梅酒はひとにぎり。梅酒は“甘いから好き”という方が多い一方で、“甘いから飲まない”という方もいる。ネットなどで、“甘くない梅酒を飲みたい”という声をみかけることもあり、開発しました」(藤本さん)

BENICHU20°のキャッチフレーズが、“甘くないオンナの梅酒”であるのはなぜ?
「女性は多少甘みがあるほうがよいかと思って名づけました。
ただ、BENICHU38°と両方を扱っているバーの方に話を聞くと、むしろ逆の現象も起きていて、女性がBENICHU38°を選び、男性がBENICHU20°を飲んでいるようです」(藤本さん)

糖類を使わずにアルコールだけで梅エキスを抽出しようとすると、どうしてもアルコール度数は高くなるのだという。一度飲むとはまる味ゆえ、「BENICHU38°」にはリピーターも多く、試飲会などで先になくなるのも「BENICHU38°」からだとか。

「イベントの試飲などでは、“甘い梅酒から甘くない梅酒までありますよ”と声をかけるのですが、“甘くない梅酒”というキーワードにひかれて立ち寄ってくださる方が多いですね」(藤本さん)

エコファームみかたでは、通常の梅酒も扱っているが、最近では甘くない梅酒が主力になりつつあるようだ。

大相撲優勝力士にも贈呈されている福井の梅


ところで、意外に知られていないのが、梅が福井の特産品であること。福井県の梅の生産量は全国の1~2%を占める程度に過ぎないが、日本海側としては一番の産地であり、福井の梅の梅干しは、大相撲優勝力士にも福井県賞として年に3回贈られている。

福井県の梅栽培の歴史は古く、江戸時代末期に若狭町ではじまったといわれている。栽培されている梅の二大品種は「剣先(けんさき)」と「紅映(べにさし)」。
エコファームみかたの商品には、すべて「紅映」を使っているそうだ。ちなみに「BENICHU」シリーズのBENIは紅映の紅。CHUは焼酎やチューハイといったお酒のイメージ、およびラベルのキスマークのデザインからきているそうだ。
砂糖ゼロ、アルコール度数38%! 男前すぎる甘くない梅酒
紅映梅

「当社が紅映にこだわる理由は、ほぼ100%、福井県内でしか生産されていない品種であること。種が小さく肉厚で果肉の部分が多いこと。そしてほかの品種より、うま味成分の遊離アミノ酸が多いといわれ、梅酒にしたときのおいしさにつながると考えているからです」(藤本さん)


ドライブコースとしても人気の梅の里


若狭町には、5つの湖からなる景勝地「三方五湖(みかたごこ)」があり、この湖畔に梅林が広っている。
湖と梅林の組み合わせはなんとものどか。まるで昔話の世界で、心が安らぐ。6月ごろには梅の実がなり、収穫時期を迎えるそうだ。
砂糖ゼロ、アルコール度数38%! 男前すぎる甘くない梅酒
梅と湖をあわせて見られるところも

砂糖ゼロ、アルコール度数38%! 男前すぎる甘くない梅酒
かなり広い範囲にある梅林

湖畔には梅農家の直売所もたくさんあり、梅干しや梅エキス、梅シロップなどが買える。梅に含まれるクエン酸に、疲労回復効果があるのは有名。梅農家の人によれば、「風邪のひきはじめなどは、梅干しを焼いて湯に入れて飲むといい」そうだ。

砂糖ゼロ、アルコール度数38%! 男前すぎる甘くない梅酒
梅直売所 田辺市三郎

砂糖ゼロ、アルコール度数38%! 男前すぎる甘くない梅酒
道の駅などにも梅グルメが勢ぞろい

若狭町と美浜町にまたがるレインボーラインは、三方五湖の雄大な景色を眺められる人気のドライブコース。これからの季節は、ドライブにもおすすめだ。
砂糖ゼロ、アルコール度数38%! 男前すぎる甘くない梅酒
レインボーライン(有料)から見える景色


「BENICHU38°」や「BENICHU20°」は都内の一部店舗でも取り扱われているが、福井県外で見ることはまだあまりない。ぜひ、こののどかな風景とともに現地で味わってみては。
(古屋江美子)