連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第13週「ビートルズがやって来る」第76回 6月29日(木)放送より。 
脚本:岡田惠和 演出:田中正
「ひよっこ」76話。朝ドラのヒロインが「博打で身を滅ぼす女」だったら新し過ぎる
イラスト/小西りえこ

76話はこんな話


みね子(有村架純)は、茨城の宗男(峯田和伸)のために、歯磨き粉を大量に買って、ビートルズコンサートのチケットプレゼントに応募する。

宗男と武道館


73、74、75話と3話続けて、視聴率20%超え! かなりいい兆しだ。
あかね荘効果だろうか。
イケメン、ツンデレ、漫画家、食いしん坊な大家・・・最強か。

さて。
「武道館 柔道やるところか・・・」などと考えている宗男を演じる峯田和伸が率いるバンド・銀杏BOYZは、2017年、10月13日に、日本武道館公演「日本の銀杏好きの集まり」を行う。初武道館だそうだ。
ちなみに、この年(1966年)には、小泉今日子、斉藤由貴、大槻ケンヂ、斉藤和義、スガシカオ、トータス松本などが生まれている。
説明するまでもないが、小泉今日子は、「あまちゃん」(13年)では、有村架純が大人になった時の役で、宮本信子の娘役だった。


話を戻して、宗男のこと。
なんとか東京に行きたいが、妻・滋子(しずちゃん)は、「6月30日はじいちゃんの13回忌だ」と念を押す。でもまあ、1日、2日もコンサートはあるから、宗男を東京に行かせてあげてほしい。

あとのシーンでは、「こいつのおかげで俺の戦争は終わるんだ」とドキリとする台詞もあった。
イギリス、戦争、ビートルズ・・・宗男の胸中やいかに。

76話で気になったのは、宗男の部屋にも、あかね荘の漫画家くんたちに部屋にあった「少年アワー」のバックナンバーがたくさんあったこと。

「少年アワー」と「少年ランド」は、朝ドラ「ゲゲゲの女房」(10年)にも登場したアイテム。「〜アワー」は「少年サンデー」で、「〜ランド」は「少年マガジン」のことらしい。
宗男は、漫画やロック、昭和のカウンターカルチャー大好きおじさんのようだ。

博打で身を滅ぼす女


ビートルズは、赤坂の山王のヒルトンホテルに泊まるらしい、ということから、すずふり亭では、楽しい妄想が広がる。
みね子は、宗男を喜ばせたい一心で、ビートルズの切符を当てようと、歯磨き粉にお金をつぎこんでいた。

今日の、勝手に名台詞の収蔵庫(会話編)に収蔵決定です! はコチラ。

井川「博打で身を滅ぼす女なんじゃないのか」
みね子「わかんないけど一緒にしてほしくないです」

そう言いながら、みね子は、みんなに歯磨きを買ってもらうと、性懲りもなく、歯磨きを箱買いする。

なんだか、漫画みたい。「みね子ちゃん」とかいう漫画になりそう。でも、ほんとうに、叔父さん思いで泣ける。

それをまた目撃している島谷(竹内涼真)。
ひで(磯村勇斗)は、歯磨きを5つも買っていたが、やっぱりみね子ちゃん、モテモテか。これまた、漫画ちっくな展開。


歯磨きを売っている薬局がようやくしっかり映ったが、このエピソードのために、マスコットのいちこで何度も前フリしていたのだろうか、と思うと細かいなーと感心する。

今日の、高子さん


「これから忙しくなるのかな〜!」(ほんとは忙しくなるのはいや)
「そう言えば切れかかってるから一個」(ほんとは歯磨きなんて要らない)
本心でないことを、わざとらしく、明るく言う高子(佐藤仁美)。
みね子は、こういうことを、そつなくこなしてきたわけだが、高子は正直者のようだ。
それにしても、ちょうど、51年後の6月30日に合わせたかのような、このエピソード。ロック好きな岡田がここに力を入れているのが感じられる。これぞ、岡田惠和の描く高度成長期の朝ドラなんじゃないだろうか。

時代と作家の問題意識や個性と朝ドラの基本理念がうまく絡み合ったときに、面白いドラマが生まれる気がしている。
(木俣冬)