TBS系ドラマ「ハロー張りネズミ」2話後編。今話は見どころがとにかく多かった。
仲井(吹越満)蘭子(深田恭子)も南(リリー・フランキー)もみんな良かった。中でも、謎の男(高橋努)はたまらなかった。(原作)
「ハロー張りネズミ」2話後編。深田恭子の「さらわれ顔」が男の本能に訴えかけてきた
原作5巻

ザックリしたあらすじ


ザックリいうと、25年前に自殺に見せかけ殺されたサンダー貿易副社長・乙吉(平田満)、その娘・蘭子と当時の部下・仲井と当時の仲間の情報屋の南が、「あかつか探偵事務所」に集結して、現サンダー貿易会長の舞原(中原丈雄)に復讐する計画を立てる。というものだった。

森田剛が飼い主を守るために熊に飛びかかる犬みたいでかっこいい


強い主人公が敵をバッタバッタとなぎ倒し、最強のボスに挑む。そういう構図のアクションももちろん爽快だが、味方側が弱い方のアクションシーンも、見ていて楽しい。重要書類を盗みにきた謎の男と、その在処を言わないグレ(森田剛)の戦いがそうだった。

「どこにあんだこら?5秒で殺せるぜ」

情報はないが、この恐ろしいセリフを言った謎の男は、殺し屋を任されているのだから、何かしらの格闘技をやっているか、ケンカでならしたとかそんな感じだろう。対するグレ、こちらも情報はないが、たぶん何もやっていない。何かあったとしても、ちょっとヤンチャとかそんなもんだろう。

体格も実力も違い、戦闘開始からすぐに羽交い締めにされてしまう。即絶体絶命に陥ったグレは、「言うから離して」と嘘をつき、噛み付いて逃げようとする。でも、すぐさま捕まり投げ飛ばされる。普通に闘っても勝てない、だから落ちているものは何でも使う。
椅子でも、酒瓶でも、オタマでも。そして相手が怯むと、すごい勢いで飛びかかる。自分よりデカい相手に突っ込んでいく様は、飼い主を守るために熊に飛びかかる犬みたいだ。

だが、結局は返り討ちにあってしまう。体格が違うのだから当然だ。再び羽交い締めにされると、今度は落ちていたカッターで、相手の腕を刺しまくる。ドラマにおいてカッターって脅しの道具だろ普通。

たまらず腕を離した謎の男に向かって「なんだよ、もっと遊ぼうぜぇ?」もう完全に悪者。しかし、急にピストルを出されると、身を縮こめながら「待って!待って!待〜って!」と逃げ回る。このセリフには、「ピストルとかそういうんじゃないじゃん。命に関わることはよそうよ?」という和解を求めるニュアンスが含められている。最高にダサくて気持ち良い。


塗り絵のような男


パソコンの履歴で、蘭子が泊まるホテルを突き止めた謎の男。そこに五郎(瑛太)が駆けつけ、今度は謎の男VS五郎。五郎は銃を構える謎の男の隙をついて殴りかかるも、やっぱり謎の男は強い。腕をケガしていても五郎を圧倒する。

ここで連れ去られる蘭子が超正統派のヒロインだ。まるでクッパにさらわれたピーチ姫のよう。CMに入る直前に、スローモーションでドアが閉まる瞬間のさらわれ顔は、「助けに行かなきゃ!」と、男の本能に訴えかける。深田恭子は、ヒロインの中のヒロインだと再確認出来るシーンだ。

「いいんだよ。別に捕まっても、俺の仕事はな、これ(書類)を処分することなの!お前ら殺して、これを燃やせばおしまい。それで先生が喜んでくれるなら、俺はどうなってもいいんだよ!」

血だらけで屋上に逃げた謎の男は、追いかけてくる五郎に向かって叫んだ。先生というのは、黒幕の蛭田大臣の秘書の蔵元のこと。
どうやら謎の男は、蔵元に何かしらの恩を感じているようだ。でも、それは騙されているだけな気がする。

例えば、事故の妹の手術代を出してくれた的な、しかし、その事故はそもそも蔵元が仕組んだものだった的な。そんな感じで謎の男は蔵元を信用したまま、五郎に屋上から突き落とされて死んでしまう。

謎の男は、塗り絵のような男だ。なんのも情報出てこなかったが、雰囲気と言葉尻だけで生い立ちや設定を想像させてくれる。観ている人が好きに人物像を描いて良い存在なのだ。それがそれぞれバラバラでも、ストーリーに影響はない。僕は、謎の男は基本悪い奴なんだけど、悲しい奴なんだと思った。

今話はアクションドラマだったが、次回は夏らしくホラー物。またまた作風がガラリと変わる。ほんと、どんな感じになるんだろう。


(沢野奈津夫)
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