本田翼の芝居に対する、「棒読み」「棒演技」という揶揄はいつまで囁かれ続けるのだろう。
「可愛らしいから」という理由で、BeeTV『午前3時の無法地帯』(2013年)に本田翼を起用した山下敦弘監督は、本読みリハーサルでの彼女を見て「どうしよう……」と頭を抱えたというし、そう言われても仕方のない時代はたしかにあったんでしょう。


彼女の演技力への悪評がより加速したのは、おそらくフジテレビの月9ドラマ『恋仲』(2015年)から。試しに「本田翼 芝居」で検索してみると、関連ワードに「本田翼 バイバイ」と出て来るが、ある記事を読むと「嘲笑混じりに本田翼の『バイバイ』を真似しながら飲み会を解散させることが女性の中で流行った」と書いてある。
いや、自分、あのドラマも意外と楽しく観てたんですけど……。アレルギーを覚える人も多かったのかしら。

でも、例えば、先週(8月14~18日)にEテレで放送されてた人形劇『Q~こどものための哲学』で彼女は主役の少年の声を務めてて、それはまあ見事な演技力でしたよ。この番組は2014年から定期的に放送されているのだけど、本田翼はドンドン上手くなってる。

そして、今回のTBS『わにとかげぎす』
本田翼が素晴らしい「わにとかげぎす」いろいろ言われて来たけど、演技力にもう心配はない
原作

今まで第4話まで放送され、評判は上々というか最高。もちろん、毎話必ず生脚を見せ付けてくれる彼女のサービス精神に釣られてないと言えば嘘になるが、彼女のドラマ出演における最高傑作になるのでは? と、存分の期待値を胸に自分はウォッチしてます。

無様な姿を演じるのが本田翼は上手い


8月2日放送の第3話でも、富岡ゆうじ(有田哲平)へ恋する羽田梓(本田翼)への一途な思いは止まらない。
とは言え、彼女はガンガン行くわけじゃない。行きたいけど、行けない。スーパーで袋にたまねぎを詰めながら「言ってしまいたい、こんなに苦しいなら。
富岡さんのことを知りたいし、私のことももっと知ってもらいたい……」
と苦悩する羽田。
しかし、相手は38歳童貞の富岡だ。彼女どころか友達もいない。自分のことを好いてくれる女性がいるなんて思いもしない。鈍感のレベルが尋常じゃないのだ。

だから、羽田はアクセルを踏めない。
苦しすぎて、思い余って、遂には告白してしまいそうになるのだが、いいところでUターンしてきてしまった。

羽田 実はですね、私、富岡さんのことが、す……、しゅ……、主人公に……、そう、これから書く小説の! デパートの夜間警備員が主人公で、なので、富岡さんの職場を見学させてもらえないかなと思いまして。

なんで! でも、接近の度合いが1段階上がったから結果オーライなのか?

彼女が恋愛へ邁進できない理由は、もう一つある。夜のデパートで、監視カメラに映らないよう頑なに顔をガードしながら歩く羽田。なぜ、そんなことをしているのか?

羽田 嫌なんですよね、映るのが。3年も前のことですけど、前に住んでた部屋でベッドとお風呂場、あとトイレにも、隠しカメラが仕掛けてあって。
DVDにも焼かれてたし、たぶんもうネットにも流れてると思うんですけど。

犯人は、なんと当時付き合っていた彼氏であった。「汚れてますよね。終わってますよね、私! 変態ですよね(笑)。……」(羽田)
どう言葉を掛けていいかわからない富岡。無言の間が生まれるが、この空間を救うかのごとく富岡の部下である花林(賀来賢人)と雨川(吉村界人)がやって来た。
そして、花林が「俺と主任(富岡)、どっちがイケてますか?」と羽田へ質問。これって、千載一遇のチャンスでは? ここぞとばかりに「私はヨユ~ウで富岡さんです」と即答する羽田。続けて、富岡をチラ見しながら「だって私は、(大声で)富岡さんのことが好きなんです!」と宣言! しかし、意中の富岡は「あ?」。羽田による一大決心の意思表明にまるで気付いていなかったのだ……。

羽田 聞~いてなかった! この人、聞~いてなかった!!

茫然自失となり、視線が定まらないまま立ち尽くしてしまう羽田。っていうか、とんでもなく可愛いのに、こういうイケてない姿を晒す芝居が本田翼は上手い。
容姿のレベルとキャラクターの差異は、彼女ならではの魅力。他にいそうでいない稀有な個性は、変人・羽田梓を演じるのに打ってつけだ。ナイスキャスティングだし、本田翼は見事に期待に応えていると思う。

ヤバい女を演じるのが本田翼は上手い


8月16日放送の第4話でも、羽田はガンガン行けない。もちろん、富岡はちっとも気が付かない。

以前、富岡から「友達が欲しい」という願望を聞いていた羽田は「その後、見つかりましたか? 人生を語り合える友達は」「私なんかどうですか? 女性はナシですか?」と迫りに行く。しかし、そのテンションは恐る恐る。ツンデレのツンというか、そりゃもう不器用で。富岡は富岡で「ぬるま湯が最高だと気付いた」と、どうしようもないことを言い出すし。
でも、この態度が火を点けたか、打って変わった激情で「私は富岡さんとガッツンガッツン語り合いたいんです!」と、富岡を散歩に連れ出す羽田。いいぞ、行け!

でも、富岡がダメだ。慣れてないからその日以来、羽田を避け始めてしまう。隣人の羽田に気付かれないよう、外出時のドアの開け閉めは物音が立たないよう留意。加えて、“キィーキィー”と音が鳴らないように自転車に油をさす繊細さ。
そんな富岡の態度に悩む羽田は、遂にはQ&Aサイトに「近所に住んでいる友人にどうやら避けられているようです」と相談までしてしまう。っていうか、この女も相当ヤバいな……。でも、このヤバさを、ちゃんと表現できる本田翼の演技力はどうか。

本田翼のエロ可愛さに釣られ毎回必ず観ていたら、いつの間にか演技力の印象が刷新されている。……というシステムが各視聴者に機能してると、私は期待したいのです。『わにとかげぎす』は本田翼の演技史上、最高傑作なるのでは? という予感は、やっぱり揺るぎない。
ちなみに第5話は、本日深夜放送。原作漫画の通りにストーリーが進めば、今夜はかなりバイオレンスな内容になっているはずなのですが……。
(寺西ジャジューカ)