藤子・F・不二雄先生の代表作といえば?
やはり、『ドラえもん』を上げる方が圧倒的だろう。では、その次に続くのは?

これは意見が分かれるのではないか。
世間一般の声ではどの作品が支持を集めているのだろうか。そこで、F先生が亡くなった翌日の大手スポーツ新聞5紙の報道から、その辺りをのぞいてみたい。

『ドラえもん』に次ぐ代表作は『パーマン』が3紙でトップ


96年9月24日、各紙の見出しには「ドラえもん生んだ永遠のマンガ少年」「ドラえもん号泣」など、やはり『ドラえもん』を絡めたものが並んだ。誰もが知る国民的漫画にして国民的アニメ。当然である。

しかし、その後に上がる代表作が様々だったのが、世の中の漫画に対する認知や考え方が分かって面白い。

スポーツニッポン、サンケイスポーツ、スポーツ報知が、『ドラえもん』に続く代表作として上げたのが『パーマン』だ。

『ドラえもん』よりも前に生まれたヒット作であり、2度に渡ってアニメ化もするなど抜群の知名度を誇る。妥当なところだろう。

『オバケのQ太郎』は藤子・F・不二雄の代表作ではない!?


対して、日刊スポーツ、中日スポーツは『オバケのQ太郎』だった。
確かに「藤子不二雄の出世作」ではあるが、この作品は藤子・F・不二雄先生と藤子不二雄A先生の合作である。しかも、当時は権利問題やら何やらで長い絶版状態にあり、アンタッチャブルな立ち位置にあった。

マニア目線でいうと、権利問題のキーマンとされた藤子・F・不二雄夫人の気分を害さなかったか、勘ぐってしまうところである。
もっとも、テレビでのニュースもほとんどが『オバQ』を代表作に上げていたのは事実。


87年にコンビを解消し、藤子・F・不二雄(当初は藤子不二雄F)と藤子不二雄Aに別れたわけだが、藤子不二雄名義のころから作品ごとの分業制だった(デビュー当初をのぞく)ことへの世間的認知は低かったのだろう。

そんな世間の声を代弁した形になったのが中日スポーツだ。
よりにもよって、代表作にA先生の『忍者ハットリくん』『怪物くん』『魔太郎がくる!!』を上げてしまっているのである。漫画に関心のない記者が書いたのだろうが、さすがにこれはいただけない。

ちなみに、『キテレツ大百科』は5番手以下ばかりだった。
88年のアニメ放送開始以来、F先生が亡くなる3ヶ月前までゴールデンタイムで8年以上に渡って親しまれていたのだから、もっと上位で紹介されてもよさそうなのだが……。
単に読者層を意識しただけなのだろうか?

90年代にも人気を集めた藤子・F・不二雄原作のアニメ


F先生作品のアニメというと80年代までのイメージが強いが、実際は90年代にも続々とアニメ化されている。

■『チンプイ』
89年11月、同じくF先生作品の『エスパー魔美』の後を受け始まったのが『チンプイ』。
藤子不二雄漫画全集『藤子不二雄ランド』の巻末に連載されていた、現代版シンデレラストーリーだ。F先生の最後の長期連載にして、未完の作品である。
『ドラえもん』と同時上映の短編映画にもなるなど人気は高かった。

■『21エモン』
さらに、『チンプイ』の後枠に91年5月から始まったのが『21エモン』。

宇宙船が飛び交う21世紀が舞台だったが、連載されていたのは20年以上も昔とあって、アニメ化に際しては年代も含めて大幅に設定が変更されている。
ちなみに、原作の舞台は2018年。現実には、まだまだ宇宙時代は到来しそうにないようである。

■『ポコニャン』
93年4月からNHKで1年間放送されたのが『ポコニャン』。
より低年齢層向けの『ドラえもん』といった内容の10分アニメだった。オープニング&初代エンディングが「大事MANブラザーズバンド」だったことに時代を感じずにはいられない。


■『モジャ公』
95年10月からテレビ東京系で放送されたのが『モジャ公』。
『21エモン』の焼き直し的な位置付けだが、時に1エピソードに80ページも費やすほどの長編ギャグ漫画であり、F先生自身の思い入れも深い作品だ。
アニメ化に当たっては、F先生自ら第1、2話の脚本を担当し、宣伝を兼ねて『開運!なんでも鑑定団』に出演するなど意欲的だっただけに、アニメ放送中の急逝は切なかったものである……。

『21エモン』『ポコニャン』『モジャ公』の連載が始まったのは70年前後と、『ドラえもん』とほぼ同時期。そのあふれるアイディアに驚くばかりだ。
現時点では、『モジャ公』が新規にTVアニメ化された最後の作品となっているが、今後、過去の作品が復活する日もあるのではないか?

筆者的には一連の「SF(スコシフシギ)・異色短編作品」のアニメ化を切望する。

90年ごろ一部がOVAになり、00年代には2作品のみ、日本テレビ系『週刊ストーリーランド』内でも放送されているが、これらのリメイクも観てみたいものである。


※文中の画像はamazonより藤子・F・不二雄大全集 別巻 Fの森の歩き方 藤子・F・不二雄まんがワールド探検公式ガイド