初回では、まず「DV」が取り上げられている。そして10月11日放送の第2回が、複雑だった。色々な事象が絡み合っているのだが、ひとまずここでは大雑把に「AV」としておきたい。出演歴を持つ女性のその後の苦悩が描かれたのだ。

「やんちゃな過去は、女の場合は黒歴史でしかない」
まずは、第2話のあらすじを辿っていく。
夫婦生活を盛り上げるために着付け教室へ通うことにした、菜美と大原優里(広末涼子)と佐藤京子(本田翼)の主婦3人組。女子力の低い菜美は着付けがままならず、同じく教室へ通う落合夏希(高岡早紀)に教えてもらうことに。帯を巻き直してもらう最中、夏希に敏感な部分(腰のあたり)を触れられた菜美は「ハッ!」と声を上げてしまう。その様子を見て「あっちの方の達人系?」と勘繰る優里。
そんな“達人”の夏希の元へ「誰にも気付かれないで静かに生きていけると思ったのか?」と、ある男(岡部たかし)が訪ねてきた。その後、「元有名AV女優がこの町に住んでいます」というチラシが町内にばら撒かれてしまう。この「元有名AV女優」とは、夏希のこと。さっきの男は、夏希をAV業界へ入れたスカウトマンだった。
実は京子の夫・佐藤渉(中尾明慶)が、彼女の出演DVDを隠し持っていた。それを京子はこっそり持ち出し、息を呑みながらDVDを視聴する3人。
その後、夏希宅を訪問した3人はAVを観たことを本人に告白する。彼女らから作品を絶賛された夏希は「ありがとう、そう言ってもらえるとうれしいな」と笑顔を見せており、AV出演の過去について後ろめたさはなさそう。裸を見せた時の感情を、彼女は振り返っている。
「怖かったけど、いざ裸になってみたら気持ちよかったかな? 私は割と厳しい家庭で育って、子どもの頃から女の子はああしなさいこうしなさいと手足を縛られてるような感じがして、社会に出たら『男だ』っていうだけでえばってるような男ばっかりで、いつも何かを押し付けられてるような気がしたの。思い切って裸になったことで、そういう窮屈なことから少しだけ自由になれた気がした」(夏希)
過去を恥じていない夏希だが、だからと言ってそれを周囲に話せるわけではない。
「やんちゃな過去は男にとっては武勇伝になるけど、女の場合は黒歴史でしかないもんね」(優里)
「女が渋くて強かったらダメなんですかね。カッコいい大人の女を目指しちゃダメなんですかね?」(菜美)
第2話で重要なのは、恐らくここのはず。「AV」という手段を用い、“お人形さん”であることを求められる女性の現状を浮き彫りにさせようとしている。そしてこれは、特殊工作員の過去を隠す菜美の状況ともリンクする。
綾瀬はるかが圧倒的な暴力で全てを解決する
このドラマは、よく見ると細かい部分に皮肉が効いている。
一方で、気になる流れがないではない。町内会が「自業自得ですよ、人様に誇れないようなことを生業にして生きてきたんだから」と、不可解なほど夏希に冷たすぎるのだ。その理由がよくわからない。妙に短絡的な展開だが、恐らくこれは町内会を“世間”と重ね合わせているのでしょう。ただ、あまりにもステレオタイプなヒール像に違和感を覚えたもので。
もう一つ、ある。町内会長に向かい「私たちが問題を解決してみせます」と啖呵を切った菜美。ここまではいいのだが、続けて「もし解決できなかったら、私たちもこの町を出ていきます」って、なんでそうなる!? しかも、菜美の決意を聞いた町内会長が、悪役丸出しでニヤリと腕を組み始めるし。せっかく有意義なテーマを扱ってるのだから、こうした描写で不必要にドラマをチープにしてしまうのは勿体ないなぁ……。
そして、最後。
なるほど。もしかしたら、スイッチを切り換えた方がいいのかもしれない。ドラマ全体にコメディの風味が振りかけられてるし、通常ならば気になるであろうリアリティの部分をスルーすべき作品なのか。
SNSをリサーチすると「綾瀬はるかが全てを暴力で解決する」という方向性が、実は一定の理解を獲得していることも判明します。筆者も当初は驚いたものの、そういうつもりで観たら一転してなかなか楽しいし。
ちなみに、このドラマの脚本を担当しているのは金城一紀。過去に『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(フジテレビ系)や『BORDER』(テレビ朝日系)、『SP』(フジテレビ系)も手がけているヒットメイカーです。
そういえば、岡田准一は『SP』主演に備えて武術「ジークンドー」を習い始め、現在の腕前は師範代レベルに達しているとのこと。そして綾瀬はるかは、今回のドラマに際して「カリシラット」という武術を習い始めたと聞いています。
『奥様は、取り扱い注意』を契機に、綾瀬はるかがムチャクチャ強くなってたらそれはそれでアリ! 妙な夢想をしてしまいました。
(寺西ジャジューカ イラスト/Morimori no moRi)