私は今、「渡る世間は鬼ばかり」と口にしたい心境だ。『ブラックリベンジ』(日本テレビ系)を観ていると、そういう心境になってしまう。
疑心暗鬼になってくる。信用していた知人が、陰で自分を裏切るような行いをしていたら……。
「ブラックリベンジ」木村多江の激情に震え、佐藤二朗に飄々とおちょくられ、自分勝手な妹にムカつく6話
木村多江写真集『秘色の哭』ワニブックス

通常ならば、それらの行動はよほどのことがない限り明るみには出ない。しかし、週刊誌が暴きにかかった場合はどうしようもない。紙面を通じて真相を知り、泣くのか、怒るのか、狂うのか……。

佐藤二朗、木村多江をおちょくる


主人公・今宮沙織(木村多江)と「週刊星流」デスク・天満龍二(平山浩行)は、編集長・福島勲(佐藤二朗)の捏造を糾弾する記事の掲載を画策。しかし、福島は寸でのところで記事の差し替えに成功する。
新たな記事の内容は「寺田圭吾にもう一人の愛人 相手はなんと妻の妹」というものであった。

沙織にとっては衝撃的過ぎるスクープだが、世間的にそれほどの激震でないことは周囲のリアクションを見れば明らかだ。何しろ、星流の編集部員が「なんでこのネタ載っけたんですかね?」「こんな古いネタに差し替えるくらいだったら……」とボヤくくらいなのだから。要するに、福島は沙織とその周辺を攻撃する目的でこの記事を引っ張り出してきた。

それにしても、佐藤二朗の芝居が凄い。自分の寝首をかこうと企む沙織と天満を前にした時の態度が、憎らし過ぎるのだ。

天満に対し、お茶目なノリで「俺さぁ~、お前の考えてること、手に取るようにわかっちゃうんだよね~。だってお前、俺の、ベストパートナーだから」と、感情を逆撫でするような表情で語りかける福島。いや、そんな舌をペロッと出さなくても……。
沙織と相対した時のテンションも凄い。「こんな内容、真実なはずないでしょ!」と激昂した沙織の温度をあざ笑うように、飄々とし続ける福島。「俺にはね、君がな~んでそんなに怒ってるのか、ちょっとホント、わかんないんだよね。
えっ、捏造って何? 捏造なんてしてないよ?」と、まるで赤子をあやすかのような話しぶりなのだ。この態度を見て、沙織の怒りはますます上昇する。

というか、福島の態度そのものは以前と大して変わるものではない。しかし、シチュエーションが変わるだけで、意味合いが真逆になる。おちょくられてる気分になるのだ。
事実、福島は沙織をおちょくっている。
寺田圭吾が「妻の妹と私は肉体関係を持ってしまいました」と告白する動画を沙織に見せ「自分の夫と実の妹が不倫してたなんて……。最悪だよ!」と嘆き、しまいには泣きマネをする始末。そして、こらえきれず爆笑する福島。その軽薄なノリは、彼の憎らしさと恐ろしさに拍車をかけている。

言い合いを展開する2人の女優の演技力


あまりにも憎たらしい福島であったが、第6話では彼以上にムカつく人物が登場した。沙織の妹・石山綾子(中村映里子)である。

寺田圭吾の墓前で、記事の内容が真実だと認めた綾子。
もちろん沙織は妹を責めるが、それに反論する綾子の言い分がメチャクチャだ。
「お姉ちゃんは私が欲しいものを全部持ってた。昔から勉強もスポーツもできて、周りからの人気もあった。私だって一生懸命やってたのに、『お姉ちゃんみたいに上手くできたら』って必死にやってきたのに! でも、何一つ自分の力で手に入れることはできなかった。それがずっと悔しかった。それでも、私にはどうしても欲しいものがあった。
何よりもいちばん欲しかったもの。でも、それもお姉ちゃんに奪われた。……そう。圭吾さん。好きになっちゃったんだからしょうがないでしょ!」
完全にどうかしている。そもそも「ものすごく頭いいから」という理由で、沙織は同級生の圭吾を家庭教師として綾子に紹介したのだ。「奪われた」も何もないだろう……。

その後、政治家として大臣候補にまで登り詰めた圭吾を、星流の記事が襲う。身ごもっている沙織は、圭吾のアドバイスで都内から離れることとなった。その間、圭吾の面倒を見ることになったのは綾子だ。
マスコミの追及によって自暴自棄になる圭吾であったが、そんな彼に献身的に尽くす綾子は圭吾に口づけをし、なし崩し的に肉体関係を持ってしまう。

綾子 圭吾さんは限界だった。だから、私も……!
沙織 仕方なく抱かせてあげた? そう。それじゃあ、しょうがないわね。……とでも言うと思った? 圭吾のせいにしないでよ! 綾子、アンタ、私の夫を寝取ったのよ!? 自分を正当化して、自分は何も悪くないって言うの!? 圭吾のためにしてあげたことだから、全て許されるっていうの!? ゲスな快感に身を委ねて、アンタ、私のこと思い出しながら圭吾の腕の中で優越感に浸ってたんでしょう! アンタは最低な妹よ!
綾子 お姉ちゃんに……お姉ちゃんにそんなこと言う権利ない! お姉ちゃんは圭吾さんを置いて一人で逃げたじゃない! 圭吾さんは誰かに助けてほしかった! だけど、お姉ちゃんに心配はかけられないって必死に頑張ってたんだよ!?
沙織 だったら、不倫してもいいの? 綾子、アンタは圭吾の弱みに付け込んで自分の欲望を満たしただけよ!
綾子 違う! 私は圭吾さんのために……
沙織 圭吾のためにって言うな!

とりあえず、綾子の言い分が自分勝手であるということはわかっていただけると思う。
そして、注目は2人の演技力。よく考えるとただ言い合いしているだけなのに、激情が尋常じゃないため目が離せなくなってしまうのだ。

ORICON NEWSに掲載されたインタビュー(提供元:コンフィデンス)において、『ブラックリベンジ』福田浩之プロデューサーは「一緒にやりたいと思う役者さんに集まっていただけました」と断言している。なるほど、その意図は見事に結実している。コンセプトのみならず、役者の地力にも我々は惹き付けられてしまっている。

言ってることがメチャクチャな妹


姉妹の言い合いは止まらない。そして口論の中、綾子は長男の悠斗が圭吾との間にできた子であることを告白してしまった。ちなみに沙織は圭吾の自殺のショックが原因で、お腹の子を流産している。そんな姉を慰めていた時、すでに綾子のお腹には子どもがいたのだ……。
「どういう神経してんの!?」と問いただす沙織に対し「産みたかったの、圭吾さんとの子どもを! お姉ちゃんが手に入れられなかったものを!」と、正気じゃないことを言い出す綾子。振り返ると、この妹は事あるごとに「一緒に暮らそう」と姉に同居を呼びかけていた。いや、メチャクチャだ。

それでいて、綾子は「ごめんなさい……」「私、どうしていいかわかんなくなっちゃった!」「お姉ちゃん、本当にごめんなさい……!」と泣き崩れる。
こういう態度が一番ずるい。なんなんだ、この救いようのない妹は。

真のラスボスは、鈴木砂羽?


冒頭で「『ブラックリベンジ』を観ていると疑心暗鬼になる」と述べたが、その最大の理由はカウンセラーの糸賀朱里(鈴木砂羽)にある。
沙織と綾子の姉妹喧嘩をこっそり覗き見しているし(動画撮影もしていた?)、そもそも福島が沙織に見せた圭吾の告白動画は朱里のカウンセリングを受診している時のものだし、沙織をマインドコントロールしてずっと復讐をけしかけていたし……。

その上、よく考えると朱里は明らかに福島と繋がっている。彼女は、福島以上に裏で絵を描いていそうな気がする。

新人記者が味方になるかもしれない


何よりも、沙織が心配だ。圭吾の復讐をモチベーションに生きてきたのに、実は圭吾当人に裏切られていたなんて……。救いが無さ過ぎる。

でも、沙織に味方がいないわけではない。その1人として挙げられるのは、天満だ。かつては沙織の存在を疑問視していた男が、今では理解者となった。
そしてもう1人、新人記者の芦原咲良(岡野真也)が味方に付く可能性がある。

芦原 私、もう会社辞めます。沙織さんが可哀想すぎますよ、あんなの。絶対、許せません。
天満 待て! 芦原、お前はここに残れ。
芦原 え、なんでですか? もう私、こんなところで働きたくないですよ。
天満 俺も編集長を許すつもりはない。
芦原 まだ、何かやるつもりなんですか!?

かつては沙織の取材を全力でヘルプしていた芦原が、今度は沙織の復讐をヘルプすることになるか? 2人の存在は、沙織にとって一筋の光明になるかもしれない。ならなければ、救いが無さ過ぎる。
(寺西ジャジューカ)

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