「高性能勉強ロボ・宇治原」の勉強法を、誰でも実践できるように落とし込んだ菅広文『身の丈にあった勉強法』(幻冬舎)。上梓した高学歴コンビ・ロザンのインタビュー後編です。
学歴は「浮き輪」理論や、ライブの作り方、ロザンの「身の丈」についてなど聞いてきました!(前編はこちら)
高学歴コンビ・ロザンにもっと聞く『身の丈にあった勉強法』学歴は「浮き輪」現状維持は「成長」だって
ロザン(左:菅広文、右:宇治原史規)

学歴は「浮き輪」。子供にはつけさせてあげたい。


───菅さんは自分のことを「中」学歴(大阪府立大学中退)と仰ってましたが、いわゆる高学歴の方へのリスペクトが随所にあるように感じました。

中高生にとって『クラブを頑張った結果。泥で真っ黒になったユニフォーム』はカッコイイのではないでしょうか?
では『勉強を頑張った結果。文字で真っ黒になったノート』はどうですか?
もしかしたら「うわ〜ガリ勉!宇治原みたい!」と思う生徒もいることでしょう。
なんならカッコ悪い部類に入るかもしれませんね。
でもこの2つは、果たして違うことでしょうか?
色々な考え方もありますが、頑張った結果と考えれば同じだと僕は思います。
(P.96)

 そこはね、勉強もスポーツも一緒やのにな、と思いますね。

宇治原 スポーツは全員やらなくていいけど、勉強は全員が強制的にやらないといけないというのが、ちょっと違うかもしれないですね。野球選手見て「すごいなー」って思っても、野球してない人間が見ても悔しくないというか。

───スポーツで結果を残すのは「すごい」となりますけど、勉強で結果を残すと「自慢している」と言われたり、イジられたりも……。


 なんでなんやろなー。

宇治原 難しいですね。

───「高学歴をイジる」という意味では、この本もそうかもしれませんが、イジられている身としてはどうですか……?

宇治原 なんて言ったらいいんでしょうね……そこはまあ別に、僕も読んでわろてるしな……(笑)

 違うもんとしてみてるんかもしれん。

宇治原 まあでも、コンビ組んで漫才やってという仕事なんで、面白く扱っていただけるのが一番いい。……そんなこというとね、なんか……これ、難しいんですよね。「いじってください」って言うのも違うんで。「おい誰がやねん!」ってやっぱり言うとかなあかん。

 でも、この本にも書かせてもらったんですけど、学歴がある人もない人も、子供には学歴求めるんですよ。僕、学歴って「浮き輪」やと思うんです。浮き輪をつけた方が、はじめは泳ぎやすくて、ある程度まで泳げるじゃないですか。で、ある時期から自分で泳げるようになって、浮き輪を自分で取らなあかん時期もくる。そういう意味では、はじめは学歴が必要なんじゃないかなと。


───最初は子供に浮き輪をつけさせてあげたい、と。

 多分みんな、我流で泳いでしんどかったんやと思うんです。しんどいな!って自分の実体験でわかってるから、やっぱりどうしても子供には「ちょっと浮き輪をつけさせたいな」という気持ちが芽生えるのかもしれませんね。
高学歴コンビ・ロザンにもっと聞く『身の丈にあった勉強法』学歴は「浮き輪」現状維持は「成長」だって
菅広文『身の丈にあった勉強法』(幻冬舎)

本も単独ライブも作り方が一緒だった


───以前「京大芸人」(幻冬舎よしもと文庫)を出されたとき、タイトルについて「『ホームレス中学生』みたいに、印象が異なる二つの単語を組み合わせた」と聞きました。今回の『身の丈にあった勉強法』というタイトルは、どうやって決まったのでしょうか?

 結構早い段階で決まりましたよね。なんか、書いてて、言いたいのは結局これなんやな、ていうのがパッと出たんで。これって何が伝えたいんやろう、あ、身の丈にあったことや、みたいな感じですね。

───一番伝えたいことをタイトルにしたと。

 そうですね。僕は書き始める前に、章のタイトルを全部並べるんですよ。これ15章あるんですけど、最初は14章しかなかったんです。最終章は14章分が出来てから書きました。集約したというか、それもまあ、ネタの作り方と一緒なんですよね。
そうや、単独ライブと一緒の作り方やね。

宇治原 ほんまやね。

 単独ライブもコントや漫才を7、8本用意するんですけど、中身がふわっとしている状態でバーッと作って、最後の1本はそれをまとめたやつを作ります。1書いたら2書く、2書いたら3書く、って書き方じゃないですね。結構ぶわーって並列的に書いていく感じが多いです。

───複数の章を同時進行で書いてるんですね。

 結構、そうですねー。こっち飽きたからちょっとこっちの章の続き書こう、みたいな(笑)

───タイトルにも最終章(「身の丈にあった生き方=いちばん得な生き方」)にも現れていますが、「身の丈」がやはりキーワードだと。

 何本か取材を受けさしていただいて気づいたんですけど、「身の丈にあった」って、みんな否定的な意見が多いんですね。あまりよくないというか、マイナスのイメージで使うことが多い感じ。

───「身の程を知れ」のイメージなんでしょうね

 でも僕は「身の丈にあった」ってすごくプラスのイメージやったんです。だから逆にインパクトあったんやなと。


宇治原 菅さんが最初に思ってた以上に、インパクトのあるタイトルになったっていう。

教科書がない仕事に「教科書」を作っていった


───ロザンのお二人の「身の丈」についても聞かせてください。自分の実力を発揮するために、克服したい課題や弱点などはあるでしょうか?

 あー、一切考えたことないです。単純に自分達ができるものをやっているだけで。そこに合う仕事が来るだけのことやと思うから。

宇治原 仕事も「身の丈」に合ったものをやるようにしてきたし、今もしてるし。その結果が現状という。

 だから正月に「今年の目標は?」とか聞かれるの一番困るんですよ。みんな毎年毎年、そんなに何を考えてんのやろと。こっちは淡々と生きてるだけ(笑)

───お二人ともそうですか?

宇治原 そうですね、抱負とか聞かれるの一番困りますね。「いつもどおりやる」かな。

───「現状維持」ともまた違う?

宇治原 あー、現状維持とはまた違うでしょうね。
まぁ現状維持って、本当は難しいと思うんですよ。

 難しいよね。

宇治原 現状維持しているということは、成長しているということやと。現状維持するための努力が必要。

───以前、キングコングの西野さんがブログで「キンコン西野を作った男」として菅さんの名前を挙げていました。全ての行動理由を説明できるよう叩き込まれたと。『身の丈にあった勉強法』にも「これはこうだからこう」という理詰めの考え方を感じます。こうした考え方になったのは、ロザンを結成してからでしょうか?

 どうなんだろね。高校の時はそんな感じでもなかったんかね。

宇治原 いやー、高校の時はそれ出てなかったと思うで。もともとそういう考え方だったんやろうけど。

 確かにこの仕事ついてからっていうのは大きいかもしれませんね。
やっぱり僕らの仕事って、答えがない仕事ではあるんですよね。教科書がない仕事というか。そこが結構、宇治原さんは不安があるやろなってのもあったんでしょう。だから「こうやで」という教科書を作ってしまうというか。教科書が合ってても間違っててもそこは問題じゃなく、教科書があることが大事という。

───指針となるものが何かひとつあると。

 はい。それがあってそこに向かってやったら、間違ってもあとで「あ、これ間違ってたんやな」っていうことがわかるじゃないですか。そこで問題ないというか、「間違ったことがわかった」というのもひとつの成果だと思うんですよね。

───最後に、『身の丈にあった勉強法』をどんな人に読んでもらいたいか、メッセージをお願いします。

 学生だけじゃなくて、社会人でも当てはまることがたくさんあると思うので、社会人の方も是非読んでほしいです。

宇治原 勉強法だけが書かれているわけじゃなく、菅さんの目的は「楽しんでもらいたい」なので。わざと気軽に読める文体で書いてありますし、単純に面白い本として読んでもらったら、相方としては嬉しいです。

 そう、ただただ、わらかしたかっただけなんです(笑)

(井上マサキ)

ロザン(菅広文、宇治原史規)
1996年8月結成。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。宇治原史規は京都大学、菅広文は大阪府立大学という高学歴コンビ。高校時代からの友人だった二人が、大学在学中に心斎橋筋二丁目劇場のオーディションに合格しデビュー。コンビ名は『聖闘士星矢』に出てくる必殺技「廬山昇龍覇」から。菅は『京大芸人』『京大少年』『京大芸人式日本史』『菅ちゃん英語で道案内しよッ!』と多くの著書を持つ。
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