「ひよっこ」紅白特別編は、こんな話
昭和43年大晦日。みね子(有村架純)はヒデ(磯村勇斗)と新婚3ヶ月。赤坂のすずふり亭で仲睦まじく働いている。
この日、お店はお休み。気のおけない仲間たち(茨城の同級生、乙女寮、あかね荘、商店街、すずふり亭のひとたち)が詰めかけて、大晦日の慰労会が行われるところ。
愛子(和久井映見)が遅れている一方で、茨城の宗男(峯田和伸)はちゃっかりいる。
「俺は妖精だから 神出鬼没なの」だって。妖精だったのか、宗男おじさん。
そこに、見知らぬ黒縁メガネの人が混じっていて、みね子、びっくり!
オープンニングから「ひよっこ」色
2017年大晦日の夜、「第68回 NHK紅白歌合戦」で、朝ドラ「ひよっこ」紅白特別編(作:岡田惠和)が披露されるとあって、「ひよっこ」ファンはテレビの前にかじりついていた。
17年の紅組司会は16年に引き続き有村架純(ひよっこヒロイン)で、オープニング、東京2020 開会式・閉会式 4式典総合プランニングチームのひとりMIKIKO先生の振り付けで、出演者たちが渋谷を舞台に踊るなか、有村と「ひよっこ」のマスコットキャラクターのイチコ(薬屋のマスコット)が出会う場面もあった。オープニング音楽も「ひよっこ」の宮川彬良と「ひよっこ」体制万全だ。
有村の真っ赤なドレスが素敵。
いったん「わろてんか」をはさむ
13年の「あまちゃん」紅白特別編のときは、映像と生のミックスだったが、「ひよっこ」紅白特別編はどうやら映像のみのようだ。
今までいなかった人がすっと画面に入ってくるカメラワークのさりげないうまさ。
これだけたくさん出演者がいたら、会場で生でやったらグダグダになりそうだから、映像でよかったと思う。
大晦日、すずふり亭での慰労会に、見知らぬ黒縁メガネの人が混じっていて、みね子、びっくり!
……で、いったん、つづく。そこまでわずか3分ほど。2時間待った挙句、3分! 短すぎる!!
「どう見ても、桑田(佳祐)さんだよね」と紅白総合司会のウッチャン(今年は彼が奮闘した)が、期待をもたせて、歌合戦は続く。
途中、現在放送中の朝ドラ「わろてんか」のコーナーをはさみ(3時間11分頃)、会場では主題歌の松たか子が「明日はどこから」を歌う。
葵わかなと高橋一生(高橋は審査員でもある)が応援で登壇し、ウッチャンは、毎朝、この主題歌を聞いて目覚めて、お茶と梅干し食べていると言っていた。
このときの有村は赤いドレスから黒いドレスに着替え、松と葵の赤の衣裳と並ばないようになっていた(えらい!)。
桑田佳祐が浜口庫之助を演じた
「ひよっこ」紅白特別編の後編がはじまった時には、3時間32分が経過していた。
謎の男(桑田)が、ヤスハル(古舘佑太郎)に代わって、結婚祝いに一曲歌うと言う。
桑田は、浜口庫之助だったという趣向だ。
最終回で、みね子たちが、歌合戦で歌った「涙くんさよなら」を手掛けた音楽家で、劇中に出てきた「星のフラメンコ」や「バラが咲いた」もこの方の作品だった。
こうして、桑田演じる浜口の弾き語りで、「涙くんさよなら」をみんなで合唱。
「ひよっこ」の最終回を思い出し視聴者をじんわりさせて、去っていく浜口(桑田)。
「あの曲(主題歌)、聞かせてくれますよね、楽しみ〜」(増田明美のナレーション)とまだ続く。ここで3時間37分。
みたび桑田が登場したのは、その後30分ほど経ってからだった。
お父ちゃんもお母ちゃんもやって来た
大トリ(石川さゆりとゆず)登場前、特別出演の安室奈美恵をはさんで、紅白開始から4時間5分後、桑田登場の前に、みね子のお父さん(沢村一樹)とお母さん(木村佳乃)が会場へやって来た。
「みね子〜」ってウッチャンのとこにいくというボケをかます沢村一樹。記憶喪失がまだ治っていない体(てい)で。有村と沢村はちょいちょい茨城弁を使うと和んだ。
そしていよいよ、横浜アリーナにいる桑田佳祐の中継。
有働由美子アナウンサーが立ち会って(さすが、ここぞというとこに配置されている)、「ひよっこ」主題歌「若い広場」を披露(朝ドラで流れていたのは、アレンジしたバージョン)。
ステージにはイチコ(このマスコット、大活躍したなあ)がいた。
桑田は「愛の言葉を有働〜♪」と歌い、有働が踊り、盛り上げた。
あのセット、もう一回建て込むってすごい
歌が終わると、審査員として参加していた宮本信子(鈴子役)が、「ひよっこ」の時代は「情があって なんかいい時代だなと、今と比べてそう思ったりもします」と感想を述べた。
うん、たしかに「ひよっこ」は、舞台になった時代のせいなのか、あったかい情を感じるドラマであった。
そして、そのまま、紅白はラストの歌となり、フィナーレに。4時間半もの生放送は終了し、2017年も終わった。
「ひよっこ」紅白特別編ですごかったのは、すずふり亭と店の前の商店街のセットが完全再現されていたことだ。
NHKホールのステージ上ではなく、映像でのことだが、ドラマ本編撮影中に撮影しているわけはないので、いったん取り壊したあとで、ほかの場所にわざわざ建て直し、飾り込み、撮影しているはず。
朝ドラのスピンオフドラマはセットが建っている間に撮影することが原則と考えたら、セット建て直しは異例だろう。
そして、和久井映見は残念だったが、ほぼほぼ、オールキャスト勢揃いであったことも注目に値する。
それだけ「ひよっこ」は、関わった人たちにとって良いドラマであったのだろう。
いつかまた、続編で、すずふり亭のセットを建て直してほしいなあ。
「第68回 NHK紅白歌合戦」は1月15日までオンデマンドで配信している。
(木俣冬)
『ひよっこ』動画は下記サイトで配信中
・NHKオンデマンド
・U-NEXT
『ひよっこ』キャスト、スタッフ、主題歌
【出演】
有村架純、沢村一樹、木村佳乃、羽田美智子、柴田理恵、
峯田和伸、和久井映見、佐々木蔵之介、古谷一行、宮本信子 ほか
作:岡田惠和
音楽:宮川彬良
主題歌:桑田佳祐「若い広場」
語り:増田明美
制作統括:菓子浩
プロデューサー:山本晃久
演出:黒崎博、田中正、福岡利武