会社員や大学生にとって、最もコミュニケーションが憂鬱な相手は、「上司」や「先生・教授」であることが、調査で分かった。確かに「気を使う」存在だが、それ以上に憂鬱になる要因は多いようだ。
しかし、ちょっとしたコツで、そうした近しい目上の相手とかかわるのは苦ではなくなるものである。そのコツを専門家に聞いた。
上司に対して「本音を言えない」「尊敬できない」
JTBコミュニケーションデザインが2017年10月に実施したコミュニケーションに関する調査の結果では、大学生と会社員が感じる「コミュニケーションが憂鬱な相手」が分かった。
会社員は「上司」が47.2%でトップ。大学生は「先生・教授」が25.0%でトップとなった。
また、憂鬱になる理由として会社員・大学生共に「気を使うから」がトップとなっていたが、2位以下はそれぞれ異なっている。会社員は「本音を言えないから」「相手を尊敬できないから」が多く、大学生は「緊張してしまうから」「話しかけにくいから」が多くなっていた。
この「コミュニケーションが憂鬱な相手」の結果に対し、人材・組織開発コンサルティングを手掛ける株式会社Y’s オーダーの代表で、上司と部下の関係構築に詳しい藤野祐美さんは、次のようにコメントする。
「会社員にとっての『上司』、また大学生にとっての『先生・教授』がトップになったのは、自分の身の周りにおいて、関係を断ち切ることも無視することもできないという “自由に選択できない”存在だからではないでしょうか。
いずれも友人やパートナーのように、自分が主体的に『合う・合わない』や『好き・嫌い』で選択した人間関係ではありません。場合によっては、顔も見たくない相手であるにも関わらず、その方のYesが無ければ前にも進めないのです」
上司や先生・教授との「コミュニケーションが憂鬱」への対処法
では、会社員、大学生それぞれについて、どのような対処法が考えられるだろうか。藤野さんは次のように話す。
1.会社員
「先にもお話した通り、上司は自分で選択した関係でもないのに、無視することができない相手です。友人とは異なるのですから、気を使うのは当たり前。
2.学生
「先生や教授は、自分に対して指導・教育してくださる師です。つまり、関係がスタートしたときから、相手のほうが自分よりも知識や技術がある存在です。自分が仰ぎ見る相手に対して、気を使うこと、緊張してしまうことは、相手を大切に思っている証拠でもあり、自然な感情です。かといってかしこまりすぎて、教えていただく立場の自分をよく見せようと、背伸びするのはよくありません。素直に教えを乞うといいでしょう」
憂鬱な相手とすんなりコミュニケーションを取るコツ
では、こうした相手と憂鬱にならずにコミュニケーションをとるには、どのような「コツ」があるだろうか。藤野さんは次のように話す。
「コミュニケーションの目的を明確にすることです。
上司や教授とのコミュニケーションの目的は、1.気を使わないこと、2.楽しく過ごすことではありません。1.情報を伝達したり、報告したりする。2.教えを請い、知識を得ることがそもそもの目的です。自分で選択したり、自由に関係を終了することができない相手との人間関係においては、目的をもってコミュニケーションを行うことです。
そして、その目的が達成されたときには、そんな自分をほめてあげましょう。楽しく過ごすことが目的のコミュニケーションは、友人やパートナーなど、自分が選択して構築している人間関係の中に、いくらでも求めることができるのですから」
「憂鬱」と感じるのは、そもそも関係の目的をはき違えているというのが大きな原因だったというわけだ。目的を意識した的確なコミュニケーションで、憂鬱さを取り払おう。
取材協力
藤野祐美さん
人材・組織開発コンサルティングを手掛ける株式会社Y’s オーダーの代表取締役を務める。特に、職場における上司と部下の関係構築に注目し、「上司取扱説明書」や「上司は仕事を教えるな」等の著書がある。
(石原亜香利)