連続テレビ小説「わろてんか」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第16週「笑いの新時代」第88回 1月17日(水)放送より。 
脚本:吉田智子 演出:川野秀昭
「わろてんか」88話。もしかして藤吉は死なないのか?
イラスト/まつもとりえこ

88話はこんな話


倒れてから3日後、藤吉(松坂桃李)が目覚めた。

復活の希望


このまま藤吉が眠ったままで、「純と愛」(12年)パターンになるかと気が気ではなかったが、無事に目が覚めた。
となると、藤吉はこのまま亡くならない可能性もあるのだろうか。
もしそうだったら、このドラマ、最大の大仕掛けである。死ぬと思わせて死なない、とは。

深読みすれば、1月17日は、阪神淡路大震災があった日。「べっぴんさん」(16年)では、冒頭、シンプルに静かに「連続テレビ小説」とテロップを出し、追悼感がそこはかとなくあったので、「わろてんか」では藤吉の復活によって、希望を描いたともいえるだろう。あくまでも深読みだが。

男はみんな冒険者


藤吉が倒れたことで、父子の確執も一件落着したようだ。
献身的に付き添っている隼也(大八木凱斗)。

彼が、ロビンソン・クルーソーやリンドバーグなどが好きなのは、冒険にあこがれているから。
「お父ちゃんを超えたいんや」という息子が父に似ているとてん(葵わかな)は感じる。
藤吉は「日本一の席主になる」と豪語して実現させた。
やっぱり男はたいてい「海賊王におれはなる」なのだ。

ラジオ革命


社長(藤吉)不在のおり、団吾(波岡一喜)をラジオに出してほしいと、ラジオ局のひとがお願いしに来た。
団吾も出たがるが、そうしたら寄席にお客さんが来なくなると藤吉も風太(濱田岳)も反対だ。

寄席の何百倍もの人が落語を聞くという話にまんざらでもない団吾を、借金をたてに止めようとする風太だったが、団吾は言うことを聞きそうにない。
ついに風太は、家財道具を差し押さえてしまう。

寄席には天敵のラジオだが、藤吉の枕元にラジオが置かれ、気分転換にはなるという皮肉。
ここでまた深読み。
ラジオから「トロイメライ」が流れていた。大林宣彦映画を思い出し、癒される音楽であるが、この曲をつくったシューマンの晩年は、精神の病にかかって苦闘する。
まさか、藤吉の未来を暗示しているのではないか。考え過ぎだと思いますが。

医師には、左半身に麻痺があるが、大きな後遺症が残るおそれはなさそうと言われたものの、なかなかリハビリが思うように行かず、藤吉は苦悩する。
そこに訪ねてきた栞(高橋一生)が、

「必ず歩け
這ってでも歩け
おてんさんを悲しませるな」と励ます。

てんを励まし、藤吉を励まし、栞、ほんとうにいい人だ。
しかも、立派なフルーツバスケットを携えて。

(木俣冬)