第16週「笑いの新時代」第87回 1月16日(火)放送より。
脚本:吉田智子 演出:川野秀昭
87話はこんな話
藤吉(松坂桃李)が倒れ、北村笑店はじまって以来の一大事に、風太(濱田岳)は皆で立ち向かおうと鼓舞する。
質の高い文化の創造
1月16日に発表された、2018─2020年の「経営計画」でNHKは、追求する「公共的価値」のなかに「質の高い文化の創造」を挙げている。「質の高い文化の創造」、なにとぞよろしくお願いします。
ぐっと来た
「なあ 藤吉はん わろてんか」
昏昏と眠り続ける藤吉に、てん(葵わかな)が声をかける。
ここはぐっと来た。
家族以外の人の面会は・・・と困る看護師に「わしら家族です」と言う亀井(内場勝則)。
ここもぐっと来た。
「もうすぐ一番太鼓鳴りまっせ」もよい台詞。
「リリコ(広瀬アリス)やでえ、目ぇ開けてぇや」も。
栞(高橋一生)の「たまには泣いてもいいんじゃないかな」も。
倒れたことでみんなに見せ場を作った藤吉の献身はすばらしい!
根付の鈴の見せ場までできたし。
抑圧されたてん
てんは、藤吉には「一生笑わせたる」と言われ、お父さん(遠藤憲一)には「てん、お前はわろてんか?」(36話)と確認され、兄(千葉雄大)には「つらいときこそ笑うんや」(11話)と言われてきた。
彼女がなかなか泣けないのは、笑え、笑えと言われて生きてきたからではないか。
そのうえ、子どもの頃は「笑うな」とお父さんに言われたこともあって、ちょっとダブルバインドになってしまっているようにも思えて気の毒だ。
そんな彼女に、「たまには泣いてもいいんじゃないかな」と言ってあげた、栞は素敵だと思う。
笑うにしても笑わないにしても、てんは自分の意志ではなくて、人に言われたことを聞いてきたので、何をするにも全然伸び伸びしてないように見える。
抑圧されて生きてきたことが、忍耐強さとして育まれた、それがてんという人物像なのだと思う。
つねに平常心でいることは精神の強さだ。クレバーな葵わかなは、それを的確に演じている。なかなか理解されにくい仕事だと思うが、この体験はゆくゆくきっと生きると思うのでがんばってほしい。
風太とトキがここまで結婚してないわけを考えた
例えば、このまま藤吉が亡くなってしまった場合、風太にワンチャン出てくるわけで。
回想で、藤吉が「一生てんを笑わせる」「命に代えても幸せにする」という約束を違えたら、「好きにせえ」と言ったことが出てきたし、どうせだったら、長いことてんのことを思っていた風太が報われるかもしれないエピソードを描いてほしかった。
たぶん、このままトキ(徳永えり)と風太は喧嘩するほど仲がいい夫婦になってしまうのだろうけれど。
(木俣冬)