今年のバレンタインは、ゴディバが「義理チョコをやめよう」と物申し、ブラックサンダーは「一目で義理とわかるチョコ」を出すなど、チョコレート業界からの「義理」への意見が話題になった。(参考記事
あげる側も、もらう側も、良くも悪くも、ヒリヒリした時期だ。

今回は、荒れるの確実な、バレンタインと松野家六つ子の話。
君たちがバレンタインチョコをもらえない理由「おそ松さん」2期19話。六つ子の上下関係
「おそ松さん第2期 第3松」BDパッケージ。最近チョロ松は悪化する一方なので、ちょっといいところ見せて欲しい……。

「チョコほしい」と言ったら負け


おそ松「まあぶっちゃけ、チョコなんてそんなほしくないけど? なあチョロ松?」
チョロ松「欲しいわけ無いでしょ? こっちはもう大人だよ? たかがチョコでテンションあがんないし、特別好きってわけでもないし。てか、買おうと思えばいつでも買えるからね、チョコくらい」

バレンタインに「チョコなんてほしくない」というアピールをする、トド松以外5人。
おそ松「今はみんなで『チョコ欲しくない』と言い合って、この厳しい現実から目をそらす、集団自己防衛の時間だろ?!」

結果、誰にももらえるはずもなく、家で六人でチョコを自作。
兄弟でお互いに送り合うという暴挙に出た。

チョコと蔑み


兄弟同士でチョコを送り合っている様子は、思ったほど地獄絵図じゃない。
むしろ、一番近い兄弟に送るなんて、イキじゃないか。全員料理めちゃくちゃうまかったし。

地獄だったのは、チョコを渡す理由の方だ。
彼らはお互い自分がマウントを取れている相手にのみチョコを送るという行動を取った。

・カラ松→チョロ松
カラ松「お前みたいなクソダサイセンスの弟がいてくれて、自分に自信が持てるんだ。いつもセンキュー」

・一松→十四松
一松「ニート生活っていう何の変化もない日常においてお前のような(ピー)がいてくれてほんと助かる……いつもありがとう」

・おそ松→一松
おそ松「お前ってさ……多分俺より幸せになることは一生ないと思うんだよね、安心するよ。ありがとう」

・十四松→カラ松
十四松「ぼくはばかだよ。でもカラ松兄さんって実際の所僕より100倍バカだよね。
ありがとう!」

・チョロ松→おそ松
チョロ松「いつ死ぬの? 待ってんだけど」

5人は相手を下げることで、自分の心をフォローする手段を選んだ。

もっとも、照れ隠しの悪口のようにも見える。
今までの回でも、一緒に「戒め」していた一松と十四松、ブラザーと兄弟を大切にするカラ松、「エスパーニャンコ」で一松を励ましたおそ松など、度々お互い兄弟のことを大事にしているシーンが出てきている。逆にかつては、本気でカラ松を嫌っていた一松が、今回行動を起こしていないのも気になる。
五人揃っているから荒れるだけで、一対一なら案外素直にやり取りしているかも。

カーストに入らないトド松


興味深いのはトド松。彼は誰からも、蔑みチョコをもらっていないし、渡していない。
トド松「いつもかわいくいてくれてありがとう。素直だよね、人に好かれるよね、大好き!」
彼は自分にチョコを渡す。自分とはいえ、好きな人間に渡しているのは彼だけだ。

上の五人の意識が見えてくる。
今回はもらえなかったものの、トド松には仲良し女子がいる。
兄たちは、トド松には対人能力では絶対勝てないから、「自分より下」と思うことができない。

二期13話では、トド松はリア充で松野家らしくないと、戦力外通告を受けていたこともあった。

自分を励ますトド松の姿は、二期7話のおそ松との合コン回でも見られる。(関連記事
他人の前でネコをかぶっており、兄弟とも微妙な距離感がある彼。兄とは違う、というプライドにもすがっている。
誰ともかかわらないところで自分を慰めて心を守るのが、トド松の生きる術だ。

六つ子の女性観


問題は、六つ子が女性に対してどういう視点を持っているか。
彼らは、下々のものが女性からチョコをもらうもの、くらいの姿勢でいるつもりらしい。兄弟チョコの「お恵み」形式や、毎回恒例トト子ちゃんへの土下座攻勢に現れている。
しかし言動を見ると、自分たちは女性に対して優位だ、と思い込むことで開き直ろうとする態度が露骨に出ている。
チョロ松「世の中の女、バカな奴しかいねぇな!」

女性全体を罵る、ホモソーシャルでミソジニーな六つ子の価値観。
もっとも最終的に人ではなくカカオに八つ当たりするしかない堕落っぷりが描かれることで、彼らの発言には嫌味がなくなった。

似たような嫉妬を六つ子が燃やした一期クリスマス回。
その時一松が邪魔したカップルに、後の回で倒れそうだったところを救われる、という救いの構造もあった。
六つ子がどんなにひどいことを言おうと、視聴者が「バカだなあ」「かわいいなあ」と、哀れみ・共感で楽しめるよう調整されているのが、「おそ松さん」の笑いのさじ加減。

(たまごまご)

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