2月11日に放送された『99.9-刑事専門弁護士-SEASONII』(TBS系)の第5話。

今回起こった事件は、メチャクチャだ。
松本潤「99.9−刑事専門弁護士−」無茶苦茶だと呆れてたら、実際の事件がモデルとは現実おっかねー5話
イラスト/まつもとりえこ

第5話あらすじ


女子高生・工藤久美子(清原果耶)に対する強制わいせつ事件で、17歳の山崎大輝(市川理矩)と大江徳弘(福山翔大)が起訴された。警察で執拗な取り調べを受けた山崎は、一度自白してしまっている。

深山大翔(松本潤)ら弁護団は山崎のアリバイの証人として焼肉店店員(アキラ100%)を出廷させたが、裁判官・遠藤啓介(甲本雅裕)は頑なに弁護側の主張を採用しない。
深山は、事件当日に久美子が出会い系サイトで知り合った男性・五十嵐徹と会っていたことを証明したが、久美子は「私が襲われたのは12月6日だったんです」と証言。事件日としていた12月12日が記憶違いだったと前言を覆した。そして、検察側の強引な訴因変更を遠藤は認めた。

この修正は、川上憲一郎(笑福亭鶴瓶)が吐いた一言が影響している。
「事件はホンマにその日にあったんか? そもそも、被害者の勘違い言うこともあるからな。特別な日の人間の記憶ちゅうのは、案外あいまいになることもある」

現実より現実離れの「御殿場事件」がモデル


被害者はウソの証言を繰り返し、事実と異なるシナリオが作られ、裁判所と検察は癒着している。ドラマとは言え、いくらなんでもメチャクチャだ。リアリティがない。

いや、違うのだ。第5話は、ある事件をモチーフにしている。通称「御殿場事件」。詳細は各自で調べていただきたいが、被害者の供述、無理強いされた少年の自白、検察と裁判所の結託、出会い系サイトのくだりなど、ドラマとの相違はほとんどない。
この事件はテレビ朝日が追い続けており、犯人とされる少年らにインタビューした長野智子は、以下のようなツイートをしている。




弁護士に華を持たせ、検察と裁判官を悪く描き過ぎるきらいがこのドラマにはある。ネット上の反応を見ると、それを気にする視聴者も多い。
でも、現実も大差なかった。それどころか、現実の方が現実離れしていたのだ。

共に「有罪」を目指す裁判所と検察


第5話の見どころは事件そのものではなく、「裁判官と検察の癒着」にある。

「少年法によって被害者の人権が疎かにされている」という世論を受け、最高裁判所は少年犯罪の厳罰化を目指す。以下は、最高裁判所の事務総局事務総長・岡田孝範(榎木孝明)と川上によるやり取りだ。

岡田 官邸は少年法の改正を次の目玉政策にしたいという意向を持っているんだ。
川上 そのためには、世論を動かす事例が必要ですわな。
岡田 川上君、期待してるよ。

今回の強制わいせつ事件を、少年犯罪厳罰化の後押しにしたい。「期待してるよ」の一言で察した川上が忖度し、裁判を担当する遠藤に「ええ判決せえよ」とプレッシャーをかけた。
この裁判を“世論を動かす事例”にするため、川上と遠藤は偏りまくる。証人である焼肉店店員に高圧的な態度で接し証言を撤回させたり、分が悪くなった検察に訴因変更をちらつかせたり。

そういえば、第3話で公正な判決を下した山内徹(松尾諭)は左遷されてしまった。遠藤は遠藤で、公平でいられない立場があるのだ。岡田→川上→遠藤と上流から下流へ忖度は連綿と続き、「有罪」という着地点を目指す裁判所と検察は結託した。そういう構図だ。

とは言え、基本的に『99.9』は勧善懲悪。悪役として描かれる裁判官と検察に勝利し、深山は無事に無罪を獲得する。
「今回のように検察と裁判官の思惑が一致すれば、両者の位置はグッと近くなる」
所長・班目春彦(岸部一徳)の言葉が第5話を、そして「御殿場事件」をそのまま総括している。

裁判有罪率99.9%のはずが、今のところ冤罪率100%


ずっと、気になっていることがある。タイトルの「99.9」とは、日本の刑事事件における裁判有罪率を表しているはず。しかし、作中に出てくる裁判はいつも冤罪なのだ。
被疑者のアリバイについて聞き込み調査する尾崎舞子(木村文乃)に「100%覚えてない」と断言したアキラ100%だったが、今のところ冤罪率も100%だ。ずっとこのままで行くのだろうか? 勧善懲悪が破綻する瞬間も見てみたい……と、密かに思っている。

2週明けての第6話は、今夜9時から。25分拡大版だ。
(寺西ジャジューカ)
編集部おすすめ