今回のテーマは、死刑囚の「再審請求」。

最終話あらすじ
斑目法律事務所へ久世亮平(中島裕翔)と祖母・トキ子(茅島成美)が弁護の依頼にやってきた。依頼内容は、亮平の父であり被告人の久世貴弘(小林隆)が既に死刑判決を受けている「8年前の建造物放火及び殺人事件」。被害者は亮平の母であり、貴弘の妻の直美(竹内都子)だ。亮平とトキ子は、貴弘の犯行だとはどうしても思えないという。
この依頼を受けることは、再審請求が必要になることを意味する。再審請求はいわば“開かずの扉”。戦後70年の中で死刑または無期懲役の判決が出た後、再審請求が通り無罪を勝ち取ったのはわずかに9件しかない極めて困難な事例だ。
鶴瓶が組織を重んじる「ええ判決」をするようになった理由
過去の裁判記録をもとに調べを進める中ある矛盾に気付き、再審請求を行う弁護団。だが、裁判官・川上憲一郎(笑福亭鶴瓶)は、再審請求をなかなか通そうとしない。そして、深山たちに無理難題を押し付けるのだ。
とは言え、川上は再審請求を即座に棄却したわけではない。その理由について、川上の部下の遠藤啓介(甲本雅裕)はこう説明する。
「即座に棄却しても、また何かしらの難癖をつけてくるだろう。そこで川上さんは、極めて難しい無理難題を弁護側に押し付けた。もし証明できなければ、それは弁護側の責任だ」
この裁判、一審で貴弘に死刑判決を下したのは最高裁判所・事務総長の岡田孝範(榎木孝明)だ。再審請求の三者協議が行われる前、川上は岡田からプレッシャーを掛けられている。
「今後、二度と誤った判断を下さぬよう、よろしく頼むよ」
出世欲の高い川上が、再審請求を通さないよう頑なになるのは当然。今回も、川上は「ええ判決」を下すことのみ念頭に置いている。裁判所の面子や上からの意向を汲み取って導き出される判決こそが「ええ判決」だ。
川上の異常な出世欲には理由がある。川上の過去を、遠藤は尾崎舞子(木村文乃)に明かした。
若い頃、再審請求の案件を任された川上。この案件で有罪判決を下した裁判官たちは、裁判所で重鎮として君臨していた。しかし、川上は裁判の重大な見落としに気付き、再審請求を認める決定を出す。
「川上さんが変わったのは、それからだった。自身の持つ正義感を持って公正な判断を下していた人が、組織を重んじる人になっていった。その頃からだよ。『ええ判決せえよ』、そう声を掛け始めたのは」(遠藤)
「司法への信頼」を大事にするあまり、公平性を失った鶴瓶
絶体絶命に追い込まれた深山らだったが、アパートに出入りしていた中原銀次(山本浩司)、海老沢晋(成河)、島津ヤエ(根岸季衣)に話を聞く中、過去の捜査で見落とされた事実に気付いた。火災は、勤務先の学校で窃盗した女子生徒の体操服を燃やそうと海老沢が火を点けたものであった。
決定的な証拠を前にした川上だが、再審請求の決定は保留する。かつての部下・舞子は、川上に詰め寄った。
舞子 公平に判断してくださいますよね?
川上 お前も分かってるやろう。ワシはいっつもええ判決ができるよう心掛けてるやないか。
舞子 「ええ判決」……、本当にそうでしょうか?
引き下がらない舞子に、川上は声を荒げた。
「ワシが一番大事にしてるのは、司法への信頼や! それだけは、何があっても揺るがしたらいかんのや」
「司法への信頼」、SEASONIIを象徴するキーワードだ。過去の誤った判決の信頼性を損なわせないよう冤罪に目をつむることさえある川上。
冤罪により父親を失った深山が、川上に詰め寄った。
「『司法への信頼』って、何ですか? 司法とは、一体誰のためにあると思ってるんですか? あなたは自分の大義のために、誤った判決に目をつむってきた。でも、あなたの大事な人が誤った判決によって罪を被ることになっても、本当に同じことができますか?」
かつては正義感を持ち、公正を貫いていた川上。その頃の気持ちを取り戻させる目的で、深山は強く迫ったのではないだろうか?
川上 なかなか、骨のある奴らやなあ。
佐田 昔のあなたと、同じです。
悪瓶、一人勝ち
頑なな川上であったが、弁護側が出した証拠を前に再審請求を認める判断を下す。結果、死刑囚だった貴弘は逆転無罪! 裁判官は被告人へ頭を下げた。
「それぞれの段階で担当した裁判官に真相を見抜く力があれば、あなたの無実は証明されたはずです。私たちは、あなたの人生を台無しにしてしまった」(川上)
最後の最後で、川上は裁判官としての信念を通した。……かに思えたが、今回の裁判を踏まえて、川上は異例の昇格! 岡田の後を継ぎ、最高裁判所・事務総長の座に就いている。邪魔だった上司を排除し、自分が昇格する格好となった。
事務総長の椅子に座り、“笑わない目”だったはずが満面の笑みを浮かべている川上。この男、改心してないな……。出世欲の高さはそのまま! 悪瓶は、やっぱり悪瓶のままだった。鶴瓶の一人勝ちだ。
結審後、泣きながら抱き合った貴弘と亮平。長い年月の闘いにようやく終止符が打たれた。
貴弘 苦労かけたな。これからは、お前の好きなことをやってくれ。
亮平 俺は……父さんと蕎麦屋をやりたい。一から頑張ろう、父さん。
この様子を横目で見ている深山。自身の境遇と重ね合わせているはずだ。
こうして、『99.9』のSEASONIIは終了した。エンディングで「またお会いする確率○○%」と続編を匂わすような煽りも見られたが、松本潤の代表作としてシリーズ化される可能性はあるだろうか?
そういえば、川上と対峙した時に深山は「たった一つしかない事実を追い求めて、これからも僕はあなた達の前に立ち続けますよ」と、力強く宣言している。
(寺西ジャジューカ)
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