連続テレビ小説「わろてんか」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第26週「みんなでわろてんか」第148回 3月28日(水)放送より。 
脚本:吉田智子 演出:本木一博
「わろてんか」148話。あっという間に終戦、高橋一生帰って来て、笑った笑った
イラスト/まつもとりえこ

148話はこんな話


昭和20年8月15日、終戦を迎えたものの、風太(濱田岳)以外は、仲間たちの安否はわからない。
みんなが戻って来たときのために、てん(葵わかな)は大阪に戻ろうと決める。


終戦、てん、大阪に戻る


ラジオから流れる玉音放送を、集まって聞く、農村の人たち。
地面に伏している人や、いろんな思いを噛み締めながら立ち尽くしている人がいる。
たいていの朝ドラは、ここで、主人公の台詞(主義主張)や行動が印象に残るものだが、吉田智子は、主人公の台詞も行動に書かない。人生の主義主張「どんなときでも笑う」はつねに語られているので、ここで敢えて語る必要もないのだろう。

終戦から1ヶ月、てんは、子どもたちは横山治平(西川きよし)に預け、風太とともに大阪に戻る。
すっかり焼け落ちた風鳥亭に佇んでいると、楓(岡本玲)がやってくる。
最初は思わず「社長」やのうて「おてんちゃん」と声をかけ、あとから「社長」に変わる。

箕面の親戚のところにいる楓は、大事に預かっていた台本をもってきた。
だが、家族の面倒を見ないとならないから、寄席復活の手伝いはできないと謝る。
安来節おとめ組のとわ(辻凪子)が現れ、ほかのメンバーの消息を説明。ひとり(都)、空襲で亡くなっていた。とわにとっては、この時点でもなお、「総監督」であり「おかあちゃん」。
芸人たちは、亡くなったり、消息不明だったり、故郷に帰ったり・・・てんと風太は途方に暮れる。

「あいつもあいつもあいつも・・・」(風太)って誰なんだ?

焼け落ちた土地に、風鳥亭の灯が転がっている。これがあるだけで、ここが風鳥亭のあったところとわかる。

藤吉が出て来ない


ついに笑うこともできなくなって、涙するふたり。
ここでの、濱田岳の、あかん、といいながら涙を止める動きの再現力が緻密。
さらに、てんが根付の鈴を鳴らして、でも藤吉は出てこない。
「なんで なんで出てきてくれへんの」
「藤吉はん」「藤吉はん」と鈴を鳴らしながら呼び続ける痛ましいところを、外で聞いているときの濱田岳のつらそうな表情も胸に迫る。
この場面だけ見ていると、てんは藤吉を亡くしてからずっと、深い悲しみにとらわれ続け、藤吉の幻に
逃避していたという笑えない裏話を妄想してしまいそうになる。たぶん、そういう視聴者は少なくないと思う。

さて、なんで藤吉が出てこないかと思ったら・・・。

伊能が出て来た


昭和21年春。てんと風太が、すいとん売りをしながら風鳥亭で待ち続けていると、ならず者がやって来てお金をとろうとする。そこへ、助けに現れたのは・・・

いつも華麗な劇伴つきの、伊能栞(高橋一生)だった。

オープニングに名前があったので、出てくることはわかっていた。
だが、その出方は、9話の初登場(その前に写真で出ているが)のときと同じ、颯爽とてんを助けるというサプライズ。

6年ぶりに現れた伊能は前髪に白髪が混じって渋くなりつつも、破顔という言葉がこれほどまでに似合う笑顔は変わらない。腕っ節の強さも変わらない。

ちょっと席を立っていた風太が戻ってみると、丈夫そうな男たちがたくさん倒れていて、びっくり。
伊能を見て、さらにびっくり。
伊能に寄っていくとき、倒れた男に躓くところは、偶然か、これも濱田岳の得意のアドリブか。

乱闘中に、お金の入った缶をしっかり抱えるてんのしっかり者感もよかった。

最後の数分、いろいろなことが理屈を超えていて、ついテレビの前で笑ってしまっていた。
(木俣冬)
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