山口達也さん、あなたもロリコン病に堕ちていたのか
画像は本文と関係ありません

国民的アイドルグループ「TOKIO」のメンバー山口達也氏が、強制わいせつの疑いで書類送検されていたことが発覚し、インターネット上は近年まれに見るほどの大騒ぎになっています。
 
報道によると、山口氏は出演するNHK・Eテレの情報番組「Rの法則」で知り合った女子高校生を自宅に呼び、飲酒を勧めた上で、無理やりキスをする等のわいせつ行為を及んだ疑いがあるとのことです。
許されざる犯罪行為であり、社会的に非難を受けるのは当然のことでしょう。


呼ばれた被害者は何も悪くない!


ところが、財務省福田元事務次官のセクハラ問題でも、被害者であるはずのテレ朝女性記者が、ネットやメディアやあろうことか政治家たちからも叩かれたのと同様に、今回も被害者の女子高校生が山口氏の部屋に行った点を問題視し、「家に行く奴も悪い!」と被害者叩きを繰り広げる人たちが噴出しているようです。
 
ですが、おそらく芸能界に興味を持っているかもしれない子が、30歳も年上の芸能界の大先輩から家に呼ばれたら、通常喜んで行くのではないでしょうか? 「(人として)仲良くなって芸能界のことを色々と教わりたい!」と思うはずです。そこで「相手が男性だから行くな(=男性の先輩から学ぶ機会は放棄せよ)」というのは、「女性は番記者をするな」と同じで単なる女性差別です。
 
逆に、彼女が嫌だと思っていたとしても、相手は番組を司る大物芸能人で、自分の今後の出演に関しても生殺与奪の権利を有しているような存在ですから、逆恨みを恐れて事実上断れないと思います。そこに女子高校生側の自由な自己決定性はかなり弱いと考えるのが妥当です。
 
それに、3倍も年齢が違う、父親と年齢の変わらないような大人がまさか自分のような子供にキスをしてくるなんて、普通は想像もしないでしょう。とりわけ相手はゴロツキではない、社会的地位のある大人で、好感度の高いTOKIOならなおさらです。

「たられば叩き」は机上の空論

 
また、女性による「私なら家に行かない」「私なら断る」のようなマウンティングも起こっているようですが、これもやめて欲しいと思います。被害者は別の人間ですし、そもそも相手は年齢も知名度も社会的権力も腕力も圧倒的に上の存在であり、思うように意思表示出来ないのが普通で、出来る自分という特殊ケースを基準にすべきではありません。
 
「私だっ“たら”誘いを断る」
「家に行かなけ“れば”良かっただけだろ」
 
このような「たられば叩き」は男女ともに広く見られますが、非常に醜く愚かな言動です。たらればと仮定で物事を言えるのは、事件が起こったという事実を既に知っているからです。被害者女子高校生が置かれている状況を何も知らないからです。つまり、机上の空論に過ぎません。

 
仮に、性的な行為をされるかもしれないと頭の片隅にあったとしても、そもそも性暴力は加害者が加害行為を行わなければ成立しないので、被害者に過失(落ち度)は一切ありません。100%加害者が悪いので、被害者を責めるべき理由なんて一つもありません。
 
そして、被害者女子高校生の自衛不足を責めれば責めるほど、女性が「全ての男は性犯罪者予備軍である」という考え抱くことを促進することになりますが、男性たちはそれでも良いのでしょうか? それでいて自分が女性から自衛の対象になったら「Not All Men!」と怒る人は少なくありませんが、完全なる因果応報です。

ハニトラと言い出す人は歪んだミソジニー


また、Twitterで「山口 ハニトラ」と検索すれば、相も変わらず「ハニートラップだ!」というVictim Blaming(被害者叩き)&セカンドレイプがごまんと出てきます。この事件のどこをどう見ればハニートラップだという判断ができるのがまるで分からないですが、彼らはとにかく女性を叩きたくて仕方ないのでしょう。

もちろん彼ら彼女らが被害者叩きをするのは、ミソジニー(女性嫌悪)だからです。女性が悪者だと思っているから、「男性が加害者で女性が被害者」という構図に認知的不協和を覚える。それを解消するために、女性側の粗を探し、事実ではなくとも「ハニトラだろう」と信じ込むわけです。

ちなみに、100%有り得ないですが、仮にハニートラップを仕掛けるのが目当てだった場合でも、子供に誘われて応じてしまう大人が100%おかしいと思います。「(女性による)ハニートラップ」ではなく、「(男性の)ハニー自爆」が正しい言い回しだと思います。


「ロリコンクライム」のピラミッド


山口達也さん、あなたもロリコン病に堕ちていたのか

それにしても、財務省の事務次官によるセクハラ、新潟県知事による女子大学生買春等、日本の男性の性欲がマトモではない現状を証明する出来事が立て続けに起こっていましたが、さらに46歳のスターが16歳の少女に無理やりキスをしたという事件が追加されたことで、それが改めて浮き彫りになったと言えます。

とりわけ、今回の山口氏の件は、相手が女子高校生であるにもかかわらず、キスをしたいという欲求を持っていたわけであり、彼もまた日本の「ロリコン病」に完全に堕ちてしまっていたからこのような行動を起こしたのだろうと思います。

もちろん、このような「ロリコン病」が生じるのは、やはりこの日本社会に女子高校生(や女子中学生)を性的な記号として消費するコンテンツが溢れ返っているからです。「偏見」が「憎悪」を生み、「憎悪」が「暴力」を生むことを説明する「ヘイトクライムのピラミッド」という概念がありますが、「ロリコン病」の問題もこのピラミッド構造に当てはめることができると思います。


つまり、女子高校生を性的記号化する日本のコンテンツ産業が、大人による女子高校生への性的なまなざしを生み、それが女子高校生を対象にした性犯罪やJKビジネスを生んでいる構造にあると思うのです。

今回、事の発端となったNHKの「Rの法則」も、「毎回女子高校生のエロいシーンがあって冷や冷やした」というインターネットの投稿もあり、女子高校生の性的な面を出していた可能性がありそうです。そう考えると、NHKも今回の事件に関して全く責任が無いとは言い切れないと思います。

女子高校生の性的記号を促進する日本のコンテンツ


なお、女子高校生の性的記号化促進に大きな影響を与えた人物の一人が、AKB48グループを率いる秋元康氏だと思いますが、新曲の「Teacher Teacher」の歌詞がまた酷い内容で、男性教師を性的に誘惑する女子高校生を描いていました。大人が少女を性的に搾取することを、少女の目線で肯定的に語らせることで正当化している実におぞましいやり方です。

確かに、私も高校生の頃、若い男性教師が女子生徒に言い寄られているにもかかわらず、「はいはい」と軽くあしらっているのを見て、「先生、強がっているんじゃないの?女子に迫られて嬉しくて、本当はSEXしたいんじゃないの?」と思っていました。

でも今、自分があしらう側の立場になって分かりました。彼らは別に強がっていたわけでも何でもない。マトモな大人なら子供とはSEXしたくないだけなのだと。対等な女性であれば誘われて性的なモードになる可能性はありますが、子供に誘われてもそのようなモードにならないのがマトモな大人でしょう。

でも、この国はマトモじゃない大人が多過ぎる。誘われて応じたい大人たちがたくさんいるのです。むしろ相手が女子高校生だからこそ興奮を覚えてしまうロリコン男性も非常に多いようで、異常極まりない状態と言えるでしょう。


大人の性教育を国全体でやるべきだ


でも、正直なところ、ロリコン病に堕ちる人の「感覚」は分からなくありません。私も一般的な日本人男性と同様、何の批判精神も持ち合わせておらず、日本のロリコンコンテンツに触れ続けていたら、きっと女子高校生を性的な記号として捉えてしまっていたかもしれないと思うことはあります。

私がロリコン病に堕ちずにいるのは、ファンタジーを追いかけて性欲を変に“開発”されるよりも、半径5mの人とリアルな性を追求したほうが、自分(+相手)にとって幸福感が高いということを感覚で掴んだからなのですが、もちろんそんなことを教えてくれる機会はこの日本社会にはありません。

ですから、これは個々人の問題ではなく、社会全体の問題です。このような狂った性欲を持つ男性たちが立て続けに色々な問題を起こしているわけですから、この社会システム自体に問題があるのです。この連載でも繰り返し述べていることですが、「男の性」を社会課題として徹底的に見直さなければならないと思います。大人の性教育を国全体でやるべきでしょう。

そしてそれと同時に、ロリコンクライムのピラミッドを考えれば、女子高校生を性的記号化するコンテンツという犯罪の種を社会から減らしていかなければならないと思うのです。大人が子供を守れない社会に未来はありません。
(勝部元気)
編集部おすすめ