北海道を駆け回る「ゴールデンカムイ」4話。エンジンかかってきた。

アクション、グルメ(キナオハウとにしんそば)、アイヌの風習、自然、変顔、ドタバタ、バイオレンス。
ごちゃまぜが魅力のこの作品のノリを、ほぼ全部詰め込みつつ、テンポのよい展開でまとめている。
多すぎる題材は、キャラクターを表現するネタとして調理されているので、散漫な感じがない。
器用な回だ。

なお原作で人気のカワウソの頭を食べるシーンは、本編には入らなかったが、YouTubeの「ゴールデン道画劇場」でばっちり描かれている。
「ゴールデンカムイ」4話。アシリパさんはまだまだ寂しがり屋のいたいけな子供だ
「ゴールデンカムイ」4巻。砲弾で頭蓋骨の一部が吹っ飛んだため、時折汁が漏れると自称する鶴見中尉。この作品でもトップレベルのヤバいやつ

アイヌ集落の子供たち


序盤はアイヌ集落の生活が描かれている。3話同様に、うんちく満載だ。
アシリパ(リは小文字)と杉元は、エゾハナカジカを獲り、出汁を取った鍋を作る。捕獲から調理、食事の様子まで事細かに出てくるもんだから、深夜の飯テロもいいところ。

3話はアイヌの信仰がメイン。4話はアイヌの子供たちの様子にスポットを当てている。
中でもキサラリ(耳長おばけ。棒を窓の外からちらちら出して、この世のものとは思えない声で脅かす)の部分は、やりすぎなくらい尺をとって、丁寧に表現された。


杉元がアシリパにキサラリを渡されて、アイヌの子供たちを脅すように言われる。杉元は素直に引き受けて、演じようとする。
結果それはへっぽこなものになり、誰も驚かない。
「ひっこめ杉元、恥ずかしい。よこせ、手本を見せてやる」と言って演じたアシリパの声は、まさに「この世のものとは思えない声」で、子供たちは怯え上がってしまう。
何もかもが、微笑ましい。

アイヌの集落で、子供たちが大切にされているのが、とてもよく分かる。
アシリパは自然を生きる術を身に着けた、たくましいアイヌだ。
しかし集落では、他の子供たちと一緒に遊ぶ幼い少女なのが、このやりとりでよくわかる。
子供たちと棒を掲げ、楽しそうに笑っているアシリパの姿。

「大人びてはいるがアシリパは寂しがり屋のいたいけな子供なのだ」
「最近は随分と明るい。杉元さんと山にいるのが楽しいんだろう」
アシリパの叔父は言う。

本編では、強いアシリパしか出てこない。彼が来る前までは山に入って、レタラと孤独に暮らしていたのかもしれない。
だからこそ明るいキサラリの様子は、物語的には重要度は低いものの、このアニメには必須だ。

杉元のアイヌへの敬意も、3話4話では多く見られる。
キサラリをうまく演じようと四苦八苦。食事の際には風習にあわせて同じ仕草を取る。アシリパに怒られた時はストゥ(制裁棒)によるお仕置きを受ける。
「郷に入れば郷に従え」描写は、今後他のキャラにも適用されていくはずだ。
アイヌ語が通じないのに、フチの発言を聞いた杉元。ここは、彼なら気持ちを受け取れるはずだ、と視聴者が感じさせられる名シーン。杉元がファンに愛される所以だ。

みたらし団子の串


後半は死神こと鶴見中尉大活躍。

杉元を捕まえ、一緒にクーデターを起こすよう誘う彼。手段を選ばないとばかりに、兵士が杉元をぼこぼこにしている。
二階堂兄弟(猫目でハイライトがない坊主頭2人組)がリンチするシーンでの、口からゴボゴボ漏れる血の表現は必見。

特に目立つのは、尋問中にみたらし団子の串を杉元の頬に突き刺す場面だ。
鶴見中尉の冷酷さと、杉元の強靭な精神力がぶつかりあう。

鶴見中尉は直接殺すよりも、相手の耳を削ぐなど、痛覚に訴えてくるような行動が多い。
一方杉元は、耐える力がものすごく強い。不死身と呼ばれるだけあって、どこまで生き延びられるか、のようなチャレンジャーな場面が沢山出てくる。
この作品のバイオレンスは、キャラクターの性格に直結しているので、以降の展開でどのアクションに注力されていくか、しっかり見ておきたい。ヒグマとの戦闘やだんごの串を、ここまできっちり描けるスタッフなら、もっとやってくれると期待しています。

(たまごまご)
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