「ゴールデンカムイ」1話が杉元とアシリパ(リは小文字)の出会いを描く導入回だとしたら、2話は「ゴールデンカムイ」とはどんな作品かを「ちらっと」見せる回だった。まだちらっとだけど。

とんでもない能力を持った新キャラ、時折はいるコミカルな動き、そして料理。
「ゴールデンカムイ」さあ、料理描写をどうしたか。チタタプでリス鍋を作ろう2話
「ゴールデンカムイ」2巻。まだ普通の美少女だった頃のアシリパさん。OPの疾走感もいいですね

チタタプとヒンナ


金塊を探すために、杉元とアシリパが入れ墨の囚人を探し始めた今回。
シリアスなシーンが続く中、狩猟小屋に入って、唐突にアシリパが捕まえたリスを調理。グルメ漫画モードに突入。

「ゴールデンカムイ」において、料理の描写はとても重要だ。
ストーリーに大きく影響するというよりは、「作品の構成要素の柱の一つ」だからだ。
この作品を「グルメ漫画」だと思って読んでいる人は、結構多いと思う。


リスは皮を剥ぎ内臓を取り出して洗浄。あとは身体をそのままタシロ(ナタのアイヌ語名)で叩いてチタタプにする。
チタタプとは肉や魚のたたきのこと。直訳すると「我々で・(たくさん)刻む・もの」。
ペーストになるまでみんなで順番に叩くのが通例。まるまんま叩くので、血もそのまま。

特に固い肉や小さい動物は、これをすると食べやすい上に、傷みにくい。狩猟で暮らす人々の知恵。このあたりは原作がしっかり取材して描いている。

脳みその生食描写は、グロテスクなものの、きっちりと隠さず描いてくれた。
ここはアイヌの「自然」への感謝がこもっているからこそ、ちゃんと表現するべきところだ。
杉元が微妙な顔で食べているのは、無茶苦茶美味しいというほどでもなく、味に関しては人それぞれ、という実際の感想に基づいたものなんだろう。
アイヌに敬意は払うけど、特段持ち上げるわけではないのがこの作品。

アシリパに言われた通り、杉元は「チタタプ」と言いながら肉をナイフとナタで叩く。
Twitterのタイムラインでは、ここで「きたー!」と大盛り上がり。
「チタタプ」は、みんなで食卓を囲む時の作業、仲間になった証のような行動だからだ。杉元がアシリパに少し歩み寄ったシーンだ。

もうひとつの名セリフ「ヒンナヒンナ」
食事に対しての感謝の言葉、「いただきます」と「おいしい」の混じったものだ。
こちらも口に出すことで、アシリパたちアイヌに習い、和人が心を開いたことを示す単語になっている。
2話前半でアシリパが和人に「売り払う」など差別発言を受けているだけに、杉元の「ヒンナヒンナ」のシーンは、心のつながりが見えて温かい。

一気に登場した主要キャラクター


2話目は重要なキャラが一気に揃う回だ。
多少駆け足気味だが、物語の主要なシーンはおさえており、登場のテンポもいい。

まず杉元を狙って単独行動している、北海道第七師団の尾形百之助
今回は、三十年式歩兵銃で300m狙撃ができる、という点以外は「ヤバイ兵士」程度の表現。
他のモブとあまり変わり映えしないので、とりあえず顔出しといったところ。

「脱獄王」と呼ばれている白石由竹は、初登場時からチート能力を見せている。口の奥に刃物を潜ませ、腹の中に銃弾を飲み込み、関節を外せる柔らかい身体でどんなところからでも逃げ出せる、という超人。
元ネタと思われるのは、昭和の脱獄王・白鳥由栄。吉村昭は白鳥をモデルに小説「破獄」を執筆している。(参考記事
白石はその能力とコメディリリーフっぷりで、これからモリモリ出番が増えるキャラ、のはず。
へんてこっぷりは2話でしっかり見えている。

その他、元新選組の土方歳三、尾形の上司鶴見中尉もちょっとだけ出演。杉元陣営・鶴見陣営・土方陣営の3つが並んだ。
欲望の柔道家・牛山あたりが出てきてからが、変人オンパレードの始まりだ。

変顔の調整


ファンの間で意見が割れたのが、顔芸がゆるすぎるのではないか?という部分。
リスの脳みそをイヤイヤ食べる杉元、食べないと許さんという顔のアシリパ、川に落ちて凍える杉元など、原作では思い切り崩していた顔のシーンが、アニメ2話だとそこまで崩されておらず、まだ自然な顔をしている。

「ゴールデンカムイ」においての変顔は、ギャグとして、感情の起伏の表現として、とても重要だ。だからこそ、アニメでの描写のマイルドさに疑問がでるのは当然だろう。
特に川に落ちて低体温症になるシーンは、デフォルメがそこまできいていないが故に、原作ほどの死の恐怖はなかった。

ただ、アニメからの視聴者からは、この時点で「めちゃくちゃだ」という意見が多数出ている。
この段階で、急にリスを食ったり、新選組の土方が生きていたりと、実のところは相当な情報過多の回。
どうしても原作が、現在進行形でしっちゃかめっちゃかなだけに、これに慣れた既読者だと、アニメ描写が甘く感じてしまう。
アニメという媒体を考えた場合の、未読者を配慮した、穏やかな離陸の策なのだろう。

人気のある扉絵2ページ漫画(アシリパが動物と仲良くしたあとに、即食べる、というネタ)はYouTube限定でアニメ公開されており、こちらの杉元の「ヒンナヒンナ」はかなりいい具合の崩し方で描かれている。
ここから先の加速に、期待していますよ。
(たまごまご)