罠だと進言するもゼークト大将に怒鳴られてしまったオーベルシュタインのつぶやきだ。
というわけで、『銀河英雄伝説 Die Neue These』(→公式)第七話「イゼルローン攻略(後編)」。
新装版も刊行開始『銀河英雄伝説 1 黎明篇』(マッグガーデンノベルズ版)。
イゼルローン攻略を、一話かけてじっくり描いたアニメ版。
原作では、イゼルローン攻略そのものは、4ページちょいぐらいで、けっこうあっさりなんである。

刺青が見つかって「あわや」っていうシーンも、ヤン+シェーンコップ+フレデリカが作戦会議するシーンも、ない。
IDカードをチェックするくだりも、ない。
原作では、“「IDカードまでちゃんと偽造して来たのに、調べもせんのだからな……どんな厳重なシステムも、運用する人間しだいという、いい教訓だ」”ですんでしまう。
じっちゃんの形見の万年筆のくだりも、アニメ版の追加要素だ。
今回は、盛ったなー。
いままでは、原作で時系列が飛んでいるシーンを整理して、時系列順にして、ストレートに進行させていたアニメ版。
3つの時間列が入り乱れる構成になった。
イゼルローン攻略が進行しているなかに、シェーンコップの回想と、作戦会議シーンが挿入される。
アニメ版では、シェーンコップが裏切るかもしれないという疑念も繰り返し表明され、「信じることで筋を通すさ」「信じるといった男に筋を通さんとならんのでな」といったセリフのシンクロで盛り上げる。
ゼッフル粒子についても「奇襲のさなかでの使用は不測の事態を起こしかねません。ともすれば暴発にまきこまれ全員が命を落とすことに」というフレデリカの指摘が追加された。
たしかに、スリリングさを増した。
が、ヤンの作戦がそうとう心もとないものだったんだなーっていう印象にもなってしまったか。
降伏もしくは逃げよと告げたヤンに対して、愚かにもそれを拒否し、降伏するぐらいなら死して名誉を全うするのが武人の心だと返答するゼークト大将。
ヤンは、「武人の心だって?」と言葉を吐き出す。
原作では、そのときの心情はこう描かれている。
“にがい怒りのひびきを、フレデリカ・グリーンヒル中尉はヤンの声に感じた。実際、ヤンは怒りをおぼえていた。死をもって敗戦の罪をつぐなうというのなら、それもよかろう。だが、それならなぜ、自分ひとりで死なない。なぜ部下を強制的に道連れにするのか。
もちろんゼークトは、「おまえらは道連れだ」と直接言ったわけではない。状況的強制力を使って(こういうことを「忖度」という言葉で糊塗してはいけない)、道連れにしようとしたのだ。
アニメ版では、こういった地の文を、文章で説明することができない。
「武人の心だって?」のセリフと絵に、その心情を込めて描くのだ。
演出、脚本、声優の仕事って凄いなーと思う。
次回、第八話 カストロプ動乱。(テキスト/米光一成)
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