「やけ弁」は中学校を舞台にした学園ドラマながら、スクールロイヤーとして派遣された弁護士を主人公としているせいか、これまで生徒の存在感がいまひとつ希薄だった。それが先週放送の第4話では、不登校の生徒が登場し、神木演じる新米弁護士の田口が真正面から向き合うこととなった。第4話ではまた、田口がこれまで対立してきた教務主任の三浦(田辺誠一)と手を組んで、例の不登校の生徒への対応や校則の見直しにあたったという点でも、ドラマの流れに変化を感じさせる回だった。

対立していた弁護士と教師がタッグを組む
第4話の冒頭、警察署の窓口で何やらごねている田口。落とした財布が戻って来たものの、拾って届けてくれた人に報労金を払うことに対し、なぜ御礼がカネでなくてはならないのか疑問を抱いたらしい。彼の言い分はあきらかに屁理屈だが、これが今回テーマとなる校則の話へとつながっていくのが面白い。
田口の派遣された中学校では、前回学校をやめた非正規教員の宇野が担任していたクラスを、代わりの教員が見つかるまで三浦が受け持つようになった。三浦はまた不登校を続けている小嶋尚人(山下真人)という3年の生徒の対応にもあたっていた。それを聞いた田口はその日、突然、小嶋の家庭を訪ねる。スクールロイヤーとして法的対処が必要になると考えたからだ。
訪問先で田口と鉢合わせとなった三浦によれば、小嶋の不登校のきっかけは、地毛が茶色にもかかわらず、校則では髪は黒と決められていると学校側から染めることを命じられたからだという。田口はそれなら校則を変えればいいと、さっそく職員会議で校則の見直しを提案する。
だが、事態は意外な方向に向かう。何と、反対していたはずの三浦が、校則によって傷つけられている生徒がいるのは事実なのだから、まずは動くべきだと、田口に同調したのだ。これを受けて田口は、いっそ校則全体を見直そうと新たに提案、三浦と二人で生徒たちから意見を集めることにした。
田口、自らの体験から熱弁をふるう!
生徒から続々と校則に対し異議が上がるなか、田口と三浦は、小嶋にも意見を求めた。だが、これが裏目に出てしまう。小嶋はその後、部屋に引きこもってしまったというのだ。そのことを校長から知らされ、田口は「校則を変えたら学校に戻ってこないといけない」というプレッシャーを与えてしまったことに気づく。そして三浦と再度小嶋の家を訪ねると、部屋の前で説得にあたった。
田口はそこで、学校嫌いだった自分の過去を語り始める。それによれば、彼は中学3年のときにいじめられて不登校になり、学校からは転校を勧めれるも、それはおかしいと考えた彼は積極的に学校に背を向け、その後、フリースクールに通うようになったという。そのうえで小嶋にこう訴えかけた。
「僕は自らの意志で積極的に不登校という道を選んだんだ。
熱っぽく語る田口に心を動かされ、ついに小嶋は部屋から出てくる。そして言われたとおり、自ら学校に行くかどうか選ぶと約束した。
これでひとまず問題は解決したが、三浦は田口のやり方に納得がいかない。帰る道すがら、「あなたの主張は一歩間違えれば、学校なんてなくてもいいということになる」と反論された田口は、「いままでのあなたのやり方じゃ生徒は救えない」と言い返す。いったんは手を組んだとはいえ、やはり田口と三浦は根本的に考え方が違ったようだ。
そんなふうに田口がほえていたころ、夜の教室からひとりの女子生徒(森七菜)が転落する。
不自然?なセリフの理由がついにあきらかに
田口が弁護士になったのは、16歳のときに模擬裁判イベントに参加し、現在所属する法律事務所の所長・高城(南果歩)と知り合ったのがきっかけだと、これまでの話であきらかになっていた。しかし、そこで私がちょっと気になったのは、「16歳のときに」と年齢が強調されていたことだ。普通なら、ここは「高校時代に」とか「高1のときに」と表現するほうが自然のはずだが……。その理由が、第4話でついに田口自身のセリフによりあきらかになった。先述のとおり、彼は中3のときにいじめが原因で不登校となり、けっきょく自らの意志で高校には行かなかったのだ。
彼がスクールロイヤーとなったのも、高城の推薦であることがやはり第4話で判明した。だが、事務所での高城との会話で「自分の経験ひもといて肩入れするのは、なし、でしょ?」と田口が言っていたように、本来なら、弁護士がクライアントに対し自分の経験や感情を移入することはご法度らしい。それが今回、彼は不登校の生徒に対し自分の体験談から説得にあたるという“禁じ手”に出た。
いままでの学園ドラマであれば、生徒に体当たりでぶつかっていくのは教師の役回りであっただろう。
さて、今回、手を結んだものの決裂した田口と三浦が、生徒の自殺未遂という新たな事態にどう対応するのか? 気になる第5話(最終回の前の回)は今夜、「ブラタモリ」天城越え編のあと、8時15分から。
(近藤正高)
※「やけに弁の立つ弁護士が学校でほえる」はNHKオンデマンド(有料)でも配信あり