連続テレビ小説「半分、青い。」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第10週「息がしたい!」第58回6月7日(木)放送より。 
脚本:北川悦吏子 演出:土居祥平

58話はこんな話


正人(中村倫也)に振られた鈴愛(永野芽郁)は毎日泣いてばかり。律(佐藤健)は心配して・・・。


さよなら正人くん


律の背中で泣く鈴愛。律が「清(さや)」の名前を呼び捨てにする(女の子を鈴愛以外ではじめて呼び捨てにしたことを聞いた)ことや、彼女にマニキュアを塗ってもらっていることに何かを感じる。

ふたりは幼い頃のままではだんだんいられなくなっている。
年齢や環境がだんだんふたりを変えていく。
にもかかわらず、それに抗おうとするかのような律。
すっかり引っ越し準備のできたガランとした正人の部屋で語り合う律と正人。
ちゃんとした恋できないのは、相手ひとりに絞ってふられたら自分ひとりになるのがこわいという正人。
正人は、律は鈴愛が好きなんじゃないかとまたしても言うと、律は鈴愛のことを「ドラえもん。世界の扉」なのだと返す。「ドラえもんなんだ、しずかちゃんじゃない。恋愛感情はない」と。
「しずかちゃんよりドラえもんをとったほうが正解じゃないの?」とけだし正論・・・のようなことを言い
「君たち離れられないよ。ぼくはそう思う。
予言だ」と念を押す。
「呪いをかけるな」と律に言われながら退場していく正人くんなのでした。これでもう出ないのかな。

ドラえもんってキャラを例えるのにほんとうに便利で、私も「わろてんか」のレビューで藤吉はのび太だと思うと書いたことがあった。

涙止めマスク


失恋してから3日間ずっと泣きぬれている鈴愛。
職場で自ら考案した涙止めマスクをしている彼女(ほんとに発明が得意)を見て、
「死んだか? 五平餅のじいさん死んだか?」と聞く秋風(豊川悦司)。
嬉しそうに寄ってきて「失恋をなさったか」「いいじゃないか! 大いにいいじゃないか!」「チッ 聞きたいのに」とひとり芝居の秋風。ほんとうに豊川悦司が出てくると場が沸く。

そこへ律が電話してくる。日中、会社に電話してくるなんて、と眉をしかめる一部の善良な視聴者が目に見えるようだ。
鈴愛の様子を聞いてから、清(古畑星夏)と合流。清と会う前に鈴愛の会社に電話するなんて、と眉をしかめる一部の善良な視聴者が目に見えるようだ。
古畑星夏、衣裳替えしたが、またしても絶対領域とハイネック。
これが彼女の記号か、記号なのか。

教授(塚本晋也)に会って「文学部、一文なんです」と一文を強調。たぶん早稲田生の習慣(一文と二文があるから)。

律、料理する


結局、気もそぞろのまま律は夜、鈴愛の部屋に。
共同炊事場にて和子(原田知世)直伝の萩尾家特製スープを作る。
豆腐、ベーコン、マカロニ、油揚げ、ねぎ、コンソメのスープ。
「せっかくだからみんなで食べようか」と言う律に遠慮するユーコ(清野菜名)とボクテ(志尊淳)。そりゃそうだ。

狭い和室で律のスープを飲む鈴愛は、たしかにドラえもんとのび太くん的だ。でもこの場合、律がのび太の面倒を見ているドラえもんのようだが。
爪のマニキュアを、自粛の意味で絆創膏で隠す律が優しい。

57話のレビューでふたりのいいシーンをふわっと見せないことについて書いたが、少女漫画ではなく「ドラえもん」の世界を表現するなら当然ながらフラットな照明でシンプルな輪郭線に縁取られたような画でいい。
くらもちふさこ的な世界観になったりドラえもん的になったり、スタッフもなかなか大変だ。


どこにいっても変わらない鈴愛とまわりに影響される律、ふたりの違いを語り合う。
鈴愛「風の流れで形が変わる。ふわふわ。雲の上で寝たらふわふわで安心する」
律「ひとを勝手にふとんにするな」
という会話を聞いて、律にとって鈴愛はドラえもんだとしたら、鈴愛にとって律は「ライナスの毛布」かなと。

ほんとうに同志になるには、まずはどこかで毛布を手放し自立してからなんだろう。
「半分、青い。」58話。清野菜名(ユーコ)が夏服に、爽やか〜
『スヌーピーとしあわせの毛布』 チャールズ・M. シュルツ 小峰書店
ライナスはいつも毛布をもっている。それは彼の深層心理の表れ……

季節が変わる


ついにマスクを外す鈴愛。
ユーコとボクテと食べたり歌ったり遊んだりして気が晴れていく。カラオケはオフィスティンカーベルでできるなんて恵まれているなあ。

鈴愛の明るい顔よりも、ユーコがとうとう着替えた夏服(39話で実家にそろそろ夏服着たいと電話してから19話も経過してしまった)からすらっと伸びた前腕(肘の下のとこ)見て気持ちが爽快になった。清野菜名の醸すムード、肌の透明感も相まって、かなりのものだ。
(木俣冬)
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