「これで終わり!?」と、色々な意味でビックリさせられる結末だった。
あれだけ高まった感情を返して欲しい!
まず、犯人から撃たれた矢代は無事なのか問題は、持ち歩いていた(胸ポケットにでも入れていたのか?)辞書に弾丸が当たって無事だったというオチ。
血も出ていなかったし、さすがに死んでいるとは思わなかったが、まさかこんなベタなパターンで来るとは……。逆に、予想すらしていなかったので「21世紀だぜ、今!」と心底ビックリした。
強行犯係にいた頃にも犯人から撃たれ、重傷を負っていた矢代。文書解読係としての自覚を持ち、携帯するようになっていた辞書に命を救われたというのはいい話だが、2週にまたがって引っ張るほどのネタだったのか……。
一方、矢代の危機を感じ取って、反応していた(ように見えた)鳴海。「ふたりの心が通じ合った!」と薄ら涙まで浮かべてしまったほどいいシーンだったのに、心の声を受信していたわけではなく、落としたハンカチを拾おうとしてギックリ腰になっていたことが判明。
最終回直前で、あれだけ高まっていた期待と緊張感を、ここまでオモシロで処理しちゃう必要があったのか。
うっかり感動しちゃった、あの気持ちを返してくれ!
ラスボスを逮捕できないまま終わり
オモシロどんでん返しからはじまった最終回。事件の方も、どんでん返ししまくりだった。
前回のレビューで挙げていた、最終回を見るに当たっての重要そうなポイントを振り返ってみよう。
・三億円を強奪された時、現場にいた警備員のひとり、戸塚正秀(大谷亮平)は足を銃で撃たれてケガをしていたが、行方がわからなくなっている。
・百々瀬佐智(谷村美月)を誘拐していた犯人は秋田昇(岡田浩暉)。藤枝信也(長谷川朝晴)殺害の犯人でもあると推測される。
・元刑事局長・野々村慎太郎(岩城滉一)は、三億円強奪事件の再捜査がはじまったことを気にしている様子。アヤシイ!
・百々瀬佐智の父親・博昭(石黒賢)は、殺された藤枝の写真を見た際、微妙な反応をしていた。
・鳴海は、三億円事件の調書に書かれた文字が気になっているようだ。
最終回を見終えて振り返ってみると、「コイツがアヤシイぞ」というポイントは押さえられていたものの、その予想を遙かに超えた展開だった。
藤枝、秋田とともに、百々瀬博昭が三億円強奪犯グループの一員だったとは! さらに、その犯行を計画した黒幕が、当時中学生だった佐智とは!
「文字の声が聞こえる」ほど聡明な女子中学生が、事業に失敗しまくり多額の借金を抱えていたポンコツな父親をそそのかし、現金輸送車を襲う計画を実行する……。なかなか胸が熱くなる設定だ。
しかし、この結論にたどり着くまでの過程が、いつも以上に偶然&エスパー推理の連続で、見ていて納得できなかった部分多数。
せっかく前回、丁寧な謎解きをするようになった思っていたのに……。
藤枝を殺した秋田を殺した犯人が、事件時に足を打たれた警備員・戸塚であると推理したのは、監視カメラの映像で足を引きずっていたことから理解できる。
しかし、そこからどうやって戸塚を見つけ出したのかといえば、たまたま飛び降り自殺をしようとビルの上にいるところに出くわしたから……という完全なる運ゲー。
百々瀬博昭が実行犯のひとりであると突き止めたのも、過去に百々瀬が経営していたレストランで藤枝と秋田が働いていたということ。強奪事件の半年後、百々瀬が突然借金を返していたことからの推測でしかない。
さらに、百々瀬博昭が自ら罪を認めているのに、文字で人を洗脳したり、綿密な犯行計画を建てるような字(筆跡)ではないと、几帳面な文字を書く娘の方が黒幕だと見抜くエスパーっぷり。
確かに父親の方は、フニャフニャしたヘタクソな字だけど……。気鋭の社長っぽい顔をしているのに、あの字のヘタさは笑った。
これまでのパターンだと、これくらいの証拠しか揃えられていないのに、人情に訴えれば犯人が自白しちゃうというミラクルが起こっていたが、さすがにラスボスは違った。
父親が代わりに罪をかぶったと聞いても、眉をピクリとも動かさず、
「何とも思いません。むしろこう思うでしょうね。そんな親の元にさえ生まれなければ、私はもっと素敵な大人になれたはずなのにって」
と言ってのけるクールさだ。
さすが「何かがあったら使おうと、(戸塚を)1ヶ月かけて洗脳しておいた」というだけはある。……何かあった時のための保険に、人を洗脳するなよ!
結局、実行犯である博昭は逮捕したものの、計画をし、そそのかした佐智の方は逮捕できず。モヤモヤしたまま終わってしまった。

何のために出てきたんだ、岩城滉一!
元刑事局長・野々村が再捜査を気にしていた件も、なんだか中途半端だった。
野々村の息子(警察官)が過去に紛失した拳銃が三億円強奪事件に使用されたため、調書を書き換え、諸々もみ消していたという理由。
このせいで、上層部からの妨害が入り捜査が思うように進まない……というパターンもあるのかなと思ったものの、野々村の力で湾岸南署の署長に引き立ててもらおうと考え射る古賀がチョロッと邪魔をしたくらいで、捜査にはほぼ影響なし。
そもそも、犯人グループがどうやってこの拳銃を入手したのかも分からないままだ。
おそらく、書類の改ざん・偽造という時事ネタ的な要素を入れたかったんだろうけど、このエピソード、必要だったか?
拳銃の件を最後まで隠して野々村を守り、署長になろうとしていた古賀が、いきなり考えを変えて拳銃紛失の件を公表したという気持ちの変化もよく分からなかった。
第2シリーズへの布石なのか、それとも打ち切りだったのか!?
気になることが色々と残ったまま最終回を迎えてしまった『未解決の女』だが、それもこれも第2シリーズへの布石だと考えれば理解出来る。
百々瀬佐智に向かって矢代が、
「いつか捕まえてみせる。あなたの罪はきっとこれだけじゃない」
と言っていたが、今後のシリーズでちょいちょいライバル的な存在として登場することは充分考えられるだろう。
佐智が文字を使って洗脳した犯罪者集団と、文字でエスパー推理を繰り広げる鳴海&矢代のバトル。谷村美月の静かに狂っているキャラクターも相まって、すんごく面白そうだ。
また、やたらと敵視し合っている鳴海と古賀の因縁や、古賀が出世ルートを外れた理由(鳴海が絡んでいる?)。矢代が強行犯係時代に撃たれた事件の詳細などなど。
この辺のモヤモヤが、第2シリーズ以降で明らかになると信じておこう。
……じゃなかったら、大人の事情で急遽打ち切りとなり、ムリヤリ終わることになってしまったとしか思えない尻切れトンボ感だった(どんな大人の事情だよ、最終回のラスボスが山口達也だったのか!?)。
海外ドラマの影響なのか、最近このようにスッキリしないまま終わってしまうシリーズ物のドラマを時々見かけるが、いくら続きがある(ないかも知れないけど!)といっても、視聴者からすると1年近くは待たされるわけで、もうちょっと気持ちよく終わらせてくれて欲しいところだ。
とりあえず、波瑠と鈴木京香のバディの今後を楽しみにしたい。おばあさんになるまで続く長期シリーズを目指してもらいたい!
(イラストと文/北村ヂン)
【配信サイト】
・テレ朝動画
・TVer
『未解決の女・警視庁文書捜査官』(テレビ朝日系列)
原作:麻見和史『警視庁文書捜査官』(角川文庫 / KADOKAWA刊)
脚本:大森美香
音楽:村松崇継
主題歌:平井堅「知らないんでしょ?」(アリオラジャパン)
ゼネラルプロデューサー:横地郁英
プロデューサー:服部宣之、菊池誠、岡美鶴
演出:田村直己、樹下直美
制作協力:アズバーズ
制作・著作:フジテレビ