主演がNEWSの加藤シゲアキ。しかも、他のNEWSメンバーも総出演予定ということで、本当に放送できるのか心配していた(色々あったからね……)ドラマ『ゼロ 一獲千金ゲーム』(日本テレビ系・日曜22:30〜)が無事スタートした。


原作は『カイジ』や『アカギ』でお馴染み、ギャンブル漫画の第一人者・福本伸行の漫画『賭博覇王伝 零』。

『カイジ』や『アカギ』の実写化が一定の成功を収めていることや、『カイジ』をモチーフとしたバラエティ番組『人生逆転バトル カイジ』『人生逆転リアリティーショウ リアルカイジGP』が話題となっていることから、「福本原作でもう一発当てられねーかなぁ」という思惑があったんだとは思われるが、それにしても「コレ!?」というチョイス。

確かに、延々と脳内で考えを巡らせているだけの描写が多い福本漫画の中ではアクション要素が強く、映像化には向いていそうな作品だ。

ただ、基本的に失敗したら即死というクレイジーなゲームばかり。ちょっと地上波には出しちゃダメなレベルのキチガイも続々登場する原作だけに、どこまで実写化できるのか?

そして、そんな内容にどこまでジャニーズ勢が付き合ってくれるのか!?

梅沢富美男に小池栄子、脇役陣がいい味出してる!


第1話を見た限りは、クレイジーな殺人ゲームも含め、おおむね原作を忠実に再現していて、なかなか気合いの入った実写化となっていた。

サイコロの目を予想し、その目に割り当てられた檻の中に入る。外れると頭上から巨大な鉄球が落ちてきて即死という殺人ゲーム「鉄球サークル」も、バカバカしいまでにそのまんま実写化。

キャスト陣も、ビジュアル的に似ているという方向性ではないが(あんなに鼻がとがって、アゴがにゅーんと長い人間はいない!)雰囲気はバッチリだ!

インチキくさい上にお調子者なヤクザ・末崎さくら(ケンドーコバヤシ)。

仲間内を引っかき回す厄介なバカ・真鍋チカラ(加藤諒)。

そして、財政界・裏社会に絶大な影響力を持つ黒幕。在全グループ会長・在全無量(梅沢富美男)。

原作ではもっとしわくちゃのクソジジイなのだが、うさんくささや老害感が梅沢にバチとハマッている。

また、福本原作を実写化するに当たってのあるある。
「原作に女っ気がなさすぎるため、一部のキャラをムリヤリ女に変更する」枠は、ゲームの進行役・後藤峰子(小池栄子)。

原作のゲーム進行役は角刈りグレーヘアーのおっさんだが、下品&ギラギラしている小池栄子の進行っぷりも殺人ゲームの雰囲気を盛り上げていた。
いろいろ乗り越えて「ゼロ 一獲千金ゲーム」開幕。加藤シゲアキのゼロがあんまり頭良さそうに見えない件
イラストと文/北村ヂン


ゼロがいまいち頭が良く見えない


脇役たちがなかなかいい感じである一方、気になったのは、肝心の主人公・宇海ゼロ(加藤シゲアキ)がサワヤカすぎるということ。

確かに、カイジやアカギ、黒沢といった「闇」オーラ全開な福本漫画の主人公たちと比べると、ゼロは比較的明るいタイプのキャラクターだが、在全の後継者&1000億円の賞金を目指して命がけのゲームに身を投じていく中でどんどん眼光が鋭くなり、やさぐれていく。

……にしては、加藤シゲアキ演じるゼロはサワヤカ&のんびりしすぎているのだ。

これは初回を30分拡大スペシャルにしてしまったせいかも知れないが、謎解きに時間をかけすぎなのも気になる。

原作では数ページで「サイコロの目を当てるゲームではない」という「鉄球サークル」の本質を見抜いていたのに、ドラマ版では延々と迷い、悩んでいる描写が続く。

「何だ、何が狙いだ?」
「それは〜……落ちてみないと分かりません」
「でも〜……これしかないと思うんです。たぶん」

とかなんとか、眠たいことを言っているゼロは、「あんまり頭良くないのかなー?」としか思えない。

また、数式が宙に浮いて考えをまとめるという映像演出も余計。

おそらく福山雅治主演のドラマ『ガリレオ』のような、「数学の天才・ゼロがズバズバ謎を解き明かしていきまっせー」的演出なんだろうけど、「鉄球サークル」は直感でスパーンと解き明かすべきゲーム。何をウダウダ計算しているんだと。

ドラマオリジナルの口癖として設定されている「すみません、落ちます(ログアウトします)」も、いまいちピンとこない使われ方をしているし、全体的にドラマ独自の味付けをしようとして、空回っている印象だ。


どうもゼロを「命知らずのギャンブル狂」というよりは、勝負に勝ってお金を手に入れ、世直しをしようとする正義の味方……的なキャラ付けにしたいみたいだけど、そういうヒューマニズム、いらないから!

ついでに行っちゃうと、福本原作だからって、何かというと「ざわざわ……」音がするという演出は、もうやめてもいいんじゃないだろうか。

雰囲気を盛り上げるのに効果的とも思わないし、今さら原作ファンも喜ばないだろう。

福本先生、連載再開を待ってます!


ゼロのキャラクターと、天才っぷりを見せつけるための演出手法には違和感があったものの、このドラマの真の主役は変態的な殺人ゲームだ。

今後、どこまで思い切って頭のおかしいゲームを実写化してくれるのかに期待したい。

原作は連載が途中で止まったままで、在全の後継者争いもちゃんと決着がついていないので、ドラマでどんな結末が用意されているのかも気になるところだ。

……というか、『アカギ』の連載も終わったことだし、今回のドラマ化に乗じて、そろそろ連載再開してもらいたいんですけど、福本先生!
(イラストと文/北村ヂン)

【配信サイト】
Hulu
日テレオンデマンド
TVer

『ゼロ 一獲千金ゲーム』(日本テレビ系列)
原作:福本伸行『賭博覇王伝 零』(KCデラックス 週刊少年マガジン刊)
脚本:小原信治
演出:丸谷俊平
主題歌:NEWS「生きろ」(ジャニーズ・エンタテイメント)
チーフプロデューサー:福士睦
プロデューサー:櫨山裕子、秋元孝之
制作協力:オフィスクレッシェンド
製作著作:日本テレビ
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