10月8日にスタートした2018年最後の月9は、アメリカで大ヒットした「SUITS/スーツ」のリメイク版。織田裕二と鈴木保奈美の「東京ラブストーリー」タッグ、Hey! Say! JUMPの中島裕翔、新木優子、國村隼、小手伸也、映画「カメラを止めるな!」の濱津隆之など、なかなかに楽しげな役者が揃っている。


日本でもヒット済みで面白さが約束されているストーリーに加え、経験豊富な役者陣が揃っただけあり、1話の視聴率はなんと14.2%。これは、月9としては昨年「コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命 3rd season」の16.3%、それ以前だと2015年1月期の「デート」14.8%以来の高視聴率だ。そんな超好スタートを切った「SUITS/スーツ」を見た率直な感想は、「アメリカのドラマみたい」だった。
月9「SUITS」を観ました、すっごくアメリカのドラマみたいだったです。中島裕翔くんが気になります
イラスト/Morimori no moRi

アメリカ吹き替えみたいなセリフ回し


日本四大弁護士事務所のひとつ「幸村・上杉法律事務所」に所属する敏腕弁護士・甲斐正午(織田裕二)。東大入学後にハーバード大学に留学したエリート中のエリートの甲斐は、犯罪ギリギリ、ときに犯罪行為も厭わないクセもの弁護士でもあった。一方の鈴木大貴(中島裕翔)は、1度見た物を忘れない完全記憶能力を持つ天才。しかし、悪友と一緒に過去にあやまちを犯したことで、フリーターに甘んじる日々を送っていた。
ひょんなところから大貴と出会った甲斐は、大貴を自分の手駒にするため、経歴詐称させ、自分の部下の弁護士として雇う。

甲斐「仲間意識で満たされたいなら猿山なんてどうだ?自慢の裸を存分披露できるぞ」

例えば上記のセリフ。たぶん観た人間全員が感じたと思うが、とにかく登場人物のアメリカ感がすごい。表情の作り方、身振り手振りのジェスチャー、セリフそのものまで、まるで吹き替え版のような演技を役者たちは行っている。織田裕二の「う〜ん」や「あぁ」という相づちは、完全に「uhmm」に「ah」。ライバル的立ち位置の小手伸也(蟹江役)に至っては、ロバート・デ・ニーロのモノマネでお馴染みの元どーよのテルのようだ。


大袈裟な演技がわりとハマッてる


それでも織田裕二は、「IQ246〜華麗なる事件簿〜」など、わりとエキセントリックなキャラクターを演じているため、なかなかに堂に入った感じ。それにつられてか、若干の面白雰囲気は拭いきれないが、他の役者陣も演技を楽しんでいる印象。慣れれば違和感なく観られそうだ。

なにせ出てくる人物全てが、ハーバード大学卒だの、人心掌握に長ける秀才美女だの、AIビジネスで70億もの巨額を動かす社長だの、一般人とは言いがたいキャラ設定だ。少しくらい演じ方がぶっ飛んでいたって問題がない。そもそもリアリティがないのだから。


ただ、1つ気になるのは中島裕翔演じる大貴の存在。天才や別人へのなりすましなど、仰々しい設定を多く抱え込んでいるため、こういった大きな演技をしてもハマりやすいキャラかと思ったのだが、実際はそうでもなさそう。天才ながらに、腐れ縁の悪友・谷元遊星(磯村勇斗)に振り回されたり、おばあちゃん思いだったりと、1番普通っぽい面を持っている。つまり、外国人の吹き替えのような演技と、日本人らしい心の機微を表現する演技の両立をさせないといけないのだ。1話の時点では上手にこなしていたように見えたので、今後も頑張って欲しい。

ただ、真琴(新木優子)を初対面で軽い口調で口説く演出はどうなんだろう?

「君みたいなキレイな人と働けて嬉しいよ」

アメリカではこのセリフを言っても普通なのかもしれないが、日本人でこれを言っちゃうと、どうしても軽い男になってしまう。
中島裕翔がガチのイケメンだけに、心優しくておばあちゃん思いのお人好しキャラがブレてしまう。

ストーリー的に第1話は、キャラ紹介も兼ねて様々なことが重なりキレイに収まった印象。これから演技同様に事件や仕掛けもどんどん派手になってくれれば、気軽に楽しく観られる作品になりそうだ。

(沢野奈津夫)

「SUITS/スーツ」
月曜 21:00〜21:54 フジテレビ系
キャスト:織田裕二、中島裕翔、新木優子、中村アン、今田美桜、國村隼、小手伸也、鈴木保奈美など
脚本:池上純哉
演出:土方政人、石井祐介
主題歌:B'z「WOLF」
U-NEXTにて配信中