桜田大臣を選んでしまう“愚民主主義”
公式サイトより

当選回数が多いのに、政治家としての能力が低過ぎて、なかなか大臣の座にありつけないと噂されていた衆議院議員(千葉8区)の桜田義孝氏。2018年10月の第四次安倍内閣改造で、ようやくオリンピック・パラリンピック担当相を仰せつかったのに、早速その無能っぷりを発揮し、国会やワイドショーを驚愕させています。


答弁であまりに言い間違えが酷く、一言答えるのに常に官僚のサポートを受け続けて、ダラダラと冷や汗をかき続けて、記者の質問にも「承知していない」と繰り返す。また、野党第一党の党首も務めたことにある蓮舫氏の名前も誤って認識していたり、しどろもどろな答弁への釈明として「事前通告が無かった」と虚偽の言い逃れ。その様子は動画で見ると圧巻です。

同じく無能力過ぎる大臣として金田勝年元法務大臣(2016年8月~2017年8月)が注目されたことがありましたが、桜田大臣は彼と同等、もしくはそれを上回るレベルと言われるほどの無能力っぷりを発揮しており、開いた口が塞がらない人も多いことでしょう。

質問をした蓮舫議員に対して、「揚げ足取りだ!」のように責める人もいるようですが、野党議員は任命された大臣に資質があるか否かを国民の前で明らかにすることも仕事のうちですし、そもそもこれまで蓮舫議員の質問に対して対処できた大臣も多いわけですから、蓮舫議員の問題ではなく完全に桜田大臣の問題です。

PCを使ったことがないサイバー担当大臣が爆誕


さらに14日の衆議院内閣委員会では、桜田大臣はサイバー担当大臣で、今国会で審議予定のサイバーセキュリティー基本法改正案の担当閣僚にもかかわらず、これまでパソコンを自分で使用したことがない事実を明かし、一層世間を震撼させています。USBメモリーすら知らないようです。確かに計画が無くとも優秀なジェネラリストであれば対応できるかもしれないですが、少なくとも彼は優秀なジェネラリストには一切見えません。

以前、経団連会長の執務室に初めてPCが導入され、初めて部下にメールで指示が行くようになった話でも、日本経済界の時代遅れぶりに対してネット上で呆れる声が噴出し、この連載でも記事にしましたが、「原始人が現代人を支配している国」というのは財界以上に政治の世界は激しいのでしょう。

「常に従業員、秘書に指示をしてやっている」と答えた桜田氏ですが、これまでの部下たちは散々「ペーパーハラスメント」に遭ってきたに違いありません。改めて日本のICT化は、彼等のようなアナログ権力者が邪魔をしている構図にあるからなかなか進まないのだとつくづく思い知らされます。


能力のない国民が能力のない政治家を選ぶ「愚民主主義」


これに対して、野党やマスコミは、桜田大臣の酷さを今後さらに追及して行くのだと思いますが、桜田大臣に限らず、どう考えても優秀な中学生に答弁させたほうがマシに思える人材が定期的に輩出される実態を考えると、彼等個人の資質の問題よりも政治システムそのものの欠陥と捉えるべきではないでしょうか? 

野党はおそらく安倍首相の任命責任も訴えると思います。確かに「適材適所」ではなく「不適材不適所」であり、安倍首相の任命責任も大いにありますが、それ以前に能力のない人材を当選させてしまう国民の責任だとも思うのです。桜田氏の華々しい登場は、能力のない国民が能力のない政治家を選ぶという「無能力主義」「愚民主主義」の結果として表出した氷山の一角でしかありません。


桜田氏は柏市議会議員や千葉県議会議員を経て、国会議員になるキャリアを歩んでいますが、柏市議会議員や千葉県議会議員にもおそらく桜田氏よりも仕事がこなせる議員がいるはずだと思います。

ですが、そういう彼等ではなく、桜田氏のような人物が有権者の支持を得て7回も当選を繰り返し、国全体をハンドリングする重要なポジションを就くキャリアに歩みを進めることができてしまったわけで、政治家のキャリアパスに大きな欠陥があることは間違いないでしょう。「右傾化」「保守化」と言われて久しいですが、それらの言葉では表せないような「無能化」という現象が政治の世界に起こっているようにすら感じるのです。

にもかかわらず、その構造的欠陥を指摘したり、俯瞰的に捉えるマスコミは少なく、ただ桜田氏個人の問題として扱い、言及しても安倍首相の任命責任に触れる程度だと考えられます。結局、根本的な原因である構造そのものは放置され続けるわけで、今後もポスト桜田を続々と生み出し続ける日本の政治システムは健在です。


都市部に進行するシルバーデモクラシー


また、桜田氏が千葉8区(柏市や我孫子市)選出の議員という点も注目するべきだと思います。金田元法相は秋田2区の選出であり、地元の利権等が大きく絡み、私たち一般有権者には見えないようなパワーゲームの中で、地元民にとって何かしらの“成果”をあげているがゆえに当選を繰り返しているに違いないと考えることもできました。

ところが、桜田氏のお膝元である柏市は人口42万人を要する中核市です。勤労者が大半を占める都市部においても、このような時代錯誤で無能力の議員を輩出し続けてしまう現状は、単なる地方と都市部の利害の不一致という問題を越え、能力軸とは異なる謎の力学で動くシルバーデモクラシーが都市部にも進行しているフェーズに来ていることを如実に表しているように思います。

以上、桜田大臣を生み出す構造の問題に今回は焦点を当てましたが、「上司や社長が無能過ぎて辛い」という話は私たちの周りでもたくさん転がっています。それは競争環境が歪んでおり、資本主義や市場経済がまともに機能していない証です。転職ができる業界であれば転職という手段もあるのかもしれないですが、なかなかそうも行きません。
まして、“転国”はそうやすやすとできるものではありませんので、政治家の無能は死活問題です。

確かに絶望的な気持ちにもなりますが、「自分たちの世代からは将来あんな老害を生み出してはいけない!」と心に決め、まずは私たちがしっかりと他人を評価する目を養い、身近に存在する歪んだキャリアパスには徹底的に非難し、正常に機能する政治や経済を目指すことを心掛けて行きたいものです。
(勝部元気)
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