『黄昏流星群〜人生折り返し、恋をした〜』(フジテレビ系・木曜22:00〜)第7話。
入院中にやって来た友人・須藤武史(岡田浩暉)の「別れた家族との思い出の品を倉庫で預かって欲しい」という頼みから、「捨てるに捨てられない想い出の品を預かる」という新規事業をひらめいた瀧沢完治(佐々木蔵之介)。


銀行から出向させられて以降、仕事をやってるんだかやってないんだか状態だったのに、いきなり仕事に燃える。
恐怖「黄昏流星群」パンを焼き続ける中山美穂、3人家族で2週間はもつ量だ…心の闇がパンの数に現れた7話
イラストと文/北村ヂン

このドラマは何だ? 『下町ロケット』か?


誰からも相手にされていなかった新規事業が、たったひとりでビラ配りをしたり(地道にもほどがあるなー)、ヒャダイン演じる、異常にチャラいけどハートフルなIT社長の協力を得たりして、じょじょに評判を呼び、社員たちも協力してくれるようになり、成功を収める……というビジネスドラマを見せられて、脳が混乱。

これ、何のドラマだったっけ? 『下町ロケット』?

かと思いきや、夜まで残業しつつ目黒栞(黒木瞳)と逢い引き。不倫ドラマとしてのプライドも忘れていなかった!

それにしても、客から預けられた思い出の品を見ながら、「娘の運動会では……」とか「妻が撮った写真が……」と、不倫相手にペラペラしゃべる完治はデリカシーがなさすぎる。

ただでさえ栞は、完治の娘・美咲(石川恋)から「父と別れてください」と言われたばかりで心が弱ってる状態。いや、そうじゃなくても不倫相手に家族の話するってダメだろ。

そもそも完治、不倫にズブズブにハマって「アナタの力になりたいんです!」とか言ってるわりには、自分の家庭を壊す気は皆無なところが気になっていた。


当然のようにデートを繰り返し、栞の自宅に泊まったりしているのに、妻と別れる気があるんだかないんだか、そういう話題は絶対に出さない。

……というか、裏で美咲と「いつかきちんとする」なんて約束している鬼畜っぷりなのだ。

心の闇の深さを「パンの数」で表現


一方、どんどんノイローゼっぽくなっているのが、完治の妻・真璃子(中山美穂)。

夫は突然の外泊、娘はポーチの中に避妊具を隠し持っていたということから、ふたりが不倫をしていると確信。

娘から「残業だ」とメールをもらっても、夫から「今日も遅くなる」と言われても、「……とか言ってるけど、こいつら不倫してるんじゃ!?」と疑心暗鬼に。

それでいながら、ちょいちょい娘の婚約者・日野春輝(藤井流星)とのドキドキシーンを思い出してうっとりしているという、不倫が許せないのか、自分も不倫したいのかよく分からない状態なのだ。

色んな意味で不倫妄想に脳を支配されてしまった真璃子は、「だめだ、何かしてなきゃ」ということで狂ったようにパンを焼きはじめる。


それはいいけど、量が尋常じゃない。3人家族だったら2週間はもつんじゃないかという大量のパンが完成!

心の闇の深さを「パンの数」で表現するとは斬新な演出だ。

さらに、美咲に不倫を問いただした際、

「お父さん(完治)が浮気してるの知ってるんだよね!?」
「なんでお父さんをつなぎとめる努力をしないの!?」

と逆ギレされて実行した「つなぎとめる努力」の方法も、「完治の会社にパンを持って差し入れに行く」というもの。

どうしちゃったんだ、突然のパン推し。

しかしそこで、残業といいつつ「きれいな月!(「I love you」のメタファーか!?)」とか言ってイチャイチャしている完治と栞の姿を見てしまうのだ。

ババン! ちゃーらー……と、人でも殺すのかと思うようなサスペンスな音楽が鳴り響く。


このドラマ、以前から、挿入歌やBGMがやたらドラマチックに使われているなとは思っていたが、今回はそれにしても過剰!

完治が栞の家を訪ねていった際、栞がいなくなっていると知った時にもズガガーン!(雷の音?)ここまで分かりやすく、漫画の擬音みたいな効果音を入れなくても……。

ドラマの撮影自体は放送開始前に終わってしまっているため、視聴率が振るわなくても編集をいじくるくらいしかテコ入れする方法がない。

だったらBGMでとにかく盛り上げるぞ! ……とかいう方針じゃないとは思うが!?

春輝が相変わらずホラー!


とにかく、夫も娘も信じられない状態となってしまった真璃子にとって心の支えは娘の婚約者・春輝のみ。

ノイローゼな真璃子に対して、春輝の方は相変わらずサイコパス!

「美咲のいない時に、電話かけて来ないでください」

と言われていたにも関わらず、

「今、お宅のそばに来ています。美咲ちゃんを送ってきました」

と、美咲をダシにつかって電話をかけてきた春輝。それなのに、ホントは美咲なんていないってホラーだよ!

真璃子は真璃子で、

「ちょうどよかった、パンを作り過ぎちゃったの。よかったらお土産に持って帰ってくれる?」

なーんて口実で自宅に寄ることをオッケー。
でたー、パン伏線回収!

玄関先で「美咲は?」と聞く真璃子を完無視して「真璃子さんが作ったんですか?」「(パンを)すぐに食べたいな〜」とたたみかけ、ゴーインにデートに持ち込むサイコパス・春輝!

観覧車に乗るわ、ジェットコースターに乗るわ、コーヒーカップに乗るわ……。しかしこのシーンがまた、変なCG合成で笑ってしまった。

観覧車の背景や、ジェットコースターに乗っている様子を撮影するのって、そんなに難しいのか?

コーヒーカップのシーンはCGではなさそうだったものの、スローシャッター&顔面固定で背景がグルングルン回るという最近お見かけしない演出。

こんな映像、どこかで見た記憶が……と思ったら、アレだ。ドラマ『十年愛』で、ぶっ壊れて高速回転するメリーゴーランドに大江千里がしがみついているシーンだ!(その後、遠心力で吹っ飛ばされて死)


両親が不倫にズッポシハマっている中、娘・美咲は、不倫相手の教授がロンドンの大学に行ってしまうということもあり、

「ちょうどいいよね、これで心置きなく前に進める」

と、若者らしく気持ちを切りかえ、春輝との結婚に前向きになっている様子。

結納も済ませてあとは結婚式……と思ったら、突然「先生とロンドンに行きます」という置き手紙を残して失踪!

ズオーン! ジャンジャカジャンジャカ!(またか)

今夜から「運命の恋は最終章へ──」ということらしいけど、3組とも「運命の恋」とは思えないままだし、もはや誰も幸せになれそうもない瀧沢家。


原作を読んでいても、内容が変わりすぎていて、どんな結末になるのかまったく予想できないぞ!
(イラストと文/北村ヂン)

【配信サイト】
FOD

TVer

『黄昏流星群〜人生折り返し、恋をした〜』(フジテレビ)
原作:弘兼憲史『黄昏流星群』(小学館刊)
脚本:浅野妙子
演出:平野眞、林徹、森脇智延
主題歌:平井堅「half on me」(アリオラジャパン)
音楽:得田真裕
チーフプロデューサー:高田雄貴 (フジテレビ)
製作著作:フジテレビ