TBS日曜劇場『グッドワイフ』(公式)、3月10日第9話「堕ちた正義」。
第8話「裏切り者」から、原作のアメリカ版とはまったく違う展開になってきた。

一話完結パートもなく、壮一郎の裁判へと突入である。
「グッドワイフ」揃いも揃ってボンクラどもの裏切り者探しに期待できるのか?最終章
イラストと文/米光一成

壮一郎は本当にやってないのか?


二度、「ええええー」と声を上げて驚いた。
まず遠山亜紀だ。
「私とご主人の間には何もありません」と亜紀が言い出す。
取材を口実に呼び出して、薬を使ってそういうことがあったと思い込ませたのだ、と。
歩きながら眠りそうな壮一郎を亜紀がホテルに連れ込む映像が挟み込まれる。
これが事実なら、壮一郎は、なぜ、不倫してないと言わなかったのだろうか。

歩いているうちに歩けなくなるほど眠くなるなんてことは異変だ。
薬を使われたと気づくだろう。
気づかなくとも、翌日、自分がやったかやってないか分からないほど、壮一郎は馬鹿ではないだろう。
にもかかわらず、不倫してないと言わなかったのは何故だろうか。
妻にすら「記憶にない」と言わなかったのだ。
こんなに矛盾だらけの弁解を信じるほど、杏子は馬鹿ではない。

クレバーなキャラクターとして描かれている。
だが、亜紀の発言を杏子はなぜか簡単に信じていしまうのだ。
亜紀が良心の呵責に耐えかねて、もしくは壮一郎をかばって「なかった」と言った可能性すら検証しない。
「あなたは被害者でしょ」
と、一転して壮一郎に同情的になる杏子。
「ぼくの脇が甘かったんだ」
脇が甘いのは壮一郎ではなく、物語の展開だ。
ふたりが、物語の操り人形にしか見えなくなる。


多田が証拠を捏造する意味があるのか


もうひとつ。
ラスト近く。
官房副長官・南原次郎(三遊亭円楽)の汚職に関する秘密文書を苦労の末、手に入れる。
だが、佐々木達也が文書は偽物だと言い出すのだ。
「事務局長から本物を受け取った多田先生が中身を改竄して持ってきたか」
なぜ、そんな考えにいたったのか。
「多田先生は奥様に特別な感情をお持ちですよね。蓮見さんの無実が証明されて、奥様との仲が修復するのを妨害したいと思っても不思議ではない」
えええー!
他でもない小泉孝太郎が、「いまなら内部告発ですむ」と脅して手に入れた資料だ。

もし、夫婦仲が修復するのを妨害したいのなら、手に入れなければいいだけだ。
手に入れたあとに後悔したのなら、入手できなかったと言えばいいだけだ。
事実、多田は一度、そう言っている。それをひるがえす必要はない。
わざわざ証拠を捏造する理由は、まったくないのだ。
捏造すれば、裁判でバレてしまう。

捏造した多田は、弁護士資格を剥奪される。
杏子も身内から捏造書類を渡されたとなれば大恥だ。
そんなことになれば、杏子どころか多田だって事務所にはいられない。
杏子と壮一郎うんぬんは関係なく、杏子と多田の仲は決定的に破綻だ。
壮一郎は復帰できないが、多田も杏子は事務所に残ることはできない。
“奥様に特別な感情をお持ち”であれば、証拠を捏造するのは、もっともありえない選択だ。

そもそも弁護士としてありえない。
証拠を捏造することを軽く考えすぎである。
まあ、そんな推理をする馬鹿はいないだろう。
だが、この佐々木の珍妙な発案に、壮一郎が賛同してしまう。
杏子も一度は異を唱えるだけで賛同してしまう。

裏切り者を予想してみるが


主要キャラクターたちが物語の都合で矛盾した行動をとりはじめた。
必死な思いで手に入れた書類を検証もせず、使わないと決めてしまうことに疑問を抱かないようなボンクラどもなら、何をやったって不思議はない。
デタラメな行動原理で動いているのだがら、誰だって裏切り者になりえる。

だが、一応予想しておく。
多田が受け取った書類のテープが、壮一郎に渡すときに貼り方が変わってるのは伏線だろうか。
多田は受け取った書類と違う書類を渡している。
「奥様との仲が修復するのを妨害したい」わけではなく、佐々木が裏切り者だと気づいた二人の策略だ。
二重スパイの佐々木に、まんまと書類を手に入れたと思わせたいがための演技。
なので真の書類は多田と壮一郎がちゃんと持っていて、裁判で提出されるのだ。
というのが、いちばん頭を使わずに考えた場合の顛末で、さすがにここまでミエミエの展開はないだろう。
ワクワクできる予想外の展開が繰り広げられることを期待する。

ちなみに
第7話の予告編で「敵は誰だ」
第8話の予告編で「裏切り者がいる!! それは一体ーーついに真相に辿り着く」
第9話の予告編で「最終章ーー裏切り者、判明!!」
って予告詐欺が続いているので、裏切り者が結局わからないという驚愕の展開もなくはないぞ。

最終章、そこそこの期待で気楽に観ることにします。
アメリカ版グッドワイフは、おもしろいぞー。(テキスト&イラスト:米光一成

日本版:Paraviで配信中TVer最新話配信
アメリカ版:AmazonPrimeで配信中

チーフプロデュース 瀬戸口克陽
プロデュース 東仲恵吾
演出 塚原あゆ子
脚本 篠崎絵里子
主題歌 BUMP OF CHICKEN「Aurora」
制作 CBS Corporation、TBS

蓮見杏子(常盤貴子)
多田征大(小泉孝太郎)
円香みちる(水原希子)
朝飛光太郎(北村匠海)
小宮竹生(野間口徹)
戸梶涼太(中林大樹)
佐竹凛子(末永みゆ)
蓮見隼人(小林喜日)
蓮見綾香(安藤美優)
佐々木達也(滝藤賢一)
蓮見幸枝(高林由紀子)
林幹夫(博多華丸)
神山佳恵(賀来千香子)
脇坂博道(吉田鋼太郎)
蓮見壮一郎(唐沢寿明)
木内幸久(丸山智己)
上森孝明(松尾貴史)
宮前文昭(春海四方)