逆転また逆転の展開を乗りこなして、どうにか落ち着くところに落ち着いた最終回。
蓮見壮一郎(唐沢寿明)が嫉妬に狂って、多田征大(小泉孝太郎)を贈賄容疑で逮捕。

蓮見杏子(常盤貴子)は多田の弁護を務める。
壮一郎・多田征大・杏子のラブラブ三角関係が、ついに法廷で激突である。
だが、多田を追い詰めるふりをして、壮一郎が本当に狙ってたのは、検事正・御手洗(中村育二)だったのだ。

前回第9話のボロボロの展開から少しは持ち直したが、逆転劇のための逆転でストーリーを追うだけになってしまった。
第8話後半から第9話の不自然なダイジェスト展開、最終話の駆け足。
いったいどうしたんだろうと、あれこれ考えてみた。


急遽、1話減らされたのではないか。
もしくは、予定していた後半の拡大版が中止になったのではないか。

「グッドワイフ」は全10話。
初回は25分拡大、第2話は20分拡大。
前半の第1話、第2話は、拡大したためかテンポがゆったりになってしまった。
だが、第9話も最終話は、拡大はなく通常放送54分間。

こっちは拡大すべき内容の密度だったのに。

いわゆる「最終章」の2話が拡大版だったら、ダイジェスト感もなく展開できたのではないか。
常盤貴子の、唐沢寿明の、滝藤賢一の、熱演も、小泉孝太郎と北村匠海の爽やかな演技も、水原希子のクールさも、ドラマをうまく支えて良い作品になったのではないか。

ほんとうに拡大版は予定されていたのか?
そして拡大版が中止になったという推測はどれぐらい信憑性があるのか。
いままでの日曜劇場はどうだったのか検証してみよう。

「グッドワイフ」の1つ前の日曜劇場は「下町ロケット」(2018年)。

池井戸潤原作、阿部寛主演の人気シリーズ第2弾だ。
「下町ロケット」は、全11話。
第10話と最終話が15分拡大版であった。

「ブラックペアン」は、全10話。
嵐・二宮和也主演の医療ドラマ。
第9話は20分拡大、最終話は15分拡大だった。


「99.9 -刑事専門弁護士-SEASON II」は、主演は嵐の松本潤。
全9話、「日曜劇場」の100作目。
最終話は54分拡大の2時間スペシャルだ。

「陸王」、池井戸潤原作、主演は役所広司。
全10話。
最終話は25分拡大だ。


日曜劇場のドラマは、最終話を拡大放送するケースが多い。
だが、すべて拡大放送しているわけではない。
「ごめん、愛してる」と「この世界の片隅に」の2作は、最終話の拡大はない。
この差は何なのか。

最終話付近の拡大放送があるドラマとないドラマの差は、視聴率だ。
「ごめん、愛してる」全10話と「この世界の片隅に」全9話の2作は第1話、第2話はよくても、視聴率が低迷して10%を切っている。

拡大版があったドラマの平均視聴率はどうだったか。
「下町ロケット」 13.6%
「ブラックペアン」 14.3%
「99.9 -刑事専門弁護士-SEASON II」 17.6%
「陸王」16.0%
すべて10%超えだ。
しかも、ドラマ後半戦に行くほど視聴率が伸びているものばかり。

単純に法則化すると、視聴率10%を超えて人気が上がっていれば最終章で拡大版をやるが、視聴率が10%を切っていれば拡大版はやらない。

では「グッドワイフ」はどうだったか。
第1話は10%ちょうどのギリギリ・ライン。
第2話は11.5%と上昇したが、
第3話は9.6%。
以降は、10%を切り続けた。
検証した法則にあてはめると「拡大版はなし」になった。

第8話からの急な展開は、どうにかドラマをまとめあげるための応急処置だったのかもしれない。
40分ちょいでハイテンポの原作を、最初の1、2話は「拡大」のためにダレた展開にしてしまった。
後半は、「あると予想して作っていた拡大」がなくなって、バタバタと終わらせてしまった。
勝手な憶測だが、だとすると現場は悔しかっただろう。
ぼくは、もちろんいち視聴者にすぎないけれど、悔しい。

たった1シーズン、全10話前後なのだから、その間は、腹をくくって、(そもそもリアルタイムじゃなくて後から観る人が増えてきているのだから)視聴率なんか関係なく「拡大版ありやなしや」なんて状態はやめてほしいなーと考える。

原作であるアメリカ版(リドリー・スコット制作総指揮!)の「The Good Wife」は7シーズン全156エピソード、スピンオフ作品の「The Good Fight」まである。
いまシーズン3まで観たのだが、これがめっぽう面白い。日本版「グッドワイフ」が気に入った人も、いまひとつだった人も、ぜひアメリカ版「The Good Wife」ぜひ見てみてください。(テキスト:米光一成
「グッドワイフ」なぜ最終話を拡大版でやらなかったのか。日曜劇場拡大版するしないの法則を検証
「グッド・ワイフ」アメリカ版は7シーズン全156エピソード。ラブコメっぽい展開からめちゃハードな裁判場面まで幅広い楽しさ

『グッド・ワイフ 彼女の評決 シーズン1』(トク選BOX) [DVD]

日本版:Paraviで配信中TVer最新話配信
アメリカ版:AmazonPrimeで配信中

チーフプロデュース 瀬戸口克陽
プロデュース 東仲恵吾
演出 塚原あゆ子
脚本 篠崎絵里子
主題歌 BUMP OF CHICKEN「Aurora」
制作 CBS Corporation、TBS

蓮見杏子(常盤貴子)
多田征大(小泉孝太郎)
円香みちる(水原希子)
朝飛光太郎(北村匠海)
小宮竹生(野間口徹)
戸梶涼太(中林大樹)
佐竹凛子(末永みゆ)
蓮見隼人(小林喜日)
蓮見綾香(安藤美優)
佐々木達也(滝藤賢一)
蓮見幸枝(高林由紀子)
林幹夫(博多華丸)
神山佳恵(賀来千香子)
脇坂博道(吉田鋼太郎)
蓮見壮一郎(唐沢寿明)
真鍋侑介(鈴木拓)
吉野保志(山本圭祐)
情報屋(今井隆文)
斉藤亮二(矢崎まなぶ)