第11話あらすじ
京都・嵐山にある“静嵐寺”で、前頭部から血を流した住職・和田淳雄(阿部達雄)の遺体が発見された。遺体発見と同時に、本堂に安置されていた市指定文化財の仏像がなくなっていることも発覚! 被害者は、仏像を狙った強盗犯と鉢合わせして揉み合いとなり、縁石に頭を打ち付けたものと思われた。
鑑定を始めたマリコたちは、遺体からアウトドア用品などに使われる緑色の繊維片を発見。付近の防犯カメラから緑の衣料品を身に着けた人物の探索を開始すると、緑のリュックを背負ったあやしい男の存在が浮上。足取りを追ったところ、そのリュックの男は事件後、京都観光の定番“保津川下り”に乗船したらしいことがわかる。マリコは川下り船に乗り込み、観光客でにぎわう中で男の痕跡を探ることに。すると、保津川下り〜馬車〜トロッコと、強盗殺人犯とは思えない観光ツアーのような足取りが判明した。
マリコと土門薫(内藤剛志)は、税関検査が緩くなる観光ツアーを犯人が実際に利用し、文化財を海外に持ち出すつもりでは? と推測。犯人が参加中と予想される出港寸前のツアー船のある舞鶴港へ向かった。ツアー客の荷物を非破壊検査器で調べると、炊飯器の中に隠されていた仏像を発見し、同時に犯人も特定した。

暴君マリコにぞんざいな扱いを受ける所長
今回は、上司使いの荒いマリコが所長を連れ回す“マリコ暴走回”だった。手始めは、マリコが嵐山へ向かわせた所長から報告が来た際のやり取りだ。犯人の靴と合致するゲソ痕が見つかったという連絡だった。
「所長、すごいです! そんなことより、早くゲソ痕の微物を持って帰ってきてください。鑑定します!」(マリコ)
「すごいです!」と褒めた直後に「そんなことより……」と言葉を続け、上げては落とすマリコ。所長が「ムカつく」とこぼすのも聞かずに、ものすごい勢いでノートパソコンを閉じる。彼女の暴君は、仕事に打ち込む真面目さゆえだ。
第11話はここからが本番。ゲソ痕から川の砂などの成分が検出されるや、川下り船から痕跡を探ろうとするマリコ。今度は所長とともに船着場へ向かった。しかし、繁忙期のため船は止められない。
マリコ 「大丈夫です。 私たち、川を下りながら鑑定できます」
所長 「……私“たち”!?」
船の床を念入りに見るマリコと所長。所長は「もう、これ科捜研の仕事じゃないよ!」とグチるが、苦労の甲斐あってゲソ痕を見つけ出すことができた。調べるとゲソ痕には馬の草が付着していることが判明。
マリコ 「大丈夫です。 私たち、馬車で走りながら鑑定できます」
所長 「言うと思った!」
マリコが声をかける→所長が嫌がる→構わず拉致る、が絶えずリピートされた今回。犯人が観光ツアーを利用していると睨み、逃すまいと舞鶴港に向かう際のマリコの有無の言わせなさは異常だった。
マリコ 「鑑定道具は持ちましたね?」
所長 「持ちました。……いやいやいやいや! もう、体ボロボロなんだよ。っていうか、なんで君こんなに力強いんだ!?」
マリコ 「所長が必要なんです!」
所長 「ありがとう。いや、そうじゃなくてさ」
東映オフィシャルサイトによると、「所長が必要なんです」の一言は沢口のアドリブだったという。実は、このセリフが後に効いてくる。X線を用い、マリコは観客の手荷物に隠してある仏像を見つけ出した。
「作者の銘の筆跡鑑定の結果、この仏像は盗まれた文化財に間違いない」(所長)
日野の専門は文書鑑定である。だから、いつ仏像を見つけても鑑定できるようマリコは所長を連れ回していたのだ。あんなにうんざりしていた所長も、筆跡鑑定の出番がやって来た途端イキイキしてるし! 同情を集めながら最後の最後でヒーローに躍り出た日野所長と、所長にセンタリングを上げ続けたマリコ。2人の強引でアンバランスなコンビネーションが爆発した11話だった。
それにしても今回、犯人の登場があまりに唐突だった感がある。終盤にチョロっと顔を出す程度で、まぎれもないチョイ役だった。犯人の素性を全く明かさず、単なる小悪党として処理する今回の流れは潔い。川下りや馬車、トロッコを経て事件解決に至る過程は、完全にゲーム感覚だった。犯人を追い詰める際の所長にはコナン感があった。対人間、対犯人というより、謎解きゲームの敵キャラを知恵を駆使して退治した、という後味だったのだ。
マリコの代わりに観光気分を味わうことができた
エンディングは、例によってマリコと土門のツーショットだ。
土門 「お前も少しは観光気分を味わったか?」
マリコ 「何言ってるの、そんな余裕なかったわよ!」
でも、代わりに視聴者が観光気分を味わえた。観ていて、京都に行きたくなった。密かにガイドブック的な性格を兼ねていた今回。ゲーム気分を味わえたし、マリコの暴走はいつも以上にマンガチックだったし、テンポの良さは異常だった。かなり振り切り、割り切った、『科捜研の女』の夏休みバージョンだったように思う。
(寺西ジャジューカ)
木曜ミステリー『科捜研の女』
ゼネラルプロデューサー:関拓也(テレビ朝日)
プロデューサー:藤崎絵三(テレビ朝日)、中尾亜由子(東映)、谷中寿成(東映)
監督:森本浩史、田崎竜太 ほか
脚本:戸田山雅司、櫻井武晴 ほか
制作:テレビ朝日、東映
主題歌:今井美樹「Blue Rain」(ユニバーサル ミュージック/Virgin Music)
※各話、放送後にテレ朝動画にて配信中