倉本聰・脚本「やすらぎの刻~道」(テレビ朝日系・月~金11時30分~)第18週。

先週、しの(清野菜名)と三平(風間晋之介)が再会し接吻……。
という、ものすごくいいところで菊村栄(石坂浩二)の筆が止まってしまった「道」パート。……ということで今週は全編「やすらぎの刻」パートだ(嬉しい!)。
「やすらぎの刻~道」前立腺がん疑惑の石坂浩二、人生の「締め切り」を考える第18週
イラストと文/北村ヂン

前立腺がん疑惑で人生の「締め切り」を意識する


・「やすらぎの郷」の村長面をするようになった桂木夫人(大空眞弓)と、マヤ(加賀まりこ)&お嬢(浅丘ルリ子)のバトル
・菊村に持ち上がった前立腺がん疑惑
・噂話が広まるスピード調査問題

「やすらぎの郷」内では、次から次へととんでもないトラブルが巻き起こり、菊村も当分はシナリオなんて書いている場合じゃなさそう。特に「噂話の広がり方」の調査に、かなりの時間を割かれることにいらだちを見せる。

「こんなアホなことに、残りの時間を無駄に費やしてる暇なんかないのだ」

突然、菊村の亡き妻・律子(風吹ジュン)が現れる。……幽霊がよく登場するドラマだねぇ。

「あとどのぐらい、時間あるのかしらね?」

「名倉さんの話だと前立がんはゆっくり進むらしい」

どこからの依頼も、締め切りもないまま、菊村が自主的に書き続けてきた「道」のシナリオではあるが、前立腺がんの疑いが持ち上がったことで「締め切り」を意識するようになる。人生の「締め切り」だ。

前作「やすらぎの郷」のシナリオ執筆時、倉本聰は「完結前に死んでしまったらどうしよう」という不安と戦いながらペンを進めていたということだが、そんな経験が、このシーンに込められているのかも知れない。

それにしてもこのドラマ、前立腺の話題がよく出てくる。ロクさん(橋爪功)が頻尿に悩まされるようになった原因は前立腺肥大だし、「やすらぎ体操」の作詞・作曲を手がけた中井竜介(中村龍史)も「前立腺と新幹線が豊橋の駅で恋をした」なんて歌を歌っていた。さらに、総集編で登場した菊村の父親の幽霊を演じていた梅宮辰夫は、最近前立腺がんの手術をしたばかりだ。

高齢の男性にとって、それほど前立腺は大きな悩みということだろうか……(シニア視聴者は「あるある」と楽しめるポイントなのか?)。


つけまをディスられた復讐でおもらし作戦を……


はやくシナリオ執筆に戻りたいとやきもきする菊村をよそに、相変わらず老人たちの恐ろしいやり取りが繰り広げられる「やすらぎの郷」。

新入居者がやって来たことによって、さらにトラブルがエスカレートしていく。

今後、台風の目となりそうなのが、元・人気女優の岸井さとみ(水野久美)。マヤやお嬢たちすら閉口させるほどのマシンガントーク。しかも、メチャクチャ毒舌なのだ。

マヤと再開しての第一声が、

「まぁ〜すっかり老けちゃって。アハハハ! ジジイとババアの博覧会だ!」

さらに、お嬢こだわりのメイク法・つけまつげの2枚づけもディスる。

「同じ所に2枚つけるのってかなり古いよ。もう流行らないよ!」

口ではかなわないマヤ&お嬢だったが、別の方法での復讐を計画する。さとみを驚かせて、おしっこをちびらせようという作戦だ。……小学生かよ!

「やすらぎの郷」に住む、元・効果音職人・チン平&特殊効果職人・タニヤンに協力を仰ぎ、さとみの住むコテージに仕掛けをして「四谷怪談」や「番町皿屋敷」のような演出で怖がらせることに。

他人の住居に忍び込んで細工をするだけでもかなりヒドイが、その上、部屋に隠しカメラを仕掛け、マヤ&お嬢は離れた場所から、さとみが驚くところをニヤニヤしながら見守っているのだ。もうプライバシーもクソもない!

計画通り、まんまと失神&失禁させられたさとみを見て、大喜びで乾杯をするマヤ&お嬢。
……おぞましい!

「さすがプロねぇ〜」

「もったいないわね、ああいう職人が働き方改革っていうの? テレビの現場から消えちゃうのはおしいね」

この、トンデモない老人ドッキリのエピソードに、シレッとテレビ局批判をぶっ込んでくるのも倉本聰らしい。

さらなるトラブル必至の「やすらぎの郷」!


週の最後には、つけまつげをディスられただけで、これだけの騒動に発展する「やすらぎの郷」が、さらに大揉めに揉めそうな話が持ち込まれる。

乃木坂テレビの60周年事業として、かつてのスターたちが大挙出演する番組を計画しているというのだ。ついては元・スターたちが集う「やすらぎの郷」の住人にも出演してもらいたいという。

菊村が自主的に書いているだけで、実際にドラマ化される予定はまったくないシナリオに関してさえ、「自分をいい役で出せ」と猛アピールしてくる老人たち。こんなおいしい話を耳にして、揉めないはずがない。

「やすらぎの郷」には、乃木坂テレビのワンマン専務・鬼沢(故人)の元愛人・九重めぐみ(松原智恵子)が入居したばかり。この話も、めぐみがいるから……ということで持ち込まれたものなのだろう。

しかし、めぐみには認知症の気が……。愛人だった鬼沢が死んだことすら覚えていないのだ。さらに、めぐみは桂木夫人派閥にいるということで、マヤ&お嬢とのトラブルも必至!

ドトウのエグイ展開に頭がクラクラしてくる「やすらぎの刻」パート。

どうでもいいけど、この話を持ってきた乃木坂テレビ専務の名前が「石坂兵三」という、石坂浩二の本名+芸名(石坂浩二+武藤兵吉)としか思えないものだったことが気になる。
どういう意図があるのか……?
(イラストと文/北村ヂン)

【配信サイト】
Tver

『やすらぎの刻~道』(テレビ朝日)
作: 倉本聰
演出:藤田明二、阿部雄一、池添博、唐木希浩
主題歌: 中島みゆき「進化樹」「離郷の歌」「慕情」
音楽:島健
チーフプロデューサー:五十嵐文郎(テレビ朝日)
プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日)、服部宣之(テレビ朝日)、山形亮介(角川大映スタジオ)
制作協力:角川大映スタジオ
制作著作:テレビ朝日

【配信サイト】
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『やすらぎの刻~道』(テレビ朝日)
作: 倉本聰
演出:藤田明二、阿部雄一、池添博、唐木希浩
主題歌: 中島みゆき「進化樹」「離郷の歌」「慕情」
音楽:島健
チーフプロデューサー:五十嵐文郎(テレビ朝日)
プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日)、服部宣之(テレビ朝日)、山形亮介(角川大映スタジオ)
制作協力:角川大映スタジオ
制作著作:テレビ朝日
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