連続テレビ小説「なつぞら」 
◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~
「なつぞら」135話。天陽くんの死、朝ドラで登場人物の死はどう描かれてきたか考察

第23週あらすじ「なつよ、天陽くんにさよならを」135話(9月4日・水放送 演出・木村隆志 矢部誠人)視聴記録


「どうかいつまでもお元気で」
「気になったのはじいちゃん。泰樹さん。少し顔つきが……どうかいつまでもお元気で」と「おはよう日本関東版」の高瀬アナは早くも泰樹の今後を気にしていた(今日は、檜山アナも会話に参加)。


さすが朝ドラをよく見ている高瀬アナ。朝ドラでは、主人公に関わりのある人物が亡くなることで主人公の転換を描く。死を使ってドラマを盛り上げることをあざといという見方もあるが、ドラマだし、主人公の人生(半生)を描くものだから、生きているなかで誰しも誰かの死に出会うもの、それがある契機になること経験は大なり小なり味わっていることだ。その死をどう描くかが、作家の仕事である。
「なつぞら」135話。天陽くんの死、朝ドラで登場人物の死はどう描かれてきたか考察

例えば、近年だと、「あさが来た」。主人公あさ(波瑠)のパイオニア精神に多大な影響を与えた人物五代友厚(ディーン・フジオカ)の死は話題になった。
日本をよくするために身を粉にして働き、志半ばで散っていった。彼の寿命を表すかのように砂時計がたびたび映るのが印象的だった。

それから「とと姉ちゃん」では、主人公・常子(高畑充希)の仕事の師匠・花山伊佐次(唐沢寿明)は病に臥せり、常子に雑誌のあとがきを口立てで記録させる。亡くなった場面は見せず、常子はあとから聞かされる。
花山も最後まで仕事に精を出していた。

五代も花山もモチーフになった実在する人物がいて、その人の取り組みがドラマでも描かれていたので、それが役の厚みを底上げする助けになっていた。
もちろん俳優の芝居も人物の偉業に応える熱演だ。北海道で農業をしながら絵を描き続けた神田日勝をモデルにした天陽も、この流れに属する。

身内や恋人ではないながら、強い信頼関係で結ばれた人物の死が主人公の人生を後押しするというパターンで、オリジナルだったのは「半分、青い。」の鈴愛(永野芽郁)の親友・裕子(清野菜名)。東日本大震災に遭いながら最後まで患者と共に生きようとしたというエピソードが描かれた。

身内が亡くなることも多い。「とと姉ちゃん」は最初に父(西島秀俊)が亡くなっている。
「まんぷく」は最初に姉(内田有紀)。「花子とアン」では祖父(石橋蓮司)などが亡くなっている。「わろてんか」では主人公てん(葵わかな)の夫(松坂桃李)が物語の中盤で亡くなるが、幽霊になって週一ペースで登場し、妻を支える斬新な設定となった。「まんぷく」でもそれを踏襲して姉が幽霊(夢、潜在意識の現れ的な解釈)としてたびたび現れた。
「半分、青い。」では主人公の相手役・律(佐藤健)の母(原田知世)との死に際のやりとり(岐阜犬を通したやりとり)が泣けた。エキレビ!の編集長はこれがベスト1だと言う。

「半分、青い。」には「わたしたちは生きてる限りなくし続ける」というセリフがあって、まさに人生を言い尽くしているし、それが朝ドラと言ってもいい。それでも生きていく物語なのだ。

「あさが来た」は夫(玉木宏)も亡くなるのだが、いつ亡くなるか視聴者はやきもき。「マッサン」も主人公マッサン(玉山鉄二)の妻エリー(シャーロット・ケイト・フォックス)が亡くなって涙涙の最終週だった。
「あさが来た」も最終週まで夫との死別を引っ張った。
「まんぷく」も母(松坂慶子)が亡くなるのではないかと心配させた結果、生前葬をするという斬新な展開に。


このように数々の別れが描かれてきた朝ドラ、そのなかでも天陽くん(吉沢亮)となつ(広瀬すず)の死別は名場面になったと思う。
彼の死に目にはなつは会えなかった。葬式にも出ていない。だが、天陽の描いた自画像を見つめて、対話する。
特別で神聖な時間だ。なつは鏡をみるように、天陽と向き合い、自分の本音に気づいていく。
これまで幾度も天陽に、自分の本音に気づかせてもらってきたなつ。きっとこれからも何かあれば天陽と向き合って自分を見つめ直すであろう。

天陽「どうしたんだよ、なっちゃん」
なつ「どうしたはそっちでしょや…」
このやりとりが好きだ。

さて、高瀬アナが心配する泰樹。「なつぞら」でもうひとり描かれるとしたら彼の死であろうか。なにしろもう八十代後半だ。
天陽が死んでもその絵を売らず離農もしない、天陽の愛した畑を子どもたちと守っていくと決意した妻・靖枝(大原櫻子 声が大きく力があった)に優しい声をかける。天陽は大地と共に、人の心と共にある、と。泰樹もまた、十勝のこの大地に生きて……やがて土に帰る覚悟をもっているように感じられた。できればいつまでもお元気で。

【第23週あらすじ「なつよ、天陽くんにさよならを」9月2日・月〜7日・土】 


なつ(広瀬すず)は坂場(中川大志)から「大草原の小さな家」という本を手渡され、これを原作に一緒にテレビ漫画をつくろうと持ちかけられる。東洋動画を辞めるべきか、仲(井浦新)に恩義を感じるなつは思い悩む。その頃、十勝では天陽(吉沢亮)が体調を崩し、入院していた。ある時、病院を抜け出してきた天陽は、徹夜で一枚の絵を描き上げる。心配する靖枝(大原櫻子)に天陽は畑を見てくると言い残し、アトリエを出ていく。夏が過ぎ、優を連れてなつは久しぶりに十勝に帰省する。雪月に立ち寄ったなつは、雪之(安田顕)から天陽が新しくデザインした店の包装紙を見せてもらう。
「なつぞら」135話。天陽くんの死、朝ドラで登場人物の死はどう描かれてきたか考察

136回あらすじ  9月5日・木 放送


十勝へ帰省中のなつ(広瀬すず)は、雪月を訪れ、菓子職人となった雪次郎(山田裕貴)と夕見子(福地桃子)に再会する。娘の優が雪次郎の作った菓子を食べていると、妙子(仙道敦子)やとよ(高畑淳子)も現れ、わいわいと賑やかになり、昔の雪月の雰囲気が戻ってくる。そこへ雪之助(安田顕)が現れ、天陽(吉沢亮)が描いたというあるモノを見せる。天陽がそれに込めた想いを、雪之助は静かに語り出すのだった…。

137回あらすじ  9月6日・金 放送


娘の優の言葉に背中を押されたなつ(広瀬すず)は、すぐに東京にいる坂場(中川大志)に電話をかけ、いつしか坂場から手渡された本をアニメーションにしたいと告げる。そんな時、札幌の放送局で働く明美(鳴海唯)が十勝に帰省し、久しぶりに柴田家で家族が勢ぞろいする。やがて、話題はなつと妹の千遥の話になり、なつは千遥のためにもまだまだアニメーションを辞めてはいけないと改めて心に誓うのだった…。
(木俣冬)

登場人物とキャスト 登場順


奥原なつ 広瀬すず 幼少期 粟野咲莉…主人公。戦争で父母を亡くし、兄と妹と別れ、剛男に連れられて北海道に引き取られてきた。生活を保障してもらう代わりに酪農の手伝いをする。父の描いた家族の絵を大切にもっている。生きるために感情を押し殺してきたが、柴田家、とりわけ泰樹と触れ合うことで、素直に感情を出せるようになっていく。これからは酪農の時代だと考え、十勝農業高校で学んでいる。演劇部に入る。
高校卒業後、アニメーターを目指して東京に出てくる。
佐々岡信哉 工藤阿須加 幼少期 三谷麟太郎…空襲のとき、なつを助ける。孤児院で働きながら勉強している。
柴田剛男 藤木直人…柴田家の婿養子。なつの父の戦友で、戦災孤児となったなつを十勝に連れて来た。妻を「ふじこちゃん」と呼ぶときがある。1955年時点では音問別農協組合で働いている。
柴田富士子 松嶋菜々子…剛男の妻。開拓で苦労してきたので、ひとに優しい。
柴田照男 清原翔(13 回から) 幼少期 岡島遼太郎…柴田家長男。搾乳をさせてもらえない代わりに薪割りを頑張っていたが、なつが来たことを機にようやく搾乳させてもらえた。
柴田夕見子 福地桃子(13回から)幼少期 荒川梨杏…柴田家長女。牛乳嫌い。同い年のなつに嫉妬を覚えたが、剛男に説得されてなつを受け入れる。勉強ばかりして家の手伝いを全然しない。
柴田明美 平尾菜々花(13回から) 幼少期 吉田萌果…柴田家次女。
柴田泰樹 草刈正雄…柴田家当主。頑固者で幼いなつにも容赦なく厳しく接するが、意地悪ではなく、彼の人生哲学に基づいたもの。他人に頼らず己の力で人生を切り拓くことを心情としている。甘いものが好き。
なつをほんとうの家族にしたいと願い、照男と結婚させようとする。
奥原咲太郎 幼少期 渡邉蒼…なつの兄。タップダンスが得意で、米兵にかわいがられていた。孤児院を出て新宿で亜矢美に助けられ、ムーラン・ルージュを経て、浅草の劇場で働いていたが、盗み濡れ衣を着せられ捕まってしまう。
奥原千遥 幼少期 田中乃愛…なつの妹。親戚に引き取られている。

2回
焼け跡にいたおばあさん北林早苗…情にほだされなつたちに食べ物を分ける。演じている北林は朝ドラ第1作め「娘と私」の娘・麻里の少女時代役を演じた。
戸村悠吉小林隆…柴田牧場で働いている。貧しい開拓団の八男に生まれ、幼い頃に奉公に出され、泰樹に世話になった恩を感じて尽している。
戸村菊介音尾琢真…悠吉の息子。嫁募集中。

4回
小畑とよ 高畑淳子…帯広在住。泰樹の昔なじみ。口の減らない元気な人。
小畑雪之助 安田顕…とよの息子。菓子店・雪月の店主。菓子作りに情熱を注ぐ。
小畑妙子 仙道敦子…雪之助の妻。
小畑雪次郎 山田裕貴(13回から登場) 幼少期 吉成翔太郎…雪之助、妙子の長男。十勝農業高校に通っている。演劇部。高校卒業後、川村屋に修業に出る。

5回
山田天陽 吉沢亮 幼少期 荒井雄斗…音問別小学校でなつと同級生になる。東京からやって来た。馬が好き。農業をしながら絵を描いている。
大作 増田怜雄…音問別小学校の生徒。
実幸 鈴木翼…音問別小学校の生徒。
さち 伍藤はのん…音問別小学校の生徒。
山田正治 戸次重幸…天陽の父。東京から北海道にやって来たが土地が悪く、農業ができず、郵便局で働いている。泰樹の協力を得て、土地を蘇らせる。

8回
山田陽平 (31話から)犬飼貴丈 幼少期 市村涼風…天陽の兄。絵がうまい。東京で芸大に通いながらアニメの美術の仕事をしている。なつに絵画の道具を贈った。東洋動画に就職。

9回
なつの父 内村光良…日本橋で料理人をしていた。絵が上手。家族のことを思いながら戦死した。

10回
花村和子 岩崎ひろみ…音問別小学校の教師。 
校長先生 大塚洋…音問別小学校の校長先生。
山田タミ 小林綾子…天陽の母。

13回
居村良子 富田望生…十勝農業高校の生徒。演劇部に入り衣裳を担当する。「白蛇伝説」のラスト、白蛇として登場し喝采を浴びる。
村松 近江谷太朗…柴田牧場と長い付き合いのあるメーカーの人物。奥様封筒をもってくる。

倉田隆一 柄本佑…十勝農業高校の国語の先生。演劇部の顧問。「魂」が口癖。なつの問題、十勝の伝承を交えて「白蛇伝説」の台本を書く。

14回
田辺政人 宇梶剛士…音問別農協組合組合長。農協で一手に酪農事業をとりまとめ十勝を酪農王国にしたいと考えている。 

19回
門倉努 板橋駿谷 …十勝農業高校の番長。クマとサケを争った逸話をもつ。演劇部に入り、村長役を略奪する。
高木勇二 重岡漠 …十勝農業高校演劇部。メガネ。門倉に役をとられてしまう。
石川和男 長友郁真…十勝農業高校演劇部。
橋上孝三 山下真人…十勝農業高校演劇部。

21回
太田繁吉 ノブ(千鳥)…十勝農業高校の教師。ヤギのチーズは牛より「クセがすごい」と言う。

27回
前島光子 比嘉愛未… 川村屋のマダム
野上健也 近藤芳正… 川村屋のギャルソン
茂木一貞 リリー・フランキー… 角筈屋社長
煙カスミ 戸田恵子… 歌手。クラブメランコリーの看板。ムーラン・ルージュにいた。
三橋佐知子 水谷果穂…川村屋の店員。川村屋社員寮でなつと同室に。咲太郎を「同志」と思っている。
土間レミ子 藤本沙紀…カスミのいるクラブの店員。咲太郎のことが好き。「真心を一晩貸したままだから」返してほしいと思っている。

28回
島貫健太  岩谷健司
ローズマリー  エリザベス・マリー…浅草の踊り子

30回
藤田正士 辻萬長  親分
松井新平 有薗芳記 …浅草の芸人
岸川亜矢美 山口智子 …元ムーランルージュの踊り子。咲太郎を助けた。

31回
下山克己 川島明 …新人アニメーター
仲努 井浦新 … 実力派アニメーター

37回
阿川弥市郎 中原丈雄 … 東京から北海道に移住。彫刻で生計を立てている。
阿川砂良 北乃きい… 弥市郎の娘。

44回
杉本平助 陰山泰… 川村屋の料理長

45回
蘭子 鈴木杏樹… 劇団の女優
虻田登志夫栗原英雄… 劇団の俳優

49回
井戸原昇 小手伸也… 東洋動画アニメーター

55回

森田桃代 伊原六花…仕上げ課の先輩、といっても年齢はなつと同じで19歳。あだ名は「モモッチ」
山根孝雄 ドロンズ石本…仕上げ課のえらい人。
石井富子 梅舟惟永…仕上げ課のベテラン。といってもまだ30歳。
大沢麻子 貫地谷しほり…原画スタッフセカンド。周囲に一目置かれている才能あるアニメーター。
おしゃれしているなつを敵視している。
堀内幸正田村健太郎…動画スタッフ 芸大出身で、線画のきれいさには定評がある。

58回
露木重彦木下ほうか…演出家、第一製作課長
山川周三郎古屋隆太…東洋動画スタジオ所長

66回
泉千恵
岡部たかし
池間夏海


脚本:大森寿美男
演出:木村隆文 田中正ほか
音楽:橋本由香利
キャスト:広瀬すず 松嶋菜々子 藤木直人 岡田将生 比嘉愛未 工藤阿須加 吉沢亮 安田顕 仙道敦子 音尾琢真 戸次重幸 山口智子 柄本佑 小林綾子 高畑淳子 草刈正雄ほか
語り:内村光良
主題歌:スピッツ「優しいあの子」
題字:刈谷仁美
タイトルバック:刈谷仁美  舘野仁美 藤野真里 秋山健太郎 今泉ひろみ 泉津井陽一
アニメーション時代考証:小田部羊一 
アニメーション監修:舘野仁美
アニメーション制作:ササユリ 東映アニメーション

制作統括:磯智明 福岡利武