「スカーレット」2話「なんで人は楽しい思い出だけで生きていけんのやろ」
連続テレビ小説「スカーレット」2話。木俣冬の連続朝ドラレビューでエキレビ!毎日追いかけます

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連続テレビ小説「スカーレット」 
◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~
「スカーレット」2話「なんで人は楽しい思い出だけで生きていけんのやろ」

『連続テレビ小説 スカーレット Part1 (1)』 (NHKドラマ・ガイド)

第1週「はじめまして信楽(しがらき)」2話(10月1日・月 放送 演出・中島由貴)


歴史に残る2019年10月1日
10月1日は都民の日だが、東京以外は無関係。それよりもいよいよ消費税が10%になった。
増税前に、
「スカーレット」のムック本「 NHKドラマガイド スカーレット」( NHK出版)を買っておいた。

朝ドラごとに必ず出版されるガイド本。主な登場人物の役割と俳優のインタビュー、ドラマの舞台裏、豆知識などが載っていて、大体の基礎知識が得られるほか、ドラマの内容ならではの特集があり、今回は、芸術家ジョージ富士川役で出演する西川貴教と、漫画「三成さんは京都を許さない」を描いたさかなこうじの対談がひときわ熱い滋賀愛を放っていた。

「スカーレット」の舞台、焼き物の郷・信楽のある滋賀県甲賀市は三重と京都と隣接している。来年の大河ドラマ「麒麟がくる」の明智光秀ゆかりの地・大津坂本も京都に近い側。そのため人はつい、かつて天皇陛下がいらした京都に目を向けてしまいがちとはいえ、滋賀県も良いとこ。
朝ドラと大河で滋賀県を盛り上げていただきたい。と思うのは、菩提寺が滋賀県にある私の贔屓目である。菅田将暉主演大河ドラマ「井伊直政」の夢は捨ててはいない。

前置きが長くなった。

が、しかし、信楽
舞台になっている信楽。戦後間も無く(昭和22年)の田舎だから、ドラマ上では「信楽」らしい特徴はない。
尾道みたいに坂がいっぱいでもないし、北海道みたいにだだっ広くない。海もない。だから、まず、信楽から遠い見ためにインパクトある琵琶湖を一話で出したのだろう。大阪からはるばるやってきた川原一家は京都経由で琵琶湖をひとめ見たいと思っても無理はない。
辿りついたコタン……ではなく信楽、色味が全体的に茶系で渋い。陶芸家のお話なので、「土」が重要。
「土」がたくさん映っている。狸も茶色い。
主人公・喜美子(川島夕空)ははじめて学校に行く日、本物の狸を追いかけて山中に迷い込み、陶芸家・慶乃川(村上ショージ)と出会う。彼は土の大事さを喜美子に伝えるが、猫に小判のようで……。
ちなみに、グレート義太夫は村上ショージの登場をツイッターで喜んでいた。

「かわいそうでアホな子」
寄り道したため初登校で遅刻した喜美子。
その上、漢字が読めない。
それを「かわいそうでアホな子」と寄ってくる熊谷照子(子役・横溝菜帆)は窯元のお嬢さん。
じぶんよりも弱そうな人に「お友達になってあげてもいい」と言って自己満足に浸るよくいるタイプの富裕層を満足させるような喜美子ではない。毅然と断る。

が、しかし、また悪ガキに絡まれたとき、父(北村一輝)から手を出すなと言われているため、我慢し、ちょうど通りかかった照子に助けを求めるようにぎこちなく愛想笑いをしてみるが、無視される。
リアルに考えると強者と弱者の埋まらない格差を描いたものすごくいやな局面だが、照子はやがて喜美子と仲良くなっていくのであろうと思うのであまり気にならない。

ガキ大将に絡まれる時の、エレキギターの劇伴のノリがいい。

「なんで人は楽しい思い出だけで生きていけんのやろ」
第一話で、次女・直子が戦争のトラウマを引きずっていることを描き、そのトラウマの元が、第二話で明かされる。喜美子が空襲から逃げるとき、直子の手を離してしまって、怖い想いをした。結果的に無事に再会できてよかったが、今なお、直子は、喜美子を責め続けていた。幼さゆえの残酷。

もしも直子がこのせいで亡くなっていたり行方不明になっていたりしたら。
「手を離したのは私」と「やすらぎの郷」(倉本聰脚本)の清野菜名演じる脚本家志望の若者が書いた脚本みたいになっているところである。

「楽しいことだけ考える」「嫌なことは全部忘れる」と言う父とは違って、喜美子は“楽しい思い出だけで人は生きられない“ことを幼くして悟っている。

反面教師の父は、大阪の闇市で、やたら人助けに奔走(この人、お人好しなんですね)し、佐藤隆太(演じる、「とんでもない拾い物」こと謎の旅人)に出会う。一話、二話と、誰?という人で次回に引っ張るのは「わろてんか」の初期でも見られた。BKこと大阪局の方法論なのか。大阪局らしいといえば、闇市。大阪局制作の闇市描写はいつだって力が入っている。
大阪の街を表すとき、巨大なグリコ、蟹、ビリケンさん、くいだおれ人形とわかりやすいアイコンで印象付けるようにできているのと似て、記号を取り入れ押し通していく強さがBK朝ドラにはあることを、「スカーレット」を見て再認識した。手始めは手堅く。


脚本:水橋文美枝
演出:中島由貴、左藤譲、鈴木航ほか
音楽:冬野ユミ
キャスト: 戸田恵梨香、北村一輝、富田靖子、桜庭ななみ、福田麻由子、佐藤隆太、大島優子、林 遣都、財前直見、水野美紀、溝端淳平ほか
語り:中條誠子アナウンサー
主題歌:Superfly「フレア」
制作統括:内田ゆき
(木俣冬 タイトルデザイン/まつもとりえこ)