ジョー・ナカジマ(夕輝壽太)と幸子(木下愛華)の恋。
濃すぎるエピソードが盛りだくさんだった今週。敗戦した日本で、それでも生きていかざるを得ない人たちの姿が描かれた。
「どうして抱いてくれないの?」
まずショッキングだったのは、いまだに公平がしのに手を出していなかったということ。
昭和18年に結婚して、今回の初体験を経て、ふたりの実の子ども・リュウが誕生したのが昭和23年。間、戦争やら入院やらがあったとはいえ、正式に結婚してから約4年間も手を出さないというのはよっぽどのことだ。
死んだ三平(風間晋之介)へ義理立てしているのかと思いきや、その理由が「ナニの仕方が分からない」だったとは……。
満蒙開拓団や徴兵などで村の男たちがいなくなり、最年長が公平になっていたということで、年長者から教えてもらう機会も失われてしまったのか。
「どうして抱いてくれないの? あなた 女に興味がないの?」
「お邪魔しま~す」
結局、しのちゃんが自分から布団に入ってきて、初体験を済ませるというドリーム展開。倉本聰の好きそうな、男にとって都合のよすぎる女キャラ、また出たよという感じではあるが、さすがに結婚して4年も手を出してこない公平にしびれを切らせたということだろうか。
「このあとの事は真っ昼間の番組だから、放送倫理上お見せする事はできない」
突然のメタなナレーションにも驚かされた。
時々、未来からの目線で語ることもあって違和感があったものの、ひとまず風間俊介自身の声で語られているので「心の声」なのだとばかり思っていたのだが……。
放送倫理のことまで心配しだしたら、もはや誰なんだ状態だ。
「一つの新しい生命の種が、しのちゃんの体内に種芋より確実に一発で着床し、それが根を張り芽を出していく」
着床まで予言しちゃったよ。
赤線地帯で浅丘ルリ子に遭遇……!
公平の幼なじみであるハゲやニキビの帰国も印象的だった。仲間のひとりだった青っ洟は既に死んでいたが。
国策に踊らされ、満蒙開拓団として満州に渡っていた彼ら。
鼻水が凍り付くような環境で、一日黒パン三個しか与えられず過酷な労働を強いられるラーゲリ。青っ洟の死因も「凍死」という凄絶なものだった。
お互いの生存を確かめ、泣きながら抱き合い、青っ洟の死因を聞いて悲しくて泣き叫ぶ。いい友達だ。
彼らは帰国後、荒廃した村の開拓にいそしむが、しのが再び妊娠している(早い!)という話をきっかけに、ハゲとニキビがまだ童貞だという話に。
結局、公平もふたりに付き合って赤線地帯に行くことになるのだが、そこで出会ったのがモモさん! ロシア兵に襲われ、頭がおかしくなってしまった妹を養うために、身体を売っていたのだ。
国から見捨てられた悲しい姉妹の物語なのだが、浅丘ルリ子の売春婦メイクの衝撃で吹っ飛んでしまう。ある意味、怪奇メイク以上にショッキングだ。
先週も「浅丘ルリ子の加賀まりこの姉妹、何歳設定なの!?」と混乱させられたが、実年齢79歳の浅丘ルリ子にこの役はいくらなんでも……。
「ウメ(妹)にだけはこの事、絶対に言わないで!」と懇願するモモの悲しい事情を汲んで、涙ぐみながら、「そんな事、絶対に誰にも言いません」と答えていた公平。
実の兄が特高警察にしょっぴかれかねない秘密までベラベラしゃべるほど、メチャクチャ口の軽かった公平が大人になったなぁ……。と感慨深いものがあったが、それもこれも浅丘ルリ子ショックで頭に入ってこなかった。
予告編の後、「大下容子ワイド!スクランブル」へのジョイントで、大下さんが本作について一言コメントする受けが楽しみなのだが、この衝撃展開の後で何を言うのかと思いきや、
「そして今、“もったいない”に回帰しています」
アメリカでは壊れたもんは直さないで捨てる、という、その日のだいぶ前半に出てきたエピソードから拾ってきた。……さすがに浅丘ルリ子の件についてはコメントも出てこなかったか!?
僕らの戦争は終わった
徴兵から生きて帰ってきた公一のエピソードもかなり重いものだった。
戦場で人を殺めてしまったことが、かなりのトラウマになっているようで、性格は暗くなり、人を避けるようになって、寝ている時にも奇妙な声を上げてうなされる。
出征する前に、いい仲になっていたクリスチャンの松岡千代(横山めぐみ)とも、「わしはもう、奥さんの前に顔を見せる資格のない人間です」ということで別れてしまったようだ。
モモとウメの姉妹や、公一の、戦争が終わってからも続く苦しみが重い。
それでも昭和25年の初詣で、金属不足のため徴用されていった寺の鐘の代わりに、ハゲやニキビ、公平、そして息子のゴウが「ゴーン」と口で叫んで、「そうして僕らの戦争は終わった」とのこと。これで一段落ついたのだろうか。
(イラストと文/北村ヂン)
【配信サイト】
・Tver
『やすらぎの刻〜道』(テレビ朝日)
作: 倉本聰
演出:藤田明二、阿部雄一、池添博、唐木希浩
主題歌: 中島みゆき「進化樹」「離郷の歌」「慕情」
音楽:島健
チーフプロデューサー:五十嵐文郎(テレビ朝日)
プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日)、服部宣之(テレビ朝日)、山形亮介(角川大映スタジオ)
制作協力:角川大映スタジオ
制作著作:テレビ朝日
【配信サイト】
・Tver
『やすらぎの刻〜道』(テレビ朝日)
作: 倉本聰
演出:藤田明二、阿部雄一、池添博、唐木希浩
主題歌: 中島みゆき「進化樹」「離郷の歌」「慕情」
音楽:島健
チーフプロデューサー:五十嵐文郎(テレビ朝日)
プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日)、服部宣之(テレビ朝日)、山形亮介(角川大映スタジオ)
制作協力:角川大映スタジオ
制作著作:テレビ朝日