かつてのテレビ業界の小道具職人たちが作った偽札を使っての丁半博打。

自民党などが強引に推し進めて成立したIR法案(カジノ法案)へ苦言を呈するためのちょっとしたエピソードなのかと思ったら、今週もガッツリとこの話題。


ハチャメチャな偽札騒動から、認知症、孫への愛と話が展開していく。

どうしてカジノ法案を国会でやってるの?


肖像画の部分が名倉理事長(名高達男)の顔になっている偽札「名倉紙幣」を使った丁半博打は、現金を賭けるわけではないものの、リアルな偽札が老人たちの射幸心に火を付けるのか、「やすらぎの郷」内で一大ブームを巻き起こす。

普段、認知症だなんだと言っている老人たちに、本物そっくりな偽札を持たせたら問題が起こらないはずもなく、案の定、近隣のスーパーとコンビニでこの「名倉紙幣」が使用され、警察沙汰となる。

警察も「まあ、たわいのないいたずらの部類だと思いますが……」なんてのんきなことを言っているが、表面こそ肖像画が入れ換えられているものの、裏面はそのまんま一万円札。思いっきりアウトだよ!

当然、名倉理事長は激怒して、主犯格であるマロ(ミッキー・カーチス)たちを問い詰めるが、

「そんじゃどうしてカジノ法案とか何とかって国会でやってるの? それは人間にはね、賭け事をしたいという本能があるんですよ」

とか何とか言い返されてしまう。

「あくまで冗談」と言い張る老人たちを懲らしめるため、意趣返しで、神奈川県警の署長&OB全面協力で「冗談のガサ入れ」が実行される。

めぐみさん、認知症の上にギャンブル依存症に


「名倉紙幣」を店舗で使用したのは、ここのところ認知症の進行が著しい九重めぐみ(松原智恵子)だった。

付き添いの秀サン(藤竜也)は「めぐみさんの認知症、これ(博打)が治療になっているみたいです」なんて言っていたが、偽札と本物の一万円札を並べて比べても、どっちが本物か分からなくなってしまっているというから相当に深刻だ。


そんな人が偽札を持ち歩いていたら、そりゃあお店で使っちゃうこともあるだろう。

偽札を本物だと認識した上で、100万円の束がバンバン飛び交うような博打にドハマリしているのは、それはそれでヤバイけど。

今週もたびたび引き合いに出されていた「カジノ法案」だが、認知症の上にギャンブル依存症なんてケース、これからの超高齢化社会でドンドン増えそうだ。

手持ちの名倉紙幣がなくなって「銀行でお金を下ろしてこなくっちゃ」と言ったという九重めぐみの話、老人がパチンコ屋で……と置き換えると笑えない。
「やすらぎの刻〜道」偽札で博打に興じる老人が逆ギレ「国会のカジノ法案はどうなんだ」第29週
イラストと文/北村ヂン

どっちの「君の名は」だったのか?


老人たちの賭場にガサ入れが入ると「やすらぎの郷」スタッフ間で噂に。

違法薬物所持で逮捕され、社会復帰として「やすらぎの郷」で働いているお嬢(浅丘ルリ子)の孫・竹芝柳介(関口あなと)は、ホッピー(草刈麻有)にメッセンジャーを頼んで、ガサ入れ情報をお嬢に伝えていた。

柳介、歌舞伎界で甘やかされて育ったボンボンかと思いきや、意外といいヤツだ。


ガサ入れ情報を知ったにもかかわらず、友達であるマヤ(加賀まりこ)たちに教えようともしなかったお嬢はどうかと思うが。

そんな柳介のスマホに、一緒に逮捕され、自殺未遂を起こした元恋人・広中しのぶ(黒川智花)からのメールが届いた。

……が、それをチェックしたのは上司の保安スタッフ・中里(加藤久雅)。社会復帰途中とはいえ、スマホの中身まで監視されてしまうとは(パスワードかけようよ)。そんな環境だったらスマホなんて持ちたくない!

芸能界をあきらめ、地元に帰ることになったから最後に会いたいというメッセージを哀れに思い、中里から相談された菊村栄(石坂浩二)が代わり会いに行くことに。

出身地が長崎だと聞き、原爆にやられ、誰もがダメだと思っていたものの見事に蘇って大きな木になった山王神社のクスノキの話をする菊村。


「命のあるものっていうのはね、何があっても若い頃なら、やる気があるならば、生き返ることってできるものなんだね」

しのぶは、柳介が30歳になる年の正月に、その山王神社のクスノキの下で再会しようと約束していたのだ。

「『君の名は』みたいなお話しでしょ? でも私、本気でその日を信じてます」

しのぶの言った「君の名は」は、数寄屋橋で再会する「君の名は」なのか、階段で再会する新海誠監督の「君の名は。」なのか!?

菊村の方は完全に「君の名は」で認識しているのだろうが、しのぶの方は「君の名は。」のつもりだった……なんて仕掛けだったら相当に手が込んでいるが。

「道」パート平成編に突入


長崎といえば、「道」パートで、根来家を訪れた日系のアメリカ兵ジョー・ナカジマ(夕輝壽太)の祖母も長崎出身だ。

原爆の被害を確認するために公平(風間俊介)の妹・幸子(木下愛華)と一緒に長崎に訪れたという話題が出たところで「道」パートは止まっているが、しのぶの話から創作意欲を刺激され、また執筆に戻るのだろうか。

幸子たちの件といい、「道」パート昭和編にはまだまだ気になることが山積みだが、はやくも平成編に突入するようだ。

清野菜名から風吹ジュン(当初は八千草薫の予定だったわけだが)はまだしも、風間俊介から橋爪功という成長は、間にもうひとりくらい挟まないと成立しないだろうと思っていたが、思った以上に時代が一気に進むのかな?
(イラストと文/北村ヂン)

【配信サイト】
Tver

『やすらぎの刻〜道』(テレビ朝日)
作: 倉本聰
演出:藤田明二、阿部雄一、池添博、唐木希浩
主題歌: 中島みゆき「進化樹」「離郷の歌」「慕情」
音楽:島健
チーフプロデューサー:五十嵐文郎(テレビ朝日)
プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日)、服部宣之(テレビ朝日)、山形亮介(角川大映スタジオ)
制作協力:角川大映スタジオ
制作著作:テレビ朝日

【配信サイト】
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『やすらぎの刻〜道』(テレビ朝日)
作: 倉本聰
演出:藤田明二、阿部雄一、池添博、唐木希浩
主題歌: 中島みゆき「進化樹」「離郷の歌」「慕情」
音楽:島健
チーフプロデューサー:五十嵐文郎(テレビ朝日)
プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日)、服部宣之(テレビ朝日)、山形亮介(角川大映スタジオ)
制作協力:角川大映スタジオ
制作著作:テレビ朝日