倉本聰・脚本「やすらぎの刻〜道」(テレビ朝日系・月〜金11時30分〜)第31週。

本格的にスタートした「道」パートの平成編。


昭和生まれ世代からすると、令和になった今でも「平成=最近」という思い込みが根強いのだが、この平成編では思いっきり懐かしい「平成」が描かれて、「平成ってこんなに昔だった!?」と衝撃を受けた。
「やすらぎの刻〜道」孫の大切にしているマイコン&ゲームを捨てる!平成の公平は厄介な頑固ジジイ第31週
イラストと文/北村ヂン

ゲームを捨てるジジイをどう見るか?


終戦直後から平成元年まで一気に時代がワープ。

ナヨナヨしていた根来公平(風間俊介)は、橋爪功演じるやたらガンコなじいさんに。

逆にハネっかえり娘だったしの(清野菜名)は、風吹ジュン演じる大人の女性に(八千草薫が演じる予定だったという目で見るとしっくりくる)。

結婚当初、「その後、しのとの長い一生の中で尻に敷かれ続けた」なんて言っていたが、今のところ公平の亭主関白に見える。

登場人物も激増した。

昭和編では、三平の遺した子・剛と、公平としのとの間に生まれた竜のふたりしかいなかった子どもが、なんと平成編では子ども6人、孫が12人という大家族に。
さすが「産めよ増やせよ」時代の夫婦、ご立派!

若干、ついていけないくらい増えた登場人物の中で、キーパーソンとなりそうなのが次男・竜(駿河太郎)の息子・翔(菅谷哲也)だ。

引きこもり状態で、ほぼ口もきかずにゲームばっかりやっている(当時の)現代っ子感あふれる翔。平成元年の時点で16歳ということは、今は46歳くらいか。

当然のごとく、山梨の山奥からはじめて東京に出てきたじーちゃんばーちゃん(公平としの)とは、まったくソリが合わない。

自分が高校生の頃のことを考えれば、「ワシが16の頃は軍隊に入る準備で……」とか「土いじったことあるのか?」なんて説教くさいことを言い出すじいちゃん、どう考えてもイヤだ。

その上、翔が引きこもっているのはゲームや漫画のせいだと考えた公平は、翔の留守中に勝手に部屋へ入り込み、それらをバンバン捨ててしまう。


これを「引きこもりの孫を叩き直すため、毅然とした態度を取るじいちゃん」と見るか、「クレイジーなジジイにコレクションを丸ごと捨てられてしまった気の毒な孫」と見るか、世代によって感想が変わってきそうだ。

倉本聰的には当然、前者を想定して書いているのだろうけど、翔寄りの世代から言わせてもらうと……ちょっと許すことのできないレベルの暴挙。

しかも捨てていたゲームというのがファミコンとかじゃなくて、PC-9801(マイコン)本体&ソフトという、メチャクチャ高そうな代物。もう刃傷沙汰になっててもおかしくないよ!

息子たちは清里ブームに乗っかったが……


ゲームを捨ててスッキリした気持ちで山梨に帰った公平たちだったが、田舎は田舎で不穏な空気が。

公平たちと同居している四男・圭(山村憲之介)の夫婦は農協からガンガン金を借りて新しい農機具や家電を買いまくり、家まで新築するという。

さらに長男・剛(田中哲司)も、「あそこらの土地、今買っとくと儲かるぞ」ということで、不動産投資に手を出そうとしていた。まさにバブル景気!

昭和には戦争に翻弄されてきた根来家だが、平成ではバブルに翻弄されそうでイヤな予感しかない。


……が、清里駅前に喫茶店をオープンした剛と圭は、ブームに上手いこと乗れたようだ。

バブル期の清里といえば、ビートたけしの「北野印度会社」、梅宮辰夫の「梅宮辰夫漬物本舗」、さらに田代まさしの「マーシーズ」などのタレントショップが建ち並び、「高原の原宿」なんて言われていたトレンディなスポット。剛たちも相当ボロ儲けしたんじゃないだろうか。

ただ、最盛期には坪500万円とも言われていた清里駅前の土地も、バブル崩壊を経て、現在では坪3万円程度にまで暴落しているという。痛い目を見ないうちに撤退できるといいが。

平成編の冒頭で、街頭ビジョンの中の男たちがこんなことを叫んでいた。


「もっと使わせろ! もっと捨てさせろ! 無駄遣いさせろ! 季節を忘れさせろ! 流行遅れにさせろ!」

大量生産・大量消費・大量廃棄の時代。

一方、公平は「農業は商業と違う。自分で耕して自分で収穫して、自分らが食えりゃあそれでいいのよ」と言っている。

バブルの狂騒に踊りまくる息子たちと対照的に、ひっそりと田舎生活を送る公平たちを描くことで、バブル期以降、現在に至るまで、色々とおかしくなってしまった日本へのアンチテーゼとする意図がありそうだ。

だとすると、翔のゲームを大量廃棄しちゃうのは矛盾していると思うけど。

「北の国から」再び!?


さて次週は、翔が公平たちの住む小野ヶ沢にやって来て一緒に暮らすことになるようだ(マイコン&ゲームを捨てたジジイなんて一生会いたくないと思うが)。


都会っ子が僻地に移住し、自然と触れあって変わっていくというのは倉本聰の代表作「北の国から」にも通じるテーマだ。

しかし翔を演じている菅谷哲也(「テラスハウス」のてっちゃん!)、顔が老けすぎていてまったく高校生に見えない(実年齢26歳だから無理もないが)。今後、成長していくのを想定してのキャスティングだとは思うけど……。

こう考えると実年齢36歳なのに、13歳を演じてもあまり違和感がなかった風間俊介は偉大だった。清野菜名ともども、平成編では出番がなさそうなのが残念だ。
(イラストと文/北村ヂン)

【配信サイト】
Tver

『やすらぎの刻〜道』(テレビ朝日)
作: 倉本聰
演出:藤田明二、阿部雄一、池添博、唐木希浩
主題歌: 中島みゆき「進化樹」「離郷の歌」「慕情」
音楽:島健
チーフプロデューサー:五十嵐文郎(テレビ朝日)
プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日)、服部宣之(テレビ朝日)、山形亮介(角川大映スタジオ)
制作協力:角川大映スタジオ
制作著作:テレビ朝日

【配信サイト】
Tver

『やすらぎの刻〜道』(テレビ朝日)
作: 倉本聰
演出:藤田明二、阿部雄一、池添博、唐木希浩
主題歌: 中島みゆき「進化樹」「離郷の歌」「慕情」
音楽:島健
チーフプロデューサー:五十嵐文郎(テレビ朝日)
プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日)、服部宣之(テレビ朝日)、山形亮介(角川大映スタジオ)
制作協力:角川大映スタジオ
制作著作:テレビ朝日