倉本聰・脚本「やすらぎの刻~道」(テレビ朝日系・月~金11時30分~)第25週。

オネエ言葉のメイクアップアーティスト・リュウ(山下真司)がやって来たことから「やすらぎの郷」に特殊メイクブームが巻き起こる。

「やすらぎの刻~道」恐怖!? 怪奇メイクの老婆たちがワイドショーを撃退!第25週
イラストと文/北村ヂン

怪奇メイクの老婆がワイドショーを撃退!


先週、「やすらぎの郷」を騒然とさせた、菊村栄(石坂浩二)の「死にかけメイク」がリュウの手による物だと知った桂木夫人(大空眞弓)一派は、

「ちょっと、いたずらしてみない~?」

ということで、怪奇メイクでお嬢(浅丘ルリ子)とマヤ(加賀まりこ)を驚かせる計画を立てる。岸井さとみ(水野久美)への失禁ドッキリに対する復讐だ。

中川玉子(いしだあゆみ)にお岩さんメイクを施して夜道に潜ませる……。暗闇に老婆がうずくまってたら、お岩さんメイクじゃなくても腰抜かすよ。

お嬢、マヤはまんまと驚かされてしまう。

リュウが「やすらぎの郷」に滞在していることを知り、お化け騒動がリュウの仕業だと感づいたお嬢&マヤは、今度は自分たちに特殊メイクをするように迫る。

口裂け女の浅丘ルリ子に&加賀まりこの四つ目女!

菊村の「死にかけメイク」よりはクオリティが高かったものの、ハリウッド仕込みの特殊メイクとはとても思えない。
ドリフのお化け屋敷コントくらいのレベルだが、絶叫してぶっ倒れる桂木夫人たち。

老人が、お互いに失神するほど驚かしあってたら、いつか死ぬよ……。

特殊メイクブームはさらにエスカレートし、秀サン(藤竜也)と九重めぐみ(松原智恵子)の逢瀬を狙うワイドショーを撃退する作戦にまで発展する。

友情のために立ち上がったのか、ただ単に面白そうだったからなのか、怪奇メイクの老婆たちが総出演でワイドショーの記者たちを追い払うという、昭和の漫画のようなドタバタ展開。

最後、亡くなった姫こと九条摂子(八千草薫)の笑い声が聞こえて、「こういうの、もうやめましょう!」と反省するオチまで含めて昭和っぽい!

考えてみれば、菊村のところには、姫や亡き妻・律子(風吹ジュン)、そして死んだ父親(梅宮辰夫)といった霊が出まくっている。「やすらぎの郷」はかなり霊界に近い場所なのだろう!?

認知症という不思議な妖精


怪奇メイクの老人たちによるドタバタ喜劇が繰り広げられたかと思えば、認知症の恋人・九重めぐみと付き合う、秀サンの純粋な恋心も描かれた。

うな重を食べた後に、そばを7枚も食べてしまったり、言いたいことをいいまくった挙げ句、突然寝てしまったり……。
九重めぐみの認知症はかなり進行しているようだ。

そんな感じなので、付き合うといっても色気があるわけでもなく、キスも、抱き合いもせず、ふたりでひたすら古寺を巡っているのだという。完全に枯れた老人カップルだ。

色気のない付き合いだが、秀サンは幸せそうだ。若い頃には数々の女優と浮名を流し(「やすらぎの郷」に来た当初、女性陣にキャーキャー言われていたし)、

「美しさ、ピチピチした若さ、肌のきめの細やかさ、しなやかさ、かわいさ、優しさと。その都度、そういった事に夢中になって、それが自分は愛だと思っていたんですね」

というが、九重めぐみと付き合うようになって、恋愛観が変わったようだ。


「めぐみさんがポツンとね、言ったんです。『ひとつの同じ感動を共有できるというのは幸せな事ね』って。自分、本当にそう思いました」

付き合いだしたばかりなのに、長年連れ添った夫婦のような素敵な関係。……性欲の呪縛から解き放たれてからじゃないと、なかなか到達できない境地だなとは思うけど。

しかし「生まれてはじめて、自分はこの女性に恋をしてるんだとね、思えました」という相手が、いきなり重い認知症だというのは切ない。

九重めぐみの方は「こんなおばあちゃんのお付き合いばかりさせて……」なんて言っており、交際している認識すらないのかも知れない。


本作では、「老いていく残酷さ」を表現するにあたって認知症が使われがちだ。もっと見た目や体力の衰えとか、色々やりようはありそうなものだけど。倉本聰、認知症に対して何か思うところがあるのだろうか?

「一日のうちの何時間、何分間は、認知症という不思議な妖精に誘われ、その世界につれていかれるのだ」

という認知症の表現も、何ともすさまじい。不思議な妖精……。

桂木夫人も認知症じゃなかったっけ?


ところで、九重めぐみの認知症のステージが急激に上がったことで、心配になってしまった女性陣が名倉理事長(名高達男)に認知症判定をしてもらいに行っていたが、そこで桂木夫人の長話は「認知症とは関係ない」と判定をされていた。

でも、桂木夫人が「やすらぎの郷」にやって来た当初は、月・水・金だけキッチリとスケジュール通りに認知症が悪化して話が長くなるという設定だったはずだが……。


長いドラマだけに設定を忘れちゃったのか、認知症の症状がよくなったのか?
(イラストと文/北村ヂン)

【配信サイト】
Tver

『やすらぎの刻〜道』(テレビ朝日)
作: 倉本聰
演出:藤田明二、阿部雄一、池添博、唐木希浩
主題歌: 中島みゆき「進化樹」「離郷の歌」「慕情」
音楽:島健
チーフプロデューサー:五十嵐文郎(テレビ朝日)
プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日)、服部宣之(テレビ朝日)、山形亮介(角川大映スタジオ)
制作協力:角川大映スタジオ
制作著作:テレビ朝日

【配信サイト】
Tver

『やすらぎの刻〜道』(テレビ朝日)
作: 倉本聰
演出:藤田明二、阿部雄一、池添博、唐木希浩
主題歌: 中島みゆき「進化樹」「離郷の歌」「慕情」
音楽:島健
チーフプロデューサー:五十嵐文郎(テレビ朝日)
プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日)、服部宣之(テレビ朝日)、山形亮介(角川大映スタジオ)
制作協力:角川大映スタジオ
制作著作:テレビ朝日