総合格闘家の朝倉未来&朝倉海、連勝街道を突き進む“最強の兄弟”のルーツと格闘技への深い愛情

総合格闘家の朝倉未来&朝倉海、連勝街道を突き進む“最強の兄弟”のルーツと格闘技への深い愛情

ストリートファイトで闘争に目覚め、腕自慢のならず者たちが集う『THE OUTSIDER』でチャンピオンになり、日本最大の総合格闘技団体『RIZIN』で連戦連勝……。まるで漫画のようなサクセスストーリーを実現し、20代半ばにして日本の格闘技界のトップに登りつめた兄弟がいる。『RIZIN』で5戦5勝と無敗を誇る兄の朝倉未来は、地元の豊橋で恐れられた生粋の喧嘩屋だった。そんな兄との“兄弟喧嘩”の中で才能を見出された弟の朝倉海も、『RIZIN』参戦以来6戦6勝。海が打ち破った相手の中には、日米のメジャー団体でベルトを奪取した2冠王者・堀口恭司も含まれている。

それぞれがYouTuberとしても活動し、リングの内外で注目を集めている朝倉兄弟。そんな“最強の兄弟”のルーツと圧倒的な強さの秘密、そして彼らをスターダムに引き上げた格闘技への思いについて、インタビューで迫った。

取材・文/曹宇鉉(HEW) 撮影/伊藤龍也

路上の喧嘩で無敗を誇った兄と、そのパンチを避けた弟


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――まず、おふたりが初めて格闘技に触れたときのことを教えていただけますか?

:小学1年生くらいのころに、兄貴と一緒に空手を始めたのが最初です。そのちょっと後に親父に連れられて出場したちびっこ相撲の大会で優勝して、相撲もしばらくやっていました。

未来:たしか空手は自分が「やりたい」と言ったと思うんで、小さいころから「強くなりたい」という気持ちがあったんでしょうね。

――10代のころは地元・豊橋で喧嘩に明け暮れ、タイマンで無敗を誇ったことから“路上の伝説”という異名を持つ未来選手。喧嘩で磨いた度胸やスキルが、格闘技につながっている部分はありますか?

未来:あまりないですけど、強いて言うなら諦めないことですかね。根性に関しては、喧嘩で鍛えられた部分もあるかもしれない。ただ、喧嘩に目覚めるもっと前から負けず嫌いではありました。僕は幼少期からマラソンが速かったんですけど、持久走も諦めないことが重要な競技じゃないですか。結局のところ、元々そういう性格なんだと思います。

――喧嘩三昧のお兄さんを間近で見ていた海選手は、不良の道には染まらなかったんでしょうか

:そうですね、僕は平和主義なので(笑)。絡まれたりして仕方なくやることはちょこちょこありましたけど、自分から喧嘩を売ることはなかったです。
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――16歳からの1年半を少年院で過ごした未来選手は、出院後に格闘技の道へ進みます。そのころから、現在のようにプロの格闘家として活躍するイメージはありましたか?

未来:なかったですね。『THE OUTSIDER』に出ようと思ったのも最初は喧嘩の延長でしたし、提出した書類にも「プロ志望じゃない」と書いていました。格闘技のプロって、当然ですけど相当な練習を積まないといけないわけじゃないですか。当時は「強くなってプロとして成功しても、結局遊べないじゃん」と思っていて。それは生き方として僕の理想ではなかったので、趣味としてやっていくのが一番楽しいのかな、と。

――そして未来選手だけでなく、兄弟での“路上スパーリング”をきっかけに海選手も本格的に格闘技を始めることになります。手合わせをした未来選手は、自身の打撃をかわす海選手の素質をどう感じましたか?

未来:ちょっと普通じゃないな、と。当時、僕は路上の喧嘩で圧倒的に一番強かったし、パンチを避けられるやつもいなかった。弟はそれをいきなり避けたので、「すごい才能があるのかな」と思いました。

:兄貴のパンチを避けられたのは自分でも驚きました(笑)。ちょうどそのころ、僕自身やりたいことがなにもなかったんですよ。喧嘩は嫌いでしたけど、男として強さへの憧れみたいなものはずっと抱いていたので、格闘技をやってみようと思いました。


――おふたりにお聞きしたいのですが、立ち技ではなく総合格闘技を選んだ明確な理由はあるのでしょうか?

未来:僕は喧嘩の延長でやっているので。子供のころに空手を習っていたときも顔面パンチがないことが不満でしたし、「ボクシングや柔道とやったら勝てるのか」とかいろいろ考えていて、その中で武器とかも含めて“なんでもあり”の喧嘩に魅了されたんです。あえてルールに制限のあるキックボクシングをやろうという気にはならなかったですね。

:僕もおおむね同意見です。やっぱり“なんでもあり”が一番わかりやすいですし、兄貴の考え方に近いものはあると思います。

堀口恭司をぐらつかせた瞬間の“既視感”


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――最初に『THE OUTSIDER』に出たときは趣味の延長だったという格闘技ですが、本気でプロとしてやっていこうと決めたタイミングはどこだったんでしょうか?

未来:ここで、という明確なタイミングはないですね。試合を重ねていくにつれて、だんだんと「プロでもやっていけるんじゃないか」と感じ始めました。ただ当時は『RIZIN』もなかったし、総合格闘技の選手としてあまり先のことは考えられなかった。目標にしていた『THE OUTSIDER』で史上初の2階級制覇を達成した年の終わりに、ちょうど『RIZIN』が旗揚げされたので、自然とそこに出たいなと思うようになりましたね。

:僕も徐々に「プロのトップレベルでも通用するんじゃないか」という気持ちが芽生えてきたんですが、格闘技に本腰を入れるのか、趣味で続けるのか、葛藤していた時期もあって……。そんな中で韓国で行われた『ROAD FC』で初めてプロ格闘家として負けてしまって、「どうせなら本気でやってみよう」と環境を変える決意をしました。

――『RIZIN』参戦後は未来選手が5戦5勝、海選手が6戦6勝とまさに快進撃が続いています。それぞれターニングポイントとなった試合はありますか?

未来:日沖発選手と戦った『RIZIN』での初戦ですね。会場も地元の愛知県だったし、すでに弟が2連勝していて「海の兄貴だ」という期待感もあったと思うので。日沖選手は寝技のスペシャリストで「寝かされたらやばいだろうな」というところもあって、プレッシャーも賭けたものの大きさも一番の試合でした。実際、もし負けていたらキャリアは終わっていたんじゃないかな。

:僕はマネル・ケイプとの試合かなぁ。バンタム級トーナメントで大活躍した彼に『RIZIN』2戦目でいきなりぶつけられて、下馬評では「勝てない」と散々言われていましたから。ただカードの発表から試合までの準備期間が長かったので、その間にすごく考えて、練習して、そしてしっかりと勝つことができた。本当に大きく成長できた試合だったと思います。

――ルイス・グスタボ選手や矢地祐介選手といった強豪相手にも、盤石の試合運びを見せた未来選手。なぜあそこまでクレバーに戦うことができるのでしょうか?

未来:元々の性格が冷静だし、試合中でもそこまで熱くなることがないんですよね。もちろんどの試合も絶対に負けられないですから、ポイントで勝っていれば「今は攻めるところじゃないな」と自重することもあります。グスタボ選手も矢地選手も強烈な一撃を持っている選手だし、どれだけ自分が有利でも油断はできない。もちろんKOで倒すのも好きなんですけど、最近は判定で勝つことにも意義があるなと思っていて。フルタイムを戦い抜いて相手を上回れば、本当の意味で強いという証明になるじゃないですか。
――そして海選手は『RIZIN』と『Bellator』の日米2冠王者である堀口恭司選手に衝撃のKO勝ちを収めました。カウンターをヒットさせた後の的確なラッシュについて、なぜあそこまで冷静に攻めることができるのでしょうか?

:なにも考えずに戦っていたら慌てるかもしれませんけど、事前にそのシーンを想定していましたからね。「右を当てた後はこうして、ああして……」と何回も何回も繰り返しイメージしていたので、実際にパンチが入ったときも「すでに見たことのある光景」だったというか。試合前にしっかりと準備していたので、冷静に戦うことができました。
総合格闘家の朝倉未来&朝倉海、連勝街道を突き進む“最強の兄弟”のルーツと格闘技への深い愛情

――戦前の評価は圧倒的に堀口選手を推す声が多かったと思いますが、兄の未来選手は「弟は負けない」と自信たっぷりでしたね。

未来:堀口選手については僕も結構分析したんですけど、けっこう攻められるポイントがたくさんあったので、弟が普通に動ければ勝てるだろうなと思っていました。もちろん実際にそこを突くのは難しいですよ。ただ弟は作戦を遂行する能力が高いし、戦術がハマれば勝てるだろうと。あと分析や戦略を抜きにしても、ふたりのそもそもの実力もそんなに変わらないと思っていたので。

――年末にはバンタム級のベルトを賭けた堀口選手とのリマッチが予定されています。堀口選手も相当な気持ちを込めて臨んでくると思いますが、海選手の自信のほどはいかがですか?

:自信はすごくありますね。たくさん用意していた戦略の中で、ごく一部分だけを見せて勝てたというのも大きいです。まだまだ隠しているものがたくさんあるし、攻撃パターンも読めている。相性的にもいいと思っています。堀口選手に勝ったら、今度は海外の強い選手と戦って、真の世界一を目指していきたいです。どういった形でそれが実現するのかは、まだわからないですけど。

「他のどんなスポーツよりも、格闘技が一番熱くなれる」


総合格闘家の朝倉未来&朝倉海、連勝街道を突き進む“最強の兄弟”のルーツと格闘技への深い愛情

――未来選手は戦ってみたい相手などはいないのでしょうか?

未来:盛り上がるのであれば、誰とやってもいいかなって感じですね。特にやりたい選手はいないです。

――アスリートにしては珍しく、「あまり有名になりたくない」というようなことも仰っていますよね。

未来:それもある意味で本心でしたね。今はもう開き直っていますけど。僕は将来を常にイメージしているタイプで、有名になることで生きづらくなる部分が必ずあると思うんですよ。逆に有名になりたいという人の気持ちがよくわからないです(笑)。

――なるほど(笑)。海選手はお兄さんの考え方についてどう思いますか?

:格闘技を本格的に始めたころはずっと「有名になりたい!」と思っていましたけど、堀口選手に勝ったあたりから街でたくさん声をかけられるようになって、ちょっと不便に感じている部分はありますね(笑)もちろん有名になれば格闘技をそれだけ広めることができるので、応援していただけるのはありがたいです。



――おふたりともYouTuberとしても活躍しています。いわゆる“有名人の動画”とは一線を画した刺激的なコンテンツを生み出していますが、YouTuberになろうと思った理由を教えていただけますか?

未来:単純に、理想の職業だからですね。どんなことでも動画にすれば仕事としてお金が入ってくるわけで、僕が求めていた生き方だと思いました。物心がついたころから人に命令されるのが好きじゃなかったので、自分の好きなことを、自分の責任でやれるのはすごく楽しいですね。本気の遊びでもあり、仕事でもあるという感じです。
総合格闘家の朝倉未来&朝倉海、連勝街道を突き進む“最強の兄弟”のルーツと格闘技への深い愛情

:僕も楽しんでやっています。格闘家以外の一面を見せていきたいし、メイド喫茶とかバンジージャンプとか、未経験のことにどんどんチャレンジするのがコンセプトですね。今は兄のチャンネルのほうが登録者は多いですけど、まだまだ出していない部分がありますから、今後の伸びしろに期待していただければ(笑)。

――リングの内外での活躍のよって、「朝倉兄弟みたいになりたい」と思う若い世代のファンもいると思います。格闘技界のスターとしての実感はありますか?

未来:スターとかヒーローとか、僕はあまり興味がないですね。自分が好きでやっているだけなので。僕の真似をするのはもちろん自由ですけど、憧れてほしいとは特に思っていないです。

:スターとはちょっと違うかもしれませんけど、格闘技には夢があるんだと伝えたい気持ちはあります。「格闘技で成功すればいい暮らしができる」ということをちゃんと見せていきたいし、夢を与えたいですね。

――おふたりの今後の展望を教えていただけますか?

未来:やりたいことはたくさんあるので、いつまで格闘家を続けるかは正直わからないです。でも格闘技はやっぱり素晴らしいものだし、もっと世の中に広めていきたいと思っています。YouTubeにしてもそうですけど、業界を盛り上げるために僕もいろいろやっている方ですからね。個人的には、格闘技界を盛り上げようともせず、ただ自分の勝利だけを目指しているような選手には絶対に負けたくないです。

:僕はとにかく、世界一になることが目標です。世界一になって、なるべく早く引退したい(笑)。やっぱり練習にしても試合にしても、命をかけていますから。体へのダメージやリスクは日々感じています。でも、やめるのは自分が世界で一番強くなってからですね。もちろん現役を終えても格闘技には携わっていたいし、広めていきたいです。やっぱり格闘技が好きなので。
総合格闘家の朝倉未来&朝倉海、連勝街道を突き進む“最強の兄弟”のルーツと格闘技への深い愛情

――最後に、ぜひ格闘技の魅力や素晴らしさを語っていただければ。

未来:弟が言ったようにみんな命をかけているし、一番リスクを背負っているスポーツなのかなと。そのキツさがわかるぶん、僕は他の選手もすごくリスペクトしています。だからこそ、もっとたくさんの人に見てほしいし、熱狂してほしい。他のどんなスポーツよりも、格闘技が一番熱くなれると信じているので。

:僕も同じ思いですね。格闘技が生み出す感動を、広く世間の人に知ってもらいたい。今はまだその魅力が充分に伝わっていないと感じているので、格闘技をもっとメジャーな存在に押し上げられたらと思っています。

Profile
総合格闘家の朝倉未来&朝倉海、連勝街道を突き進む“最強の兄弟”のルーツと格闘技への深い愛情
朝倉未来

あさくらみくる

1992年7月15日生まれ、愛知県出身。トライフォース赤坂所属。高校退学後、地元の豊橋で喧嘩に明け暮れる日々を送り、16歳で少年院に。その後は格闘家を志し、2013年から前田日明が主催する総合格闘技団体『THE OUTSIDER』に参戦。60-65kg級および65-70kg級の2階級王者となり、その経歴から“路上の伝説”と称される。2018年には、満を持して日本最大級の総合格闘技団体『RIZIN』に参戦。国内外の強豪を相手に5戦5勝とパーフェクトな戦績を残し、『RIZIN.17』の矢地祐介戦では初参戦から1年足らずでメインイベンターに抜擢された。また、2019年5月からYouTuberとしても活動し、わずか5ヶ月でチャンネル登録数が36万人を突破(10月18日現在)。総再生回数は約5000万回と、格闘家の枠を超えた大人気チャンネルとなっている。

朝倉海
あさくらかい

1993年10月31日生まれ、愛知県出身。トライフォース赤坂所属。兄の未来に才能を見出され、2013年に兄弟で『THE OUTSIDER』に参戦。55-60kg級のトーナメントを制し初代王者となる。2017年には、兄に先んじて『RIZIN』に初出場。破竹の4連勝を果たすと、2019年8月18日の『RIZIN.18』で王者・堀口恭司と対戦。1分8秒でKO勝ちを収め、格闘技界に衝撃を与えた。さらに10月12日の『RIZIN.19』では、強烈な打撃で佐々木憂流迦の顎を砕き52秒でKO勝利。RIZINでの戦績を6戦6勝とし、年末に予定されている堀口とのベルトをかけたリマッチが世界中の注目を集めている。またYouTubeでは、リング上とは異なる温厚篤実な一面を披露している。

関連サイト
@MikuruAsakura朝倉未来YouTube公式チャンネル
@kai_1031_朝倉海YouTube公式チャンネル

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