視聴率が2桁台に乗れば合格点と言われる中、初回から視聴率20%超えと、第6シリーズに突入しても相変わらず注目度が高い。
「科捜研の女」「相棒」など、テレビ朝日の医療・刑事ドラマには、長期に渡って支持されている人気シリーズが多いが、そこに共通するのは1話完結、そして大いなるマンネリだ。
「ドクターX」は、大学の医局に属さないフリーランスの外科医・大門未知子(米倉涼子)が、超絶な手術のスキルのみを武器に、医局のしがらみを突破して患者を救う、「ブラック・ジャック」+「水戸黄門」的なパターンで展開するドラマ。
第5シリーズの最終回では、大門自身が「後腹膜肉腫」という難病を患っていることが判明し、「これが最後の手術なのでは!?」と思うようなイレギュラー展開を迎えていたが、第6シリーズではそれもすっかり完治したようで、安心安定ないつもの大門未知子が復活している。

今回の敵は大門未知子がハグされちゃうほどの人たらし
今回、東帝大学病院にやってきたのは、今世紀最大のコストカッターと呼ばれるニコラス・丹下(市村正親)。財政危機に瀕している東帝大学病院を救うため、ムダをはぶき、最新のAI技術を駆使することで大胆なコストカットを目指しているのだ。
曲者なのは、冷血なコストカッターでありながら、外面はメチャクチャ人当たりがいいところ。
「医師免許がなくてもできる仕事は一切いたしません」と宣言する大門に対し、これまでの上司はことごとく反発していたが、丹下は「あなたは私の理想とする外科医です!」と絶賛。
握手すらめったにしない大門が、ハグを受け入れてしまうほどの人たらしっぷりなのだ。
それでいながら、スタッフを酷使して手術させまくったり、人件費を思いっきり値切ったり、AIシステムを利用して6人同時に手術をしようとしたり、かなり冷徹で無茶なコストカットを計画しているようだ。
丹下が大門を絶賛している理由は、手術の腕が良く、数もこなせるコストパフォーマンスのいい外科医だから、ということなのだろう。
ニコラス・丹下、アッサリと悪人面を丸出しに
第1話の患者は、食堂のおばちゃんのひとり・岩田一子(松坂慶子)。
AIの検査で「肺塞栓症」と診断され、AI手術を受けて完治したかに思われたが、いきなり血を吐いてぶっ倒れてしまう。
大門が例のごとく手術の執刀を買って出るが、AIシステム至上主義な丹下は「AIの指示に従って手術すること」という約束を結ばせる。
しかしいざ手術がはじまったらAIの指示を無視。
「手術中に患者を死なせたら、手術ミスで訴えられる! 賠償金は誰が払うんだ!」
賠償金が頭にちらついて、アッサリと悪役としての顔を丸出しにする丹下。
「おばちゃんは 絶対殺さない。私、失敗しないので!」
AIが気付いていなかった病巣を見抜いて、手術を成功させる大門。
丹下は「あの食堂のおばちゃん、昔の私の恋人によく似てましてね。手術中に思わず取り乱してしまいました」なんて善人面してフォローを入れようとしていたが、大門は和解を拒否。
早速、今シリーズの対立軸が明確になった。
武田真治、ユースケ・サンタマリア、清水ミチコの新キャラが強烈
難病を抱えた病人が現れては、医局のしがらみで誰が執刀するのかゴチャゴチャやるけれど、結局は大門が「私、失敗しないので」ということで、ズバーンと手術を成功させてめでたしめでたし……。
いつものパターン通り、第6シーズンも安定のスタート。
もちろん、安定しているだけではこれだけの支持は得られない。
今後、大門と対立していくであろう、丹下が連れてきた新キャラたちが、なかなかの濃いメンツなのだ。
崖崩れで岩に腕をはさまれて、大門に腕を切り落とされる(その後、くっつけてもらう)という衝撃的な登場をした事務長の鮫島有(武田真治)。
武田真治、ユースケ、清水ミチコなんちゅう組み合わせが見られるのは「ドクターX」だけ! 特に、腕を治してもらった恩人であるはずの大門を、コストカット対象として敵視する武田真治が、今後どう絡んでくるのか注目だ。
従来のシリーズで、いつも大門と敵対していた院長の蛭間重勝(西田敏行)が、自ら招聘したニコラス・丹下に告発されてソッコー逮捕されていたのにも驚かされた。
蛭間はこれまでも失脚したり、逮捕されたりしているものの、いつのまにか元通り復職しているので、今回もそのうち戻ってくるのかな……とは思うのだが、気になるのは「探偵!ナイトスクープ」の降板ニュースも同時期に飛び込んできたこと。
逮捕されていくシーンでは、「腰を抜かして動けない」ということで車椅子で連行されていたが、もしかしたらすごく体調が悪いのでは……と心配してしまう。
西田敏行のやり過ぎなアドリブも「ドクターX」安定のお約束のひとつ。再登場を祈りたい。
(イラストと文/北村ヂン)
【配信サイト】
・Abema TV
・テレ朝動画
『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』(テレビ朝日)
脚本:中園ミホ、林誠人、香坂隆史
音楽:沢田完
主題歌:P!NK「ソー・ホワット」
企画協力:古賀誠一(オスカープロモーション)
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー:大江達樹(テレビ朝日)、都築歩(テレビ朝日)、霜田一寿(ザ・ワークス)、大垣一穂(ザ・ワークス)、伊賀宣子(ザ・ワークス)
演出:田村直己(テレビ朝日)、松田秀知、ほか
制作協力:ザ・ワークス
制作著作:テレビ朝日